睡眠インストラクターと医学博士が教える「ぐっすり眠れる体になる快眠習慣13選」<自律神経が整う頭の洗い方付き>
「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」ーー多くの人が睡眠に関する悩みを抱えているが、実は誰でもできる簡単な生活習慣を1週間続けるだけで、勝手に快眠できる体が手に入るという。最高の眠りを手に入れる13の習慣を専門家が指南する。
教えてくれた人
石川泰弘さん/睡眠改善インストラクター・日本栄養大学特任教授・著書に『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)など。
新見正則さん/新見正則医院院長・オックスフォード大学医学博士・漢方医・
眠りのスイッチをオンにする習慣でぐっすり眠れる体に
30℃を超える真夏日が増えてますます寝苦しくなるこれからの季節。心地良く眠るためにはどうすればいいのか。
「ひとりひとりに独自の“眠りスイッチ”があり、それをオンにする習慣を1週間続けるだけで、ぐっすり眠れる体を取り戻すことができます。睡眠の質は何歳になっても改善可能で、歳だからと諦める必要はありません」
そう話すのは睡眠改善インストラクターで日本栄養大学特任教授の石川泰弘さんだ。『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』(日本文芸社)などの著書を持つ睡眠のスペシャリストだ。
「睡眠中には疲労や免疫力の回復、細胞の修復、情報や記憶の整理・定着など、心と体のメンテナンスが行なわれています。特に中高年の不眠は脳の前頭前野の機能を低下させ、計画性や集中力、判断力に悪影響を及ぼすので要注意です」(石川さん)
スマホの利用などで慢性的な睡眠不足に陥り、本来のパフォーマンスが発揮できない状態を指す「行動誘発性睡眠不足症候群」の人が増えているという。特に睡眠不足が積み重なり、心身に悪影響を及ぼす“睡眠負債”をため込む人は要注意だ。
「休日の“寝だめ”は意味がないうえ、生活リズムを乱して睡眠に悪影響を及ぼします。一番いけないのが“寝なきゃいけない”という気持ちで、プレッシャーがかかってますます眠れなくなる。
睡眠薬に頼ろうとする人もいますが、一時的には眠れても根本原因の改善にはならないので、長期的にはむしろリスクが高まる可能性があります。また高齢者の場合、起きた時にフラついて転倒し、ケガや骨折につながる危険性も伴います」
石川さんによると、「基本的な生活習慣こそが、最も安全で効果的な睡眠薬」だという。石川さんが開発した「1週間でぐっすり眠れる体になる」習慣を見ていく。
入浴で自律神経のバランスを整える
良質な睡眠を得るためのカギを握るのが、自律神経のバランスだ。
日中は活動するために交感神経が優位に働き、血管が収縮して心拍数や血圧が上昇。夜になると副交感神経が高まり、血管が拡張して心拍数や血圧、体温も低下してリラックスモードとなり、睡眠へと導かれていく。
この生体リズムを整えることが重要で、温泉入浴指導員でもある石川さんによれば、その最強の方法が「入浴」だという。
「人間は深部体温が低下すれば、自然と眠くなります。入浴すると一時的に体温が上がりますが、血管が拡張しているため皮膚からの熱放散が進み、入浴後には深部体温が低下。さらに水圧によって血行が良くなり、エネルギー消費が増加して若干ですが疲れます。この2つのプロセスによって、スムーズに睡眠へと導かれるのです」
ただし「眠るための入浴」にはコツがある。熱すぎるお湯は交感神経を刺激して逆効果になるため、心地よいと感じる39~41℃程度に。暑い日は39℃程度のぬるめのお湯に15分ほど浸かれば筋肉もほぐれ、血液循環が良くなって眠りやすくなる。
さらに石川さんが推奨するのが炭酸入浴剤だ。
「お湯に溶けた炭酸ガスは皮膚から吸収され、血管平滑筋を弛緩させ血管を柔らかく、広がりやすくします。好みの香りの入浴剤を使えば、リラックス効果も高まります」
