仲本工事さん追悼特番では局を超えて「体操コント」も放送!「大笑いしながら仲本を思って」と高木ブー|連載 第84回
「仲本の追悼番組も放送されるし、僕も気持ちを切り替えて、前を向いて歩いて行かないとね」と、高木ブーさんは顔を上げる。2023年の3月には、90歳を迎えるブーさん。ますます張り切って、別の場所にいる4人のメンバーの分まで、加藤茶さんとふたりでザ・ドリフターズの魅力をどんどん伝えていきたいと決意を新たにしている。(聞き手・石原壮一郎)
長さんと仲本の「ばか兄弟」は名作です
仲本(工事)を追悼する特別番組が、15日の夜にあります。タイトルは『ドリフ大感謝祭 ありがとう仲本工事さんスペシャル』(20時~21時45分、フジテレビ系)。「ありがとう」は、僕たちが仲本に向けて言いたい言葉でもあるし、仲本がファンのみなさんにいちばん言いたい言葉でもあるんじゃないかな。
番組では、『ドリフ大爆笑』でやった「商店街」のコントや「ばか兄弟」のコントが放送される。長さん(いかりや長介)と仲本の「ばか兄弟」は、つくづく名作だと思うな。ふたりのキャラが生きてるし、セリフも設定もすごく練り上げられてる。あのコントは、出てくる兄弟をバカにしているわけじゃない。個性を尊重した上で、彼らの自由奔放さをリスペクトしているひじょうに知的な内容なんだよね。
「仲本と言えば」の「体操コント」も見てもらえる。TBSの『8時だョ!全員集合』でやってたコーナーだけど、局の垣根を飛び越えて、仲本のために協力しようってことになったらしい。ほかにもサプライズがたくさんあって、仲本の思い出がたっぷり詰まった内容になってます。テレビを見た人にコントを笑ってもらうことが、仲本からの「ありがとう」だよね。仲本に聞こえるように、大きな声でたくさん笑ってください。
加藤(茶)と僕も、ももいろクローバーZのメンバーや東京03の飯塚悟志君といっしょに、スタジオで仲本の思い出を話してきた。ももクロと飯塚君とは、加藤、仲本、僕の3人といっしょに、去年の夏からニコニコ生放送で番組をやってたし、武道館でライブもやったんだよね。みんな仲本のことが大好きだから、さぞショックだっただろうな。
当たり前なんだけど、その番組にせよ別の番組にせよ、仕事先に行ったときに仲本がいないんだよね。いつもニコニコ笑って座ってたのにさ。「そうかあ……」と思ったときに、あらためて実感させられる。
でも、追悼番組も放送されることだし、僕も気持ちを切り替えて、前を向いて歩いて行かないとね。仲本の分まで、加藤とふたりでがんばります。年が明けて2023年の3月になったら、僕はついに90歳になっちゃう。ビックリだよ。去年も「数え年で卒寿です」って言ってたんだけど、今度は満年齢で「卒寿」です。
前も言ったけど、「卒寿」は人生を卒業するっていう縁起の悪い意味じゃない。「卒業」って、学校でも仕事でも次のステージに進む節目でもあるよね。だからきっと僕も、もっと楽しい次のステージに進めるんじゃないかな。期待と希望を込めつつ、そう解釈してます。
まだ詳しくは話せないんだけど、楽しい企画があちこちで進んでる。90歳の誕生日のあたりに向けても、取り掛かっていることがいくつかあるんだよね。そんなこんなでこのところけっこう忙しい。やることがあるっていうのは、ありがたいんだけどね。
いろいろあった今年は、あらためて家族に助けられていることを実感した。落ち込んでいるときは静かに見守ってくれて、「そろそろ歩き出さなきゃ」と思ったときには、さりげなく励ましたり準備を整えてくれたりする。料理や身の回りのこともだけど、ひとりだったら今もまだショックで寝込んでいるかもしれない。この連載では家族に対して何度か感謝の言葉を伝えてるんだけど、そろそろ「そう思ってるなら、たまには直接言ってよ」って言われちゃうかな。
今年に限らず、ドリフのメンバーに限らず、これまでの人生でたくさんの人にたくさんお世話になってきた。その分、たくさんのお別れもあった。僕はお世話になった人の葬儀は、時間が許す限り参列するようにしてる。結婚式と違って、葬儀は招待状が届くわけじゃない。だからこそ足を運ぶことで、その人にどれだけお世話になったかを考えながら「ありがとうございました」と、お礼を伝えたいんだよね。
年末なのに、なんだかしめっぽい話になっちゃった。今年も残すところあとわずか。どうかみなさん、風邪などひかないように気をつけて元気に過ごしてください。まずは仲本の追悼特番で大笑いしてもらうと、免疫力がアップするんじゃないかな。
ブーさんからのひと言
「年を取ってる分、いろんな人を見送ることが増えてきました。それはとても悲しいし、寂しい。だからこそ、毎日を大切に、しっかり前に進んで行くことが、お世話になった人たちへの恩返しだと思っています」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。2021年6月に初めての画集『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)を上梓。毎月1回ニコニコ生放送で、ドリフとももクロらが共演する「もリフのじかんチャンネル ~ももいろクローバーZ×ザ・ドリフターズ~」が放送中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。