猫が母になつきません 第351話「おそうしきふたたび」
1泊2日の旅行から帰った次の日、母はすっかり元のモードに戻っていました。最初は父を探し、もう亡くなっていると言うと初めて聞いたみたいに「えっ!」と驚き、しばらくするとお葬式の準備のために家中を走り回りはじめるのです。父が亡くなったことを「誰も教えてくれなかった」と言って泣いたりすることもありました。とにかく感情の起伏が激しく落ち着きがないし、夜もあまり寝てくれません。食欲はちゃんとあります(苦笑…でもありがたい)。お医者さんに気持ちを落ち着かせる薬を処方してもらってはいますが、あまり強いものではないので効果は限定的です。私は母の認知症の症状をよく動画におさめるようになっていました。妹や弟と母の状態を共有するためです。たまにしか会わないので認知症の進行具合が実際どんな感じなのかは動画で見るのが一番だから。電話では意外と普通に話せるのでわかりにくいし、認知症が進んだ状態にある日突然直面したらショックでしょうし、どうして教えてくれなかったんだと言われても困ります。でもほんとうに大変なときは動画を撮る余裕もないのでそこは伝わらないんですけど。制御不能で走り回る母をスマホで撮影していたら「どうして手伝わないの?!(怒)」と。あなたの電池切れを待っています。スマホのほうが先に電池切れしそうですけど。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。