「お餅は太る」「肉より魚のほうが健康的」食事にまつわる”ウソ”の健康知識に専門家が喝!
新たな年を迎え、改めるべきは「間違った健康知識」かもしれない。健康のため、ダイエットのために、どんな栄養を摂るべきなのか。いままで常識だと思っていた健康知識は「ウソ」かもしれない。健康にいいのは「肉より魚」「白ワインより赤ワイン」——最新研究で判明した「ウソの健康知識」について専門家に解説してもらった。
食事にまつわる「ウソの健康知識」に8人の専門家が喝!
「数の子のような子孫繁栄」「餅のように寿命が長く伸びる」——お正月の食卓に並ぶ食べ物には、健康長寿への祈りが込められているが、いくら強い気持ちがあっても、普段の食事を疎かにしていれば、水の泡。しかし「ウソの健康知識」は食生活にも蔓延している。
肉より魚が健康にいい
肉より魚が健康にいいと考える人が多いが、金町駅前脳神経内科院長で認知症の症状に詳しい内野勝行さんは否定する。
「健康で長生きしたいなら肉を食べるべき。年を重ねるとたんぱく質不足が原因で体力や脳神経の働きが低下します。たんぱく質が多いのは、魚よりも圧倒的に肉です。特に鉄分やマグネシウムが豊富な牛肉やビタミンB群が豊富な豚肉など、赤身肉には栄養がたっぷり。積極的に摂ってください」(内野さん)
ダイエットカウンセラーで管理栄養士の伊達友美さんは肉より魚の方がヘルシーという考えは間違いだと話す。
「脂肪を燃焼させる効果を持つアミノ酸の一種である『L-カルニチン』は、赤身肉に多く含まれますが、魚にはほとんど含まれていません。血流をアップさせてやせやすい体を作る鉄分も、赤身の肉に多い」(伊達さん)
ベジタリアンは長生きする
ビタミンやミネラル豊富な野菜だが、落とし穴もある。医師で健康科学アドバイザーの福田千晶さんが解説する。
「野菜メインの食事をすれば健康になれると考える人は多いですが、ベジタリアンが長生きするという明確なデータはないようです。
また、最近は自己流のヘルシー食で栄養バランスが崩れている人がいます。特に気をつけるべきは痛風の原因となるプリン体の多い食品の過剰摂取。鶏のささみやさんま、かつお、あじなどが該当します」
酒は百薬の長
新年会などお酒の席が増える年始。「百薬の長」ともいわれていたお酒だが、複数の研究により、残念ながら「できるだけ飲まないほうがいい」と証明されている。秋葉原駅クリニックの佐々木欧さんが言う。
「適量のお酒ならば健康にいいという考えは間違い。アルコールは摂取しない方が死亡リスクが低いことがわかっています。乳がんや骨粗しょう症のリスクも高くなる。2023年からは酒量を控えましょう」
赤ワインが体にいいという説も過去のもの。管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「赤ワインが含むポリフェノールが動脈硬化の予防にいいとされていましたが、白ワインと比較して体への影響を追跡する実験を行ったところ、両者の働きに大きな違いがないことが明らかになりました」
二日酔いには「ウコン」
二日酔い防止に買い求めるウコンも、かえって体に負担をかけるという。望月さんが続ける。
「過剰摂取により、アレルギーや肝障害を引き起こすことがある。特に胃潰瘍や胃酸過多、胆道閉鎖症の人は副作用が強く出やすく、注意が必要です」
乳製品は腸にいい健康食
体にいい食材でも、季節によっては体を蝕む原因になり得る。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
「ヨーグルトや牛乳などの乳製品は腸にいい健康食の代名詞ですが、年末年始の寒い時期は胃腸を冷やして負担をかけるため、おすすめできません。摂るならば電子レンジで少し温めてください」
玄米やオートミールは腸にいい
乳製品と並んで「腸活」における必須アイテムとされる玄米やオートミールにも罠(わな)が潜む。
「便秘や胃弱に悩む人が胃腸の調子を整えるために食べても、白米と比較して消化しづらく、かえって胃腸に負担をかけて腹痛になる人もいます。また、便通がよくなったと思っていても、実際にはお腹を下していて必要な栄養素が吸収されずに外に出ている場合もあるのです」(伊達さん)
