《脳の老化を防ぐ》“予備脳”を鍛える方法3つ「テレビよりラジオ」「麻雀」「おしゃべりもOK」
脳の衰えによる老化症状が現れるのを防ぐために大切なのが、「予備脳」を鍛えること。神経回路が減ることによって起こる脳の老化に備えて、神経回路をたくさん用意しておくことを予備脳いい、脳の一部の機能が低下しても予備の回路によって老化症状が現れるのを防ぐことを狙いとしている。そこで、『こうして脳は老いていく』(アスコム)の著者で、名城大学特任教授の遠藤英俊さんに、普段の生活の中でできる予備脳の鍛え方を教えてもらった。
教えてくれた人
遠藤英俊さん/名城大学特任教授
えんどう・ひでとし。聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授。認知症学会専門医、日本老年医学会老年病専門医。滋賀医科大学医学部卒、名古屋大学老年科で医学博士を取得。国立長寿医療研究センターで長寿医療研修センター長を務める。2021年、老年病や認知症に関する専門的医療を提供する「いのくちファミリークリニック」を開院。著書に、『こうして脳は老いていく』(アスコム)など。
予備脳は少しだけ負荷をかけるといい
予備脳は、脳を使えば使うほど強化できるが、厳密には、単に使うだけでは強化できないという。普段の生活でも人間は脳を使っているが、それでも老化のサインは現れてしまう。
「予備脳を強化するには工夫が必要です。それは、脳にちょっとだけ負荷をかけることです。筋肉を強くするときにちょっときつい運動をしなければならないのと同じように、脳にもちょっとした刺激が必要なのです」(遠藤さん・以下同)
予備脳を鍛える方法
普段の生活では、脳にほとんど負荷のかからない形で脳を使っていることも多い。例えば、テレビを見るとき、脳をまったく使っていないわけではないが、特に何も考えずに眺めているだけのことも多いだろう。
「テレビを見て脳に負荷をかけたいなら、例えばニュースを見たら、『アナウンサーが言ったことは本当なのかな?』『この場合、誰が悪いのだろう?』と考えながら見ることです。家族や友人と議論するのもいいでしょう」
脳を鍛えるならテレビよりラジオ
ただし、予備脳を鍛えるなら、テレビよりラジオのほうがおすすめだ。ラジオには映像がないため、頭の中で場面や展開を想像しながら聞くことになるためだ。テレビだとつい眺めるだけになってしまう場合は、何気なく聞いていても脳に負荷をかけやすいラジオを使うようにしよう。
「脳に負荷がかからないという意味では、スマホも要注意です。手放せなくなっている人は多いでしょうが、頼りすぎると脳を刺激する機会がどんどん減ります」
卓上ゲームもおすすめ
テーブル上でできるボードゲームやカードゲームなどの卓上ゲームも脳を鍛えるのによいという。遠藤さんが特にすすめているのは麻雀。麻雀は4人で行う頭脳ゲームで、トランプのカードのように配られる「牌」を特定の形(役)にそろえる早さを競うゲームだ。
麻雀は、相手3人より先に自分の役をつくらなければならず、かつ自分が捨てた牌で相手の役が完成することもあるため、どうやって役を作るかだけでなく、その牌を捨てて問題ないかどうかも判断しなければならない。そのため、脳はフル回転でき、記憶力や集中力も高まる。
「私のクリニックの患者さんでも、麻雀を始めたことをきっかけに、認知機能が回復した方がいました。もちろん麻雀以外でも、将棋や囲碁といった日本人が古くから親しんできたゲームや、チェス、トランプ、人生ゲーム、カルタといったボードゲームもおすすめです」
おしゃべりも脳にいい活動
普段の生活で何気なく行う「おしゃべり」も実は脳を鍛えることにつながっている。誰かと話すとき、相手の言葉を聞き、意味を理解して、自分の想いを言葉にし、笑ったり共感したり、といった一連の流れは、記憶力や思考力、感情をつかさどる機能などを刺激するためだ。
おしゃべりと言っても、長々と話す必要はなく、週に2~3回程度誰かと話すだけでいいという。
「おしゃべりの相手は誰でもかまいません。近所の人でも、趣味仲間でも、お店の店員さんでもいいでしょう。近所の人に『こんにちは』とあいさつをしたり、お店の店員さんに『ありがとう』と声をかけたりするだけでも脳に刺激が加わります」
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