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健康

自律神経を呼吸や習慣で手軽に整える方法 研究の第一人者が考案した「長生き呼吸法」のコツは「1:2」のリズム

 普段、呼吸をどの程度意識しているだろうか。呼吸は自律神経によって動いているため、特に意識していない人も多いだろうが、うまく呼吸ができていないと、酸素量が不足し、自律神経に悪影響を及ぼす可能性がある。『科学的に証明された自律神経を整える習慣』(アスコム)を上梓した順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんに、自律神経を整えるためにどのように呼吸をすればいいのか詳しく教えてもらった。

自律神経を整える「長生き呼吸法」

 自律神経は、体をアクティブにする「交感神経」と体をリラックスさせる役割を持つ「副交感神経」で構成されている。呼吸は、交感神経が優位の場合、浅く、速くなる。1分間で20回を超える呼吸をしている場合、交感神経が上がりすぎているサインであり、酸素量が足りていない可能性がある。

そこで小林さんがすすめているのが、よい呼吸の習慣をつくる「長生き呼吸法」。「長生き呼吸法」の基本は、「鼻から3秒吸い、口から6秒吐く」という「1:2」のリズムで、この呼吸法を覚えたら次の動作とともに実施してみよう。

《長生き呼吸法》
【1】足を肩幅程度に開き、まっすぐ立つ。肩の力を抜き、両手を脇腹に当てて、肋骨の下を軽くつかむ。
【2】3秒間、鼻から息を吸いながら、上体をそらして両手の力を緩める。
【3】6秒間、口からゆっくり吐きながら、上体を前に倒し、両手で脇腹の肉をおへその側に集め、痛くない範囲で腸に適度な刺激を与える。

「以上で1セットです。1日1分程度でもいいですし、何度やってもOKです」(小林さん・以下同)

寝る前に副交感神経を優位にする呼吸法

 夜寝る前におすすめの、副交感神経を優位にし、睡眠を助ける呼吸法もある。

《副交感神経を優位にする呼吸法》
【1】足を肩幅程度に開き、まっすぐ立つ。両手を上に伸ばして手首をクロスさせ、鼻から3秒息を吸う。
【2】一気に力を抜いて両手を下げ、口から6秒息を吐く。

「これを繰り返すことで、全身からほどよく力が抜けます。睡眠前の習慣に取り入れておくといいでしょう」

不安感をなくす「ドキドキ解消呼吸法」

 重要な会議やプレゼン前に、緊張を解きほぐすのに使える「ドキドキ解消呼吸法」についても教えてもらった。アスリートやアーティストなどに指導する場合にもベースとしている方法で、リラックス効果があるそうだ。

《ドキドキ解消呼吸法》
【1】背筋を伸ばしてイスに座り、両手で体を包むように腕組みする(目は閉じても、開いてもよい)。
【2】両腕で体を抱きしめながら、3秒、鼻から息を吸う。
【3】続いて6秒、口からゆっくり息を吐く。

「この動作を10回程度繰り返してみてください。時間にして2分程度です。副交感神経を高めることで、緊張や不安が解消されやすくなるでしょう」

採り入れやすい3つの習慣

 呼吸以外にも、自律神経を整えることに役立つ習慣はさまざまなものがある。今回は特に採り入れやすい習慣を3つ教えてもらった。

写真を撮る

 簡単に採り入れることができるおすすめ習慣の1つが「写真を撮る」ことだ。写真を撮るといっても、一眼レフカメラなどしっかりとした撮影機材を使う必要はなく、普段使っているスマホで問題ない。外に出て散歩をしながら、ふとした瞬間に目についた、道端に咲く花や、いつもと違う空模様をスマホで撮影してみよう。

「そのときの体の状態は、まさにリラックスしていて、副交感神経が高まっている状態です。その一瞬の感動を目に焼きつけるだけでなく、記録しておくことで、感動をあとで振り返ることができます」

テンポやビートが一定の音楽を聴く

 音楽を聴くのも自律神経を整えるのに役立つ習慣だ。例えば、自宅で好きな音楽を聴いていたらいつのまにか眠ってしまった、イライラしているときに好きな曲を偶然耳にして気持ちが落ち着いた、といったようなことは、音楽で副交感神経が活性化されたことによるものだ。

ただし、どんな音楽でもいいというわけではなく、副交感神経を高められる音楽には一定の条件がある。それは、「テンポやビートが一定であること」と「音域(構成している音の高低の幅)が狭いこと」だ。

 リラックスできる音楽というと、落ち着いたトーンのクラシックなどを想像する人が多いが、「テンポやビートが一定であること」を考えるのであれば、むしろハードロックのほうが規則的で自律神経を整える観点ではよりおすすめだという。ジャズやクラシックなどは、テンポをわざとずらしたり、音域を意外な方向に展開したりすることもあるため、注意が必要だ。その点で、小林さんはモーツァルトよりもレッド・ツェッペリンをすすめている。

「また、誰にでも、昔聴いていた懐かしい歌や好きな曲があるはずです。楽しかった記憶を思い起こせるのであれば、そうした音楽を聴いてみることも心が穏やかになっていいでしょう」

1日を締めくくる「3行日記」

 1日の最後には、「3行日記」を採り入れてみよう。小林さんがアイルランドに留学していた際に同僚に教わったアイデアをアレンジしたもので、手軽に始められ、簡単なので続けやすい。書く内容は「今日失敗したこと」「今日いちばん感動したこと」「明日の目標」の3つで、いずれも1行ずつで問題ない。

 「今日失敗したこと」を書くことで、しっかりと反省し、同じミスをしないよう向き合うことができる。「今日いちばん感動したこと」は、ドラマチックなことでも些細なことでもよく、心に残ったことを書きとめよう。「明日の目標」は現実的な目標でいいので、やるべきことを書き出しておけば、翌日の取りかかりが早くなる。

「こういったメモをスマホに入力している方も多いと思いますが、私はあえて手書きをおすすめします。文字を書くこと自体に、1日で揺れ動いた心を落ち着かせ、自律神経を整えてくれる効果があるからです。あとから見返す場合にも、自筆のほうが、より当時の想いがよみがえりやすくなります。気に入ったノートやペンを使うとより効果的です」

教えてくれた人

小林弘幸さん/順天堂大学医学部教授

 こばやし・ひろゆき。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。著書に『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『整える習慣』(日経ビジネス人文庫)など。

●体力がない人が「苦手な仕事と戦略的に向き合う方法」を精神科医が指南 ポイントはキャパシティと“ミスの許容範囲”の見極め

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