低糖質パンは腸内環境が整う
「手軽に腸内環境を整えられる」が宣伝文句の低糖質パンにも注意が必要だ。腸セラピストの真野わかさんが指摘する。
「”低糖質”“食物繊維入り”を謳ったパン類は避けた方がいい。確かに糖質が少なく食物繊維は豊富ですが、その効果以上に添加物や保存料などの悪影響が懸念されます。特に保存料は、菌の繁殖による商品劣化を防ぐ目的で加えられているので、善玉菌などの腸内細菌に影響を与えるリスクがあります」
塩分は「健康の大敵」
体にいいとされてきた食品にリスクがある一方で「体に悪い」と敵視されがちな成分の中には必要なものもある。
「塩分は“健康の大敵”と毛嫌いされますが、減らしすぎると逆に体に負担がかかる。塩分不足はかえって循環不全や脱水、むくみなどにつながります」(望月さん)
イライラにはカルシウムを
不足する栄養素はサプリメントや健康食品で補える時代になったが、間違った知識に基づいて用いれば、効果は得られない。望月さんはイライラするからカルシウムを補給するのは誤りだと話す。
「確かに健康な体を作るためには必要な成分であるものの、イライラしたときに摂っても意味がない。摂取すべきはビタミンC。ストレスに抵抗するための『副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン』の合成を促す働きがあります」(望月さん)
プロテインでたんぱく質補給
プロテインでたんぱく質を補う人も多いが、AGE牧田クリニック院長の牧田善二さんはのまない方がいいと話す。
「肉や魚が含有するたんぱく質がゆっくりと時間をかけて消化吸収される一方で、粉末やゼリーなどのプロテインは、一気に腸に吸収され、臓器に負担をかける。たんぱく質は食品から摂取するのがいちばんです」(牧田さん)
グルコサミンやコンドロイチンはひざにいい
秋津さんが疑問視するのはひざや目にいいとされる成分。
「“ひざ痛の緩和”を売り文句に販売されているグルコサミンやコンドロイチンは、経口摂取に意味はない。胃腸で消化されるため、ひざまで届くことはまずありえないのです。
ブルーベリーが含有するアントシアニンの視力回復効果もさかんに喧伝されているものの、エビデンスはないのです」
お餅は太る
2023年こそスリムな体で過ごしたい―その一心でお正月の餅の個数を制限しようとする人も多いだろう。しかし伊達さんはむしろ積極的に食べるべきだと主張する。
「餅は冬の最強ダイエットフードです。日本人に合う良質な炭水化物である故に消化がよく、脂質も含まれていない。すぐにエネルギーに変換され、体を温めて代謝を上げてくれる。特にお汁粉は小豆のむくみ改善効果もあるので、冬のダイエットにはぴったりの一品です」(伊達さん)
16時間断食でダイエット
食事のタイミングと体重の相関関係も新常識が次々と明らかになっている。秋津さんが首をかしげているのは16時間断食だ。
16時間食べない代わりに残りの8時間は何を食べてもいい『16時間断食』が流行していますが、時間に制限があるため、“あと30分で食べ終わらなければ”と早食いや一気食いによる血糖値の急上昇やカロリー過多が懸念されます。また、焦って食事をするとむせたり逆流性食道炎のリスクが上がったりする危険もある」(秋津さん)
眠る前に食べると太る
ダイエットにおける常識とされてきた「眠る前に食べると太る」「朝食を抜くと太る」も大きな間違いだ。
「太るかやせるかを決めるのは、時間よりも食事内容です。むしろ“食べてすぐに寝ると太るから”と無理して起きている方が太りやすい体になる。深い睡眠は糖質の代謝を整え、脂肪を燃焼するホルモンも睡眠時に生成される。
また、ダイエットのために1食抜くならば朝がおすすめです。夕食を抜けば空腹感で睡眠の質が悪くなり、朝食を食べすぎると胃腸が活性化し、一日中食欲旺盛になりやすい。抜きたくない場合は、控え目にするといい。私自身は白湯とみかん1個か、りんご半分を摂っています」(伊達さん)