加藤登紀子さん(78才)が実践する洋服のリメーク「すべてのモノはよみがえる、小さな達成感も」
近年は新型コロナによる巣ごもり生活もあり、不要なモノをできるだけ処分したという人も多かったはず。モノを持たない生き方は自分らしい生活が見えてくるというが、そんな中、「捨てる」とは真逆の考え方が注目を集めている。歌手の加藤登紀子さん(78才)は、コロナ禍で増えた在宅時間に自分の手で洋服をリメークするようになったという。モノを「作り直す」楽しさを加藤さんに聞いた。
コロナ禍が自分で裁縫するきっかけに
歌手の加藤登紀子(78才)は洋服のリメークを実践している。
「以前は衣装を縫ってくれる人にリメークをお願いしていたけれど、コロナ禍で在宅時間が増え、自分でやるようになりました。ステージ衣装は素材や縫製がすばらしいのにワンシーズンしか着ないのはもったいない。ただし、そのまま着るのではなく、糸を解いてひっくり返したり、ざっくり切ったりしてガラリと印象を変えちゃうのがポイントです」(加藤・以下同)
原形をとどめないリメークが加藤の得意技だ。取材時に着用していたフレンチスリーブのトップス(上写真)は、もとはコムデギャルソンのジャケットの袖の部分だったという。
「洋服をリメークすることを私は『世直し』と呼びます。はさみと糸だけでできる世直しは本当に痛快です。この2年間ですっかりハマって、朝のニュースを見ながら1時間ほどチクチクと手を動かすのが日課になりました。おかげでアイディアを出す発想力に加えて何度も縫い直す忍耐力や、よいと思ったことを実行する決断力が鍛えられました。ひと仕事終えた後は、小さな達成感もあります」
すべてのモノはよみがえる
戦争世代の自分は「使い捨て」ではなく「作り直す」世代だと加藤は続ける。
「洋裁学校を出た母は洋裁店を開くのが夢でした。幼い頃から母の手伝いをしていたのがいまに生きています。私の世代は使い捨てではなく、いろいろなモノを作る経過を学び、すべてのモノはよみがえることを知っています。洋服は針と糸で新しく生まれ変わるんです」
捨てられない服をよみがえらせる方法は?
2014年に出版された『フランス人は10着しか服を持たない』(ジェニファー・L・スコット著、神崎朗子訳)がベストセラーになり、一時はファッションにも断捨離が求められるようになった。
だが『捨てられない服』の著者でスタイリストの石田純子さんは、無理に服を捨てる必要はないと話す。
「“子供の入学式で着た”“結婚記念に買った”“すごく高価だから”“素材や形が好きだから”“親が編んでくれたニットだから”など、女性にはさまざまな理由で捨てられない服があります。そうした理由がはっきりしているモノは無理に処分しなくていいんじゃないかな。
特に30年以上前の服は高価な分、素材がよくていまも色褪せず、捨てる必要がない。組み合わせ次第でいまも充分に着ることができます」
クローゼットの奥の洋服はどうすればよみがえるのか。
「大切なのは古臭いと思われないコーディネートです。セットアップのスーツはそのまま一緒に着るのではなく、ジャケットだけ、スカートやパンツだけとバラバラに着てみるのがいい。
かっちりしたモノは真逆のカジュアルなアイテムと合わせ、足元はデニムやスニーカーを。肩幅が気になるならストールをかけると目隠しになります。色や柄が派手なら同色系でなじませる。柄物のシャツなら重ね着で袖や襟をチラ見せするとポイントになってかわいい。ファーのコートや着物はリメークがおすすめです」(石田さん)
ファッションは人生に潤いを与える。前出の石田さんは高齢者こそ服に気を使うべきと主張する。
「洋服とアクセサリー、バッグ、靴などの組み合わせは無限にあります。コーディネートを考えていると脳を使うから老化防止にもなります。何より大切なのは、自信を持って服を着ること。“自信が美しさになる”との言葉通り、好きなモノを自信を持って着ると若々しく素敵に見えるはずです」
さあ、クローゼットの奥をのぞいてみよう。
文/池田道大 取材/進藤大郎、伏見友里、村上力 撮影/関谷知幸、平野哲郎
※女性セブン2022年10月20日号
https://josei7.com/
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