85才からでも鍛えられる!転ばない体をつくる「簡単体幹トレーニング」をパーソナルトレーナーが伝授
ちょっとした段差でのつまずきは、体幹の衰えを知らせるサインのひとつ。体幹とは、頭と手足を除く胴体部分で、筋肉や骨、関節、内臓などを含みます。「まだ大丈夫」と油断せず、今から対策を始めないと、将来、自分の足で自由に動ける時間が短くなってしまうかもしれません。体幹を整え直すトレーニング法を専門家に聞きました。
教えてくれた人
澤木一貴(さわきかずたか)さん/パーソナルトレーナー、「SAWAKI GYM」代表。幅広い年齢層を対象とした健康情報をメディアや講演会等で発信している。近著『体力おばけへの道 超ハードモード編 自分史上最高の「動ける体」を手に入れよ!』(KADOKAWA)が話題。
体幹改善の第一歩は「鼻呼吸」から
「体幹が衰えた人にまず指導するのは、呼吸の改善」
と話すのは、パーソナルトレーナーの澤木一貴さん。
「鼻から吸って吐く『鼻呼吸』は、体幹にあるインナーマッスルや臓器を動かす、まさに“体幹まるごとトレーニング”。一方、浅い『口呼吸』は、肩こりや腰痛のほか、口角が下がった老け顔につながります。若々しくハツラツとした印象を目指すなら、正しい鼻呼吸に改善が必須です。
ゆっくりと深い呼吸をすると胸椎(胸の背中側にある背骨)がストレッチされ、姿勢の改善にもなります」(澤木さん・以下同)
高齢になると1回の転倒が命取りになりかねない。転ばない体に不可欠なのが、「バランス力」と「ブレーキ力」だという。
「通常の歩行は、右手と左の骨盤と足、左手と右の骨盤と足が対角線的に連動することで前に進む仕組みで、体幹が衰えるとそのバランスが乱れ、つまずきやふらつきのもとになります。
また歩行は、一瞬片足が宙に浮き、反対の足で体を支える行為の連続。『片足で体を支える』にもバランス力が必要です」
歩行スピードの維持はさることながら、実は、着地時にブレーキをかける筋力が重要なのだ。
「高齢のかたも、割と加速はできるんです。問題は、ピタッと止まる力がないこと。急いで電車に飛び乗れても、その後止まれずに転んでしまうケースもあります。スクワットのしゃがむ動作がブレーキ力にあたるので、椅子やトイレに座る際は、ゆっくりしゃがんでみてください。つまずいても、転ぶ前に踏ん張る力があれば自分を守れます」
体幹が整うことのメリットを、澤木さんが説明する。
「動きやすくなって行動の幅が広がったというかたが多いです。ちなみに、85才の私の母はトレーニングを始めた15年前より背筋が伸びて滑舌もよくなり、驚くほど意欲的になりました」
家でも職場でもできる気分もスッキリ「簡単体幹トレーニング」5選
体幹トレーニングを1週間続ければ、「体が軽くなった」「眠れるようになった」などのポジティブな効果が期待できる。ぜひやってみよう!
