GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)対策 30分座るだけで尿もれ改善が期待できる器具など最新治療事情とセルフケア法
コロナ禍で巣ごもり生活が続く中、女性の間で密かに勃発していたのが“おしも問題”。座りっぱなしによる腟の圧迫から起こる尿もれなど、皆さんは大丈夫ですか? 命にかかわる病気じゃないからと受診せず、症状が悪化した隠れ患者は増えているそう。人に相談しづらい悩みだからこそ、一緒に学びませんか?
50代以上の2人に1人がひそかに悩んでいる
「50才を過ぎた頃から、腟のまわりがかゆくなったり、ヒリヒリ熱くなったり…。特に外出時は大変。急にかゆみが襲ってくるのに、公衆の面前でかくわけにもいかず、トイレを探すのに四苦八苦。尿もれもひどくなって、外出が億劫になってきました」
と語ってくれたのは、東京都の主婦・Kさん(54才)。彼女と同様の悩みを持つ読者も多いのではないだろうか。
腟のまわりのかゆみやヒリつき、尿もれといった症状は「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」だと、日本産科婦人科学会専門医の八田真理子さんは話す。
2014年に新たに国際学会で提唱された疾患で、日本での認知度はまだ低い。
「GSMは、50代以上の女性の2人に1人が悩んでいる症状です」(八田さん・以下同)
GSMの主な症状は「腟まわりの不快な症状(乾燥、かゆみ、痛み)」「排尿障害(尿もれ、頻尿)」「性交障害(性交痛や出血、痛みによる性交意欲の低下)」だ。
「腟まわりのかゆみや乾燥には、市販のかゆみ止めで対処するくらいで、婦人科を受診する人はあまりいません。ところが、市販薬で紛らわそうとしたものの改善せず、検査を受けたら『外陰がん』だったケースも。大きな病気が隠れている可能性もあるので、症状があれば自己判断せず医療機関を受診してください」
こんな症状があったらGSMかも
まずは自分にあてはまるものがあるかチェックしてみよう!
□ 腟まわりが乾燥している
□ 腟まわりがかゆい
□ 腟まわりが腫れている
□ 腟まわりに灼熱感がある
□ おりものが減少している
□ 腟まわりやおりものににおいがある
□ 1日の排尿回数は6回以上、または就寝中1回以上
□ トイレに間に合わず尿がもれることがある
□ 知らないうちに尿がもれることがある
□ 運動やせき、くしゃみで尿がもれる
□ 性交痛がある
ホルモン補充治療が効果的。最新医療もあり
GSMはなぜ起こるのか。
「女性ホルモン・エストロゲンの減少が関係しています。このホルモンは、皮膚や粘膜を守り、みずみずしさを保つうえで不可欠なのですが、閉経とともに急激に減ります。腟や粘膜の保水力が低下して乾燥し、それによって腟萎縮が進むと外陰部もやせて、かゆみや痛み、尿もれなどを引き起こすのです」
そのため、GSMにはホルモン補充療法が効果的だ。
「GSMは体質や体調なども影響しているため、ホルモン補充療法だけでは効かない患者さんもいます。そういう場合は、腟内と外陰部にレーザーを照射し腟粘膜の線維芽細胞を活性化させる治療法もあります。血流がよくなって腟粘膜がふっくらとし、乾燥や尿もれが改善されます」
これは腟・外陰レーザー治療「モナリザタッチ(R)」の施術で、4週おきに2~3回の施術を受ければ1年程度効果が持続する。費用は1回3万~8万円程度だ。
■治療機器「アンチェアー」
尿もれの症状がひどい場合の策として、治療機器「アンチェアー」も有効。高出力の電磁波が骨盤底筋群を刺激。服を着たまま30分座るだけで約1万2000回、筋肉収縮する。週に2回×3週で効果が期待でき、費用は1回20~30分で5000~1万円。
筋トレと膣まわりの洗浄は習慣化を
最新の医療機器を使えば、一気に症状は改善するが、まずはセルフケアを試そう。
「GSMでもっとも多いのが尿もれや頻尿で、主な要因となるのが骨盤底筋群の衰え。予防・改善するには、骨盤底筋群の筋トレが効果的です」
腟まわりを清潔に保つのも大切だという。
「小陰唇の裏やクリトリスの内側など、ひだの間は垢や汚れがたまりやすくなっています。湿った場所なので蒸れやすいですし、雑菌が繁殖しやすい。年齢とともに腟内の雑菌への抵抗力も弱まるため、腟まわりを清潔にすることは大切です。セルフケア(左参照)を習慣化しましょう」
日々のケアとしては、やせた腟を圧迫するガードルやタイトなパンツを長時間はかないこと。そして、おりものシートや尿もれパッドを付けないことも大切だという。これらは蒸れやすく雑菌の温床になりやすいからだ。
「尿もれパッドを使わざるを得ない場合は外出時だけにし、なるべく控えましょう」
気になる人はできることから試してみよう。しかし、いちばん大切なのは、恥ずかしがらずに受診することだ。
膣まわりのセルフケア方法
「皮膚が薄い腟まわりの洗浄には専用の洗浄剤を。なければ、石けんやボディーソープをしっかり泡立てて洗いましょう。大陰唇周辺は円を描くように、ひだのある小陰唇は指でつまんで丁寧に洗浄を。腟内部は洗わないこと。洗浄後はローションや専用の保湿剤で潤いを与えて」
おしもをケアする洗浄剤&保湿剤
■「anowa41Dジェル」25g 3300円/アノワ
八田さんおすすめ! 医療機関限定保湿ジェル
乾燥によるかゆみを和らげる デリケートゾーン専用保湿ジェル。保湿効果が高いのにべたつかない。消臭効果があり、腟内常在菌のバランスを整える成分も含まれる。
■「コラージュフルフル泡石鹸(ピンク)」150ml 1980円/持田ヘルスケア
弱酸性・低刺激性の石けんで菌とにおいをきれいに落とす
抗真菌成分と殺菌成分を配合。生理時の気になるにおいなど、デリケートゾーンの洗浄に。
「薬用フェミニケートミスト」22ml 2970円/ドクターシーラボ
ミストでひと吹き! 外出先でも雑菌とにおいを防ぐ
薬用有効成分が菌の増殖を防ぎ、潤いを与えつつ、においもケア。
■「iroha INTIMATE TRIAL SET」(INTIMATE WASH【FOAM TYPE】30ml/VIO TREATMENT LOTION 20ml/VIO TREATMENT MILK20ml)1650円/iroha INTIMATE CAR
デリケートゾーンのケアを始めたい人におすすめ
洗う(泡ソープ)・潤す(化粧水)・守る(乳液)の3つの機能を1つのセットで試せる。旅行用にも。
教えてくれた人
八田真理子さん/「聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田」院長
日本産科婦人科学会専門医。女性の幸せをサポートすべく、思春期から更年期まで幅広い年代の診療に尽力。著書に『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)など多数。
取材・文/佐々木めぐみ
※女性セブン2023年2月16日号
https://josei7.com/
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