輪ゴム健康法のやり方を鍼灸師・松岡佳余子さんが解説「グーパー指輪ゴムで免疫力UP」
東洋医学では手には内臓や骨格に対応する経絡やツボがあり、耳にも全身のツボがあると考えられている。輪ゴムを巻いてこれらの箇所を一定の圧で刺激すれば、痛みや不調を改善し、全身によい効果が期待できるという。輪ゴム健康法のやり方や基本の巻き方を紹介していこう。
【目次】
- 手指への刺激で全身の不調が改善する
- 【基本1】血流を改善して免疫力を高める
- 【基本2】関節のゆがみを調節する
- 【基本3】骨盤を引き締めて腰痛改善
- 【肩こり】首から肩にかけての血流を改善(3本使用)
- 【頭痛】頭に対応する部位とツボを刺激(2本使用)
- 【眼精疲労】ドライアイやかすみ目にも(2本使用)
- 【胃痛・胃もたれ】突発的な症状には小指の刺激で対応(2本使用)
- 【鼻かぜ】アレルギー性鼻炎にも効果あり(5本使用)
- 【喘息・のどかぜ】風邪予防にも役立つ(8本使用)
- 【高血圧】根気よく巻き、血流を改善(3本使用)
- 【もの忘れ】脳と自律神経を整える(3本使用)
- 【冷え症】全身に血流を行きわたらせる(6本使用)
- 【不眠症】リラックス効果を高める(2本使用)
- 【便秘・下痢】腸にアプローチして腸内環境改善(3本使用・2本使用)
- 【更年期障害】内臓を刺激し、ホルモンの乱れを調整(3本使用)
- 輪ゴム健康法の効果を高めるQ&A
手は全身とつながっている
手に集中する経絡やツボを押して痛みや違和感があれば、それと対応する内臓や骨格に不調が隠れている可能性が。反対に、不調を感じる体の箇所は、それに対応する手の経絡やツボを押すことで不調を改善することができる。
《手のひらと内臓》
手のひら側は、いわば内臓の写し鏡。位置は右手も左手も同じで、反転しない。内臓を刺激したいなら、輪ゴムをかけた後、手のひら側を刺激するといい。
《手の甲と骨格》
手の甲側は、骨や関節の写し鏡。こちらも位置は反転しないため、右手の甲に対応する骨格は親指が左足、人差し指が左手、薬指が右手、小指が右足になる。
手指への刺激で全身の不調が改善する
「手は体全体の縮図であり、適度に刺激すれば全身の痛みや不調を改善できる」と話すのは、鍼灸師の松岡佳余子さん。松岡さんは、経絡とツボにアプローチする東洋医学に則った一般的な鍼灸治療に加え、手や指のツボを刺激する「手指鍼」による施術を30年以上前から取り入れてきた。なかでも、指先に集中している毛細血管への刺激が重要と考え、手を指で押したりもんだりするだけでなく、家庭にある輪ゴムを使ったセルフケア法を考案した。
「不調に呼応する部分に輪ゴムをかければ、指でもんだときのような力のばらつきが出ることはなく、一定の圧で経絡やツボを刺激することができます。また、誰かに押してもらわなくても、自分で押し続けなくても、両手同時に輪ゴムを施すこともできます」(松岡さん・以下同)
とはいえ、巻きっぱなしは禁物。
「きつく巻いたり、長時間巻きっぱなしにしても効果は高まりません。むしろ、うっ血して手指が壊死する恐れもあります。長くても1回1分を守ってください」
まずは基本の巻き方から初めてみよう。全身のバランスを整える「グーパー指輪ゴム」は以下を参考に!
