後悔しないお墓選び5つのポイント「夫の実家の墓に入りたくない」ほかお墓の悩みをプロが解決
「夫が次男でお墓がない」「おひとりさまのお墓はどうする?」「夫の実家の墓に入りたくない!」など、お墓にまつわる悩みは多い。そこで、新たにお墓の購入を検討している記者(60才)が、後悔しないお墓選びのポイントやお墓にまつわる素朴な疑問を、葬儀相談員の市川愛さんに教えてもらった。
「お墓選び」で注意すべき5つのポイント
「お墓がない」記者は、どんなお墓を検討するべきなのだろうか。市川さんに早速話を伺った。
「実家の墓の継承者が認めた場合は、もとの家のお墓に入ることもできますが、長男や家の代々のお墓を継承する人以外は、新たな家のお墓を持つのが一般的です。
お子様がいないなど墓地継承者がいない方は、新たに永代供養する方法もあります」(市川さん、以下同)
まずは、「お墓選び」で失敗しないためのポイントを教えてもらった。
1.お墓の立地が2時間以上かかる
「例えば、50代なら楽に行けるところでも、70代になったらどうでしょうか。片道2時間を超えるようなところでは、そう簡単にはお参りに行けません。せめて1時間半以内で行けるところがよいでしょう」
2. 宗教・宗派が異なる
「公営霊園ならば問題はありませんが、気に入った霊園・墓地があっても、宗教や宗派が違うと受け入れない霊園があります。また、寺院墓地は、一般的に檀家になることが基本なので、その寺院の宗教の信徒であることが必要です」
3.霊園や墓地の設備がいまいち
「霊園・墓地の設備としては、駐車場、水道施設は最低限備わっているか。その他に法要施設、送迎バス、休憩所、生花・線香を売る売店などがあれば、さらに充実しているといえるでしょう。バリアフリーになっているかどうかも、これからの墓地選びには必要です」
4.日当たりや水はけが悪い
「日当たりがよく、風通し、水はけのよいところがベストです。特に水はけは、納骨スペースが地下にあるお墓の場合、遺骨が清浄な状態に保たれるかどうかに関わりますので、雨の翌日に行ってみるなど、十分チェックしたいものです」
5.掃除や芝の手入れが行き届いていない
「墓地の運営や管理体制も重要です。ポイントとしては、墓地の掃除は行き届いているか、墓参道具の整理整頓はされているか、植え込みや芝の手入れ、係員の対応など、細かいところをチェックしておきましょう」
このほか、お墓は事前に予算を考えておくことも大切だ。
「お墓の購入費は、墓石代、永代使用料、年間管理料が必要です。その総額を把握したうえで、予算を考えましょう」
お墓にまつわる素朴な疑問
Q.最近よく「永代供養墓」のCMやチラシを見るが、選ぶときに注意することはある?
墓地を継ぐ人がいないなどの理由から、一代限りの「永代供養墓」を選ぶというケースも増えているという。永代供養墓を選ぶ際にチェックすべきポイントは以下の通り。
□納骨の方法
「納骨が他の方のお骨と一緒なのか、個別なのかは、永代供養墓選びで最も重要なポイントです。個人が判別できる状態で手を合わせてもらいたいときは、納