兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第176回 「ショートステイ」やってみました!その3】
若年性認知症を患う兄と同居するライターのツガエマナミコさん。先日、その兄が初めてショートステイに行ってきました。今回は、ショートステイ滞在レポートです。
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「想定範囲内」だったようです
「にぃさんぽ」(ボケ兄のひとり散歩)事件があってから、わたくしが家にいるいないに関わらず、24時間態勢で玄関外のポーチの門扉にチェーンを掛けるようになりました。ただ、高さが胸辺りまでですから、その気になれば乗り越えられると考えると、身体が健常なだけに一抹の不安はございます。外が暗くなると落ち着かなくなることが多いので、日が短い冬はなおのこと兄をひとり置いて仕事に行くのが心配になります。
ショートステイでの兄もだいぶ落ち着きがなかったようでございます。
施設のレポートによると、昼食後、おやつを食べ終わると「帰ります」と訴え、しばらくするとスタッフさまが慌てて駆けつけるほどの音を立てて窓に額と膝をぶつけたようでございます。怪我や痣などは全くなかったですが、その後もみなさんがくつろぐデイルームをうろつきまわったようです。21時の就寝時間が過ぎ、部屋に案内されてもなかなか寝なかったよう。家では深夜まで起きているので致し方ございません。
個室でテレビをつけてもらっても、お部屋から出て別のお部屋のドア前でズボンを下ろしてしまったり、再びデイルームの窓に額をぶつけてしまったり、床にお尿さまをしてしまった報告も書いてございました。23時30分頃からようやくぐっすり寝たようで、お食事はすべて完食とのことでございました。
はじめての場所で落ち着かないのは仕方なく、まぁまぁ想定の範囲内の1泊2日でございました。定型文とは承知しながら「またのご利用をお待ちしております」の一文にホッとしたツガエでございます。
これが2泊3日となったらどうなるのか。3泊4日はできるかな?と欲が出ます。
昼から翌日15時ぐらいまでしか預かっていただけない1泊2日では、とても出張など行けません。最低でも2泊3日は必要で、友人と2泊3日の旅行に行きたいと思ったら4泊5日してもらわなければならなりませぬ。兄はそれに耐えられるのでしょうか。
何度か利用してショートステイに慣れてくれるといいのですが、忘れる速度の方が早いと思われ、前途多難。週1で1年半通っているデイケアでさえ、いまだに、毎朝「遠いの?」「歩いて2分だよ」という会話をいたしております。
そう考えるとわたくしにはもう友人と足並みをそろえて旅行をすることはできない気がいたします。
ショートステイ施設は、連休などは予約がいっぱいになることが多いそう。以前にケアマネさまがおっしゃっていたように、遠くの施設でもよければ予約は取れるけれど、施設の送迎範囲内でなければ家族が送り迎えをしなければなりませぬ。車を持たないツガエにとって利用できる施設はだいぶ少ないのでございます。
ちなみに特別養護老人ホームも料金はショートステイと同じだとケアマネさまから伺いました。1泊6000円(3食付き)だとしてひと月あたり18万円。6500円だとしたら約20万円となります。年間240万円? 10年間お値段据え置きでも2400万円!!!!!
そりゃ無理。絶対的に無理でございます。
やはり死ぬまで自宅介護。ああ、お先真っ暗。老々介護の行く末を思うと今のうちに笑っておくしかなさそうで、ツガエはまた己の快楽のために兄をショートステイさせようと目論んでおります。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性59才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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