日用品を再利用法して介護生活に役立てる デイサービスが実践するSDGs事例をレポート!
介護生活は長距離走に似ていて10年、20年と続く場合もある。物価高騰が続く折り、金銭的にも息切れしないように、なるべく出費は抑えていきたいもの。日用品を再利用してコストを抑える知恵をデイサービスの管理者に伺った。在宅介護でSDGsを実践してみよう!
デイサービスで実践する介護現場のSDGs
「デイサービスでは再利用できるものは積極的に活用しています」
こう話すのは、大阪・高槻市にあるデイサービス「安岡寺けやきの家」の管理者であり介護福祉士、認知症ケア専門士の井口千賀子さん。
毎日利用者さんに食事や入浴の介助をしたり、レクリエーションやリハビリなどをしたりして過ごす中で、井口さんが取り組んでいるのが、介護生活での「もったいない」を減らす工夫。
捨ててしまうものや日用品を再利用して、介護現場で役立てているという。デイサービスの現場で実践しているSDGsの取り組みを紹介する。
1.新聞紙「使用済みおむつ捨てや作品づくりに活用」
「新聞は読んだ後にそのまま捨ててしまうのはもったいないです。新聞紙は汚物を捨てるときに欠かせません。使用済みのオムツをくるんで捨てていますが、新聞紙は吸水性に優れていますし、ニオイを吸着してくれていると感じますね。
新聞紙を1枚1枚に分けた後、適当な大きさにたたんでもらうなどの事前準備には、利用者様にも参加していただいています。手指のリハビリにもなります」
また、新聞紙はレクリエーションのひとつの作品づくりの材料としても使えるという。
「新聞紙を折ってハートの形にしてその上から、利用者様が色塗りをした飾りを貼り付けて作品を作ったりしています。最近は季節に合わせて『こいのぼり』の作品を作りました。皆さんいきいきと作品づくりをしています」
2.チラシ「ゴミ箱や貼り絵の素材に」
「手先を使って広告紙を折り紙のように折り、食卓などに置きごみ箱として使います。最後はそのまま捨てられて便利ですよ。利用者様も熱心に折ってくださいます。
また、レクリエーション用に色紙ばかりを買うとお金もかかるので、カラー広告紙の色の部分を切り取って利用するのもいいですよね。
貼り絵などの作品づくりの材料として使えます。貼り絵づくりも手指のリハビリにもなります」
3.薄手のタオル「食事の際のエプロン代わりに」
「いかにもな介護用エプロンは嫌がる人が多いので、薄手のタオルだとさりげなく使えます。女性は可愛い柄のタオルを好まれるようです。
留める物は歯医者さんなどで使われているクリップが両端についたもので、パステルカラーの物を使用しています。100円グッズショップなどでも、見つけられると思いますよ」
4.フェイスタオル「レクリエーションに再利用→雑巾に再々利用」
「濃い色のフェイスタオルは、目にもいい刺激にもなると思い、体操やゲームなどに利用できて大活躍です。その後、お役御免となりましたら、適当な大きさに切って2枚を縫い合わせて雑巾として再々利用しています。
お裁縫ができる方やお好きな方がいるときは、切る、縫うなどの作業を利用者様にしていただくこともあります。皆さん楽しそうにお裁縫をされています」
5.お箸・使い捨てのスプーン「ゲームやレクリエーションに再利用」
「古くなったお箸は、豆をコップからコップにお箸を使って運ぶなどのレクで再利用できます。また、くじ引きにも利用しています。
コンビニから貰ったスプーンは、スプーンレースなどのゲームにも再利用しています」
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最後に介護現場で働く井口さんに、在宅介護生活でのアドバイスを伺った。
「施設でも在宅でも手指や頭を使うことは大切です。認知症になられた方の場合、深く考えることは難しくても、どちらかを選ぶというような選択はできると思っています。
ですから、選択肢で選べることができるような声かけをしてあげてください。例えば『これする? しない?』など、簡単な声かけでも十分なので、会話を楽しんでもらえたらと思います。
洋服でも日用品でも捨ててしまおうと思う物があったら、『これは何かに使えないかな?』と一緒に考えてみるのもいいですよね。日本の言葉『もったいない』が世界にも通用していることは嬉しく感じております」
教えてくれた人
介護福祉士、認知症ケア専門士・井口千賀子さん
ギフトリレーションズが運営する「安岡寺けやきの家」(大阪府)の管理者であり、生活相談員でもある。介護福祉士、認知症ケア専門士の資格をもち、通所する利用者が「第二の家」と思えるような心地よい空間創りに努めている。介護生活での「もったいない」を減らす工夫を実践中。
https://gift-relations.co.jp/
取材・文/本上夕貴
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