猫が母になつきません 第326話「ごはんよ」
最近自主的に食事を作るようになった母。私の分も作ってくれるのはいいのですが、時間の感覚がおかしくなっているのでとんでもない時間に「ごはんよ」と呼びに来るのが悩ましい。認知症による脳の機能の低下が原因で「朝目覚め、日中活動し、夜は眠くなる」という《体内時計》が機能しにくくなるそうです。昼夜が逆転してしまうのもそのせい。この頃は母はだいたい深夜2時くらいに起きだすので、食事の時間がよくわからなくなってしまうのも当然。もちろん私との食事時間も合わないので、これまで無理に合わせるのはやめていたのですが、母の「ごはんよ」が「食べる?」ではなく「さあ、食べるわよ」といった強制力を含んでおり、「え?今?」などと言うと「せっかく用意したのに」と思いきり恨みがましいので、できるだけ一緒に食べるようにしています。《体内時計》は哺乳類にも昆虫にも植物にも、地球に住むすべての生物に備わっているそう。母のこわれた体内時計が私の体内時計も道連れに、すべての生きとし生けるものの基本パターンから外れていっていると思うと、なんだかあきらめの境地に至るのです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。