1.姿勢を整える「Y字深呼吸」
<解説>「『ただの呼吸が体操?』 と思うかもしれませんが、深い鼻呼吸は、固まった胸椎を伸ばし、菱形筋を動かす立派な体幹トレーニング。腕をY字に上げると肩関節を覆う三角筋も動くので、肩こりにも効きます」(澤木さん・以下同)
【Y字深呼吸のやり方】
鼻から息を大きくゆっくりと吸いながら、腕をY字に上げ、口から吐きながら腕を下ろす。ゆっくりと5回繰り返す。腕が上がらない人はT字(真横に広げる)でも、A字(下に広げる)でもOK。
<日常の応用>入浴中に深呼吸する
「入浴中はリラックスしているので呼吸も深くなりやすい。浴槽にもたれながら行う場合、手は上げずに呼吸をするだけでもいいでしょう」
2.骨盤の位置を安定させる「骨盤ゆらし」
<解説>「体幹が崩れると、それを支える骨盤も不安定になる。それを解消し、骨盤の位置を矯正するのがこの運動。腰まわりや腹筋、背筋も働くので腰痛軽減やお腹まわりの引き締めにも。前傾するときは胸を張り、後傾ではお尻の穴をぐっと締めます」
【骨盤ゆらしのやり方】
まっすぐ立って両手を腰に置き、骨盤を前後にゆらす。「骨盤を後傾(後ろに倒す)させるときは、肩を丸めて肩甲骨を広げながら、おへそを覗き込み、前傾(前に倒す)させるときは、肩甲骨を寄せて胸を張りながら、恥骨を立てるようにします」。これをゆっくりと10回繰り返す。
<日常の応用>デスクワークの合間に行う
「座りっぱなしで腰が固まってしまったときにおすすめです。キャスターなしの椅子に浅く座り、姿勢を正して行うこと」
3.体幹を安定させる「四つん這いバランス」
<解説>「体の裏側の筋肉を対角線的に使うバランス運動。手足を伸ばしたときに体がグラグラしてしまう人は、歩行が不安定な可能性大。最初は10秒キープしなくてもいいので、コツコツ頑張りましょう」
【四つん這いバランスのやり方】
【1】手は肩の下に置き、股関節の下にひざがくるよう四つん這いになる。曲げた足のつま先を立て、顔は前を向く。
【2】左手を前に、右足を後ろに伸ばして、そのまま10秒キープし、元の位置に戻る。これを3回繰り返し、反対側も同様に行う。「バランス力がない人は、体がぐらつくはず。その際は、手足が少し離れる程度でもOK」。
<日常の応用>早歩きをする
「姿勢を正し、骨盤を大きく回すようなイメージで足を大きく踏み出す。腕ばかり大きく振って歩く人がいますが、それではバランストレーニングにはなりません。骨盤と足の動きに合わせ、腕は自然に振るのが正しい形です」
4.バランス力を養う「ニー・トゥ・エルボー」
<解説>「体の表側の筋肉を対角線的に使う運動。上の『四つん這いバランス』とこの運動で、総合的にバランス力を養います。片足立ちでもぐらつかず、手足を動かせれば合格です!手で反動をつけすぎないように、体はまっすぐ伸ばしましょう」
【ニー・トゥ・エルボーのやり方】
【1】まっすぐ立ち、右手を斜め上に、左足を斜め下に伸ばす。
【2】右ひじと左ひざを合わせるようにお腹を縮める。これを10回繰り返し、反対側も同様に。「上半身と下半身をつなぐ腸腰筋、お腹の前にある腹直筋が働きます。『四つん這いバランス』と『ニー・トゥ・エルボー』の体操は、手と足を対角線に動かすことで体幹を整え、バランスよく動ける体にするのが目的です」。
<日常の応用>早歩きをする
「姿勢を正し、骨盤を大きく回すようなイメージで足を大きく踏み出す。腕ばかり大きく振って歩く人がいますが、それではバランストレーニングにはなりません。骨盤と足の動きに合わせ、腕は自然に振るのが正しい形です」
5.背中と胸をほぐす「ソラシックローテーション」
<解説>「ソラシックとは『胸椎』のこと。胸椎をひねる動きで背筋が伸び、胸が開いて呼吸がしやすくなります。胸を開いたとき、肋骨から骨盤に向かって伸びているインナーマッスルの腹斜筋も動かすことができます」
【ソラシックローテーションのやり方】
【1】正座からつま先を立て、片腕を上半身に対して90度くらいの位置に置き、上体を少し前に倒す。片方の手は頭の後ろに添える。
【2】みぞおちを支点に、息を吸いながら胸から上を大きく開く。胸まわりが気持ちよく伸びたら、息を吐きながら元の位置に戻る。これをゆっくり5回繰り返し、反対側も同様に行う。
<日常の応用>洗濯物を干すとき、横向きから体をひねって行う
「洗濯物を干す以外に、浴室の壁を上まで磨くのもおすすめ。左右の手を大きく振りながら磨く“風呂掃除ダイエット”を行って、見事にやせたかたもいます!」
取材・文/佐藤有栄 イラスト/中村知史
※女性セブン2026年6月11日号
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