※必ず守ってください※
うっ血して手指が壊死する恐れがあるため、どの輪ゴム健康法も、輪ゴムをかけて1分ほどおいたら外してください。
【基本1】血流を改善して免疫力を高める
爪もみ巻き「グーパー指輪ゴム」
血流が滞りやすい指先に輪ゴムをかけて手を握ったり開いたりすることで、毛細血管を刺激して全身の血流の改善が期待できる。自律神経失調症、慢性疲労、高血圧、頭痛などに効果が。
【1】親指の爪の生え際あたりに輪ゴムをかける。
【2】1回ずつねじりながら人差し指から順に、小指まで巻きつける。
【3】輪ゴムが爪の生え際にあることを確認する。もう片方の手も同様に。
【4】手を、じゃんけんの「グー」「パー」をするように、1秒かけてゆっくり握り、1秒かけてゆっくり開く。これを10回繰り返したら輪ゴムを外す。
【基本2】関節のゆがみを調節する
指の股巻き
普段動かすことのない指の股を一度に刺激し、全身の関節の動きをなめらかにする。首や肩などのこり固まりやすい箇所の状態を確認してから行うと、即効性を実感できる。
【1】輪ゴムに手を入れ、親指の付け根の高さに置き、手のひら側の中央で2回ねじって輪を作り、親指以外の4本の指を通す。
【2】手の甲側の輪ゴムが平行になるように調整したら、手を10回握ったり開いたりする。輪ゴムの交差部分を10秒ほど押圧し、輪ゴムを外す。
【基本3】骨盤を引き締めて腰痛改善
手のひら交差巻き
骨盤を支えるベルトのような役割が期待できる巻き方。骨盤のゆがみが整うことで腰痛改善、下腹部やお尻の引き締め効果も。輪ゴムの交差部分を指で押圧すれば、内臓不調の改善に。
【1】輪ゴムに手を入れ、親指の付け根の高さに置き、手のひら側の中央で2回ねじって輪を作り、親指以外の4本の指を通す。
【2】手の甲側の輪ゴムが平行になるように調整したら、手を10回握ったり開いたりする。輪ゴムの交差部分を10秒ほど押圧し、輪ゴムを外す。
不調を感じたら、症状別にピンポイントで刺激を! 手指の輪ゴム健康法は、肩こりなどの慢性的な症状だけでなく、頭痛など突然の痛みにも効果を発揮。痛みを和らげ、悪化を防ぐこともできる。輪ゴムを巻いた部分を押圧し、各10秒ほどもむと効果がアップ。
【肩こり】首から肩にかけての血流を改善(3本使用)
肩甲骨に対応する中指の第二関節に交差部分を作り、肩関節に対応する中指の両付け根とともに刺激する。
【1】人差し指の付け根に3回巻きつける。
【2】薬指の付け根に3回巻きつける。
【3】中指の第二関節の少し下に輪ゴムをかけ、手の甲側、手のひら側、手の甲側の順でねじり、第一関節と第二関節の間で巻く。反対の手も同様に。
【頭痛】頭に対応する部位とツボを刺激(2本使用)
頭部に対応する中指の先を刺激して痛みを緩和。親指には、頭や肩など上半身の自律神経の乱れを抑えるツボがある。
【1】中指の爪の中間部に4回(ややきつめに)巻きつける。
【2】親指の爪の中間部に4回(ややきつめに)巻きつける。指輪をクルクル回すイメージで、輪ゴムをもう片方の指でしごく。反対の手も同様に行うか、痛みが強い方の手の指のみでもよい。
【眼精疲労】ドライアイやかすみ目にも(2本使用)
頭部にあたる中指の先端と、目の疲れにかかわる肝臓につながる小指全体を刺激。視界がクリアになる。
【1】中指の爪の生え際の下に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】小指の付け根から、手のひら、手の甲側でそれぞれねじりながら上に向かって3回交差させて巻きつける。反対の手も同様に。
【胃痛・胃もたれ】突発的な症状には小指の刺激で対応(2本使用)
慢性的な胃痛は【1】の交差巻きだけでもOK。突発性の胃痛や胃もたれ、飲みすぎなどには小指をプラスして。
【1】親指と人差し指、薬指と小指の股に輪ゴムをかけ、手のひら側で交差するようにねじり、人差し指と中指の股、小指の付け根の下に輪ゴムをかけて甲側に回す。
【2】小指の付け根から手のひら、手の甲側でそれぞれねじりながら3回交差させて巻きつける。反対の手も同時に巻いてOK。
【鼻かぜ】アレルギー性鼻炎にも効果あり(5本使用)
鼻詰まりなどの症状がある場合は、中指の腹のふくらんでいる部分を集中刺激。かぜの予防効果も。
【1】中指の爪の生え際(指腹のもっともふくらんでいる部分)に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】親指と小指の第一関節、 【3】人差し指と薬指の第二関節にそれぞれ3回巻きつける。反対の手も同時に巻いてOK。
【喘息・のどかぜ】風邪予防にも役立つ(8本使用)
軽い咳の場合は中指の第一関節、【1】のみでもOK。喘息やのどかぜの場合は、フルバージョンを両手に行う。
【1】人差し指と薬指の、第二関節と付け根にそれぞれ輪ゴムを3回巻きつける。
【2】中指の第一関節と第二関節にそれぞれ輪ゴムを3回巻きつける。
【3】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをひっかけ、2回巻く。
【4】手首の少し上にも巻き、【3】と【4】が平行になるようにする。
【高血圧】根気よく巻き、血流を改善(3本使用)
3本の指を刺激して血流改善につなげる方法。基本1の「爪もみ巻き」にも、高血圧の改善効果がある。