シャンプーする際の洗い方にも目を向けたい。
「洗髪前に頭のてっぺんにある『百会』のツボを軽くトントン叩いたり、ふんわり押したりすると自律神経が整い、シャンプー中に円を描くようにこめかみをマッサージすれば『側頭筋』の緊張が和らいで睡眠モードに切り替わります」(石川さん)
頭のてっぺんをトントン!「睡眠モードに入る頭の洗い方」
【1】シャンプー前にツボ押しタッピング
頭のてっぺんにあるツボ「百会(ひゃくえ)」を、両手の中指で軽くトントンとタップしたり、ふんわり静かに数秒押す。
<ポイント>
自律神経を整えるツボを軽くトントンしたり、ふんわり押したりする。
【2】シャンプー中にこめかみクルクル
指の腹で側頭部にやさしく圧をかけて筋肉をロックするようにとらえ、そのまま斜め上に引き上げるようにクルクル円を描いてほぐす。
<ポイント>
引き上げるように円を描くセルフマッサージで頭のだるさが抜けて軽くなる。
早く寝たい時は入浴後の「手冷やし」も効果的
入浴後の行動にも快眠のカギがある。風呂から上がってすぐにベッドに入るのはNG。深部体温が下がるまで通常で90分ほど、ぬるめのお湯でも60分ほどかかるからだ。
「少しでも早く寝たいという時は、入浴後の『手冷やし』がおすすめ。洗面台や洗面器に水をためて手のひらを1分間浸し、水を替えて1分浸し、再度水を替えて1分浸します。計3分浸すと、体を巡る血液が冷やされて深部体温が下がります。水温は冷たすぎない20℃前後が理想的です」(同前)
入浴後は関節の可動域が広がっているので、タオルを使って肩と背中の大きな筋肉をストレッチすれば、さらに血流が良くなって眠りやすくなるという。
肩と背中の筋肉をほぐす 「快眠タオルストレッチ」
どちらかの手でタオルの端を持ち、頭の後ろから背中に垂らす。腰の後ろに回したもう一方の手で、タオルの端をつかむ。上だけ下だけと交互に引っ張り、5~10回動かす。タオルを持つ手を入れ替え同様に行なう。計30秒。
【コツ1】タオルを持つ位置を近くすると強度がアップ。
【コツ2】伸ばす時に息を吐く(口から細く長く)。
<ポイント>
●睡眠中は心拍数が下がり血流が悪くなりがちなので肩や背中の大きな筋肉を柔らかくすると効果的。
●寝る前の激しい運動は睡眠の質を下げるので、短い時間で終わらせる。
運動習慣や寝室の環境も重要
快眠には心地良い疲労も不可欠だ。
「運動習慣は大切です。少し息が切れる程度の速さで1日合計6000歩程度歩きましょう。暑い夏場は夕方に歩くといいですね。加齢とともにバランス感覚が衰えて歩行中に転びやすくなるので、ラジオ体操を加えるのも効果的です」(同前)
お酒は軽い晩酌程度なら、就寝の2時間前に飲み終えればOK。ただしアルコールを摂りすぎると睡眠が浅くなるので飲みすぎは禁物だ。
寝室の環境も重要だと石川さんは言う。
「快眠に適した夏の室温は24~26℃、湿度50%前後とされています。寝る少し前から明かりを落とし、寝る時は電気を消しましょう」
さらに「朝食」も睡眠と深い関係があるという。
「体内時計を整える働きを持つ睡眠ホルモン(メラトニン)のもととなるのが必須アミノ酸のトリプトファンです。これは14~16時間かけて神経伝達物質のセロトニンからメラトニンへと変化するので、朝食で摂取するのが最適。ヨーグルト、バナナ、牛乳がおすすめ。豆腐や納豆、味噌などの大豆製品、鮭などの魚類にも豊富に含まれているので、和食も『睡眠用朝食』にピッタリです」
睡眠力を引き出す漢方
漢方薬にも目を向けたい。前出の『1週間で勝手にぐっすり眠れる体になるすごい方法』で監修を務めた新見正則医院院長の新見正則医師(オックスフォード大学医学博士・漢方医)が言う。
「強い睡眠作用はありませんが、体質が徐々に整うことで体が本来持っている“睡眠力”が引き出され、結果として質の良い眠りが持続的に得られるようになります。ただし漢方薬は合う人、合わない人がいる。
心身の疲れや不安感、焦りを抑える効果が期待される『加味帰脾湯(かみきひとう)』、精神的なストレスや不安緊張に対しては『酸棗仁湯(さんそうにんとう)』、神経の高ぶりやイライラを鎮めるとされる『抑肝散(よくかんさん)』、自律神経のバランスを整え、イライラを鎮める効果が期待できる『柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)』などは、ドラッグストアで購入可能なので、試してみるといいでしょう」
自分に合った習慣を見つけて、ぐっすり眠れる体を手に入れたい。
ぐっすり眠れる体になる快眠習慣13【まとめ】
【1】39℃で15分入浴する
夜の入浴は、体温の低下、若干の疲労、血液循環を促すため、寝つきがよくなる。暑い日の熱い湯は逆効果になるので、気持ちいいと感じる39℃程度のぬるま湯に15分ほど浸かる。
【2】炭酸入浴剤を使う
お湯に溶けた炭酸ガスは皮膚から吸収され、血管平滑筋を緩めて血管が広がりやすくなり、より血液循環が良くなる。好みの香りの入浴剤を使えばリラックス効果も期待できる。
【3】頭はツボと筋肉を意識して洗う
頭を洗う前に自律神経を整えるツボ「百会」をやさしく刺激し、頭を洗っている最中に「側頭筋」をマッサージすることで、入浴後に心身の力が抜けて、よりリラックスする。
【4】入浴前後に1杯の水を飲む
高齢者は暑い日の睡眠中の脱水にも要注意。毎日の入浴前に必ずコップ1杯の水を飲む。入浴後も1杯の水を飲むことで、脱水予防だけではなく、体温を下げることにも役立つ。
【5】浴室の照明を少し暗くする
浴室の照明が明るすぎると、リラックス効果を妨げるだけではなく、体内時計を整えて体に夜と認識させる「メラトニン(睡眠ホルモン)」の分泌に悪影響を与える可能性がある。
【6】20℃の水で3分間手を冷やす
入浴後は洗面台などに水をためる。水温は20℃が理想。その水に大きな動脈が巡っている手のひらを計3分浸すことで、体を循環する血液が冷やされ、深部体温が下がりやすくなる。
【7】入浴後に快眠タオルストレッチ
入浴後の関節の可動域が広がり、高齢者でも安全にストレッチしやすい時に、ふくらはぎや肩と背中といった大きな筋肉をほぐすことで、より血流が良くなる効果が期待できる。
【8】「睡眠用朝食」を摂る
必須アミノ酸の「トリプトファン」が豊富な豆腐の味噌汁、納豆、鮭などを朝食で食べると、就寝前に「メラトニン(睡眠ホルモン)」に変化して作用し始め、入眠がよくなる。
【9】室温25℃・湿度50%の寝室をつくる
快眠には寝室を快適な温度と湿度に保つことが必須。快適と感じる夏の室温は24~26℃、湿度は50%前後とされている。湿度が高いと、汗が蒸発せず、体温が下がりにくくなる。
【10】1日6000歩のウォーキング
快眠には心地良い疲労感も大切。早朝の運動は長時間の昼寝を誘発しかねないので、夏は夕方に少し息が切れる程度の速さで計6000歩ほどウォーキング。ラジオ体操もやるとより効果的。
【11】ドラッグストアで買える漢方薬を飲む
第2類医薬品としてドラッグストアで販売されている漢方薬のうち、睡眠の質を改善するとされる「抑肝散」「加味帰脾湯」「酸棗仁湯」「柴胡加竜骨牡蛎湯」などを試してみる。
【12】入眠前の腹式呼吸
寝る直前に、お腹をふくらませるように鼻からゆっくり息を吸い、お腹をへこませながら口からゆっくり息を吐くという腹式呼吸を7~10回行なうことで、心身がリラックスする。
【13】就寝2時間前には晩酌を終える
お酒を飲むと、夜中に起きてトイレに行く回数も増える。アルコールの代謝能力は人によって異なるが、毎日の軽い晩酌の場合は少なくとも寝る2時間前までには済ませておく。
※週刊ポスト2026年6月19日号
●寝苦しい夏の快眠習慣5つの正解「スマホの目覚まし、スヌーズ機能はあり?」専門家監修
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