【1】薬指の第二関節に3回巻きつける。
【2】小指の第二関節に3回巻きつける。
【3】中指の第二関節に輪ゴムをかけ、手のひら側、手の甲側、手のひら側の順に交差させて巻きつける。反対の手も同様に。
【もの忘れ】脳と自律神経を整える(3本使用)
頭部に対応する中指の先を集中的に刺激して、脳と自律神経を整え、疲労からくるもの忘れを改善。
【1】中指の爪の中間に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】爪の生え際と第一関節の間、
【3】第一関節にもそれぞれ輪ゴムを3回巻きつける。すべての輪ゴムを指輪をクルクル回すイメージで、もう片方の手の指でしごく。反対の手も同様に。両手を同時に巻いてもよい。
【冷え症】全身に血流を行きわたらせる(6本使用)
手のひらと同時に、5本の指先すべてを刺激し、全身の血流を促して体を温める。
【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけて、手のひら側で2回ねじって甲側に回し、上下の輪ゴムの位置が親指の幅になるよう、下の輪ゴムの位置を上げる。
【2】5本のすべての爪の生え際に輪ゴムを3回巻きつける。反対の手も同様に。
【不眠症】リラックス効果を高める(2本使用)
交感神経を抑えて寝つきをよくする。強く巻くと刺激が強いので、ゆるめに巻いて就寝前に外すこと。
【1】中指の爪の生え際と、第一関節の間に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】薬指の第二関節に輪ゴムをかけ、第一・第二関節に交差部分がくるようにして巻きつける。手の甲側の交差部分を押圧する。反対の手も同様に。
【便秘・下痢】腸にアプローチして腸内環境改善(3本使用・2本使用)
便秘も下痢も、腸内環境の悪化が原因。便秘は手のひら、下痢は指を刺激すること。
《便秘の場合》
【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけて2回ずつ巻きつける。
【2】親指の付け根と小指側に2回巻きつける。
【3】【1】【2】と平行になるように手首の少し上に輪ゴムを2回巻きつける。
《下痢の場合》
【1】薬指の第二関節に輪ゴムを3回巻きつける。
【2】小指の付け根に輪ゴムを3回巻きつける。反対の手も同様に。
【更年期障害】内臓を刺激し、ホルモンの乱れを調整(3本使用)
手のひらの下部への刺激で内臓全体を、薬指と小指の第一関節への刺激でホルモンバランスを整える。
【1】親指と人差し指の股、小指の付け根に輪ゴムをかけ、手のひら側で2回ねじって交差させ、甲側に回す。
【2】薬指と小指の第一関節に、それぞれ輪ゴムを3回ほど巻きつける。【1】の交差部分を押圧し、【2】は指輪をクルクル回すイメージで、輪ゴムをもう片方の手でしごく。反対の手も同様に。
輪ゴム健康法の効果を高めるQ&A
誰でも簡単にできる輪ゴム健康法だが、しっかりと効果を高めるために、知っておきたいポイントがある。いつ、どのように、どんなゴムで行うといいのかをぜひ押さえてほしい。
Q. どんな輪ゴムを使ったらいい?
A.一般的な輪ゴムでOK。女性なら16号(内径38mm)、男性なら18号(内径44.5mm)を目安にし、長時間巻いても違和感のない強さのものを選ぶこと。ゴムアレルギーがある場合は、髪結い用のゴムがむき出しになっていないタイプのものを使うとよい。
●女性は16号内径38 mm
●男性は18号内径44.5 mm
Q. いつ行うと効果的?
A.不調を感じたらいつでも対応するポイントを刺激してOK。ただし、入浴後の体が温まっているときは、少し時間を空けて行うとよい。就寝前に耳の輪ゴム健康法を行うと頭の血流がよくなりすぎて寝つきにくくなる可能性があるので避けること。
Q. 左右どちらの手や耳から?
A. 症状のある部位に対応する方から行うと、効果を実感しやすい。叩いたり押圧して痛みのある方を重点的に刺激し、反対側も行った後、再度押圧して痛みが軽減していれば、症状も改善されている。
Q. 何回やっても大丈夫?
A.1回につき1分を守ること。手指を強く締め付けない巻き方なら、不調を感じたタイミングで何度行ってもいいが、耳の皮膚は薄くて傷つきやすいので1日2回程度にとどめること。1日に行う回数や時間を増やすより、毎日続ける方が効果が出やすい。
Q. うっ血してきたら?
A. 輪ゴムを巻いた部分に痛みを感じたり、うっ血して暗紫色になったり、手指や耳が冷たくなった場合は、すぐに輪ゴムを外すこと。また、輪ゴムをかけて5~6秒ほどでうっ血した場合は、動脈硬化を患っていたり、心機能が低下している可能性があるため、すぐに医師の診断を受けた方がいい。
教えてくれた人
アジアン・ハンドセラピー協会代表 松岡佳余子さん/鍼灸師として国内外の鍼灸やツボ治療を学び、それらをさらに発展させた手指鍼を研究。簡単にできる効果の高いセルフメソッドとして、輪ゴムを使った健康法を考案。
取材・文/山下和恵 イラスト/いばさえみ
※女性セブン2023年1月19・26日号
https://josei7.com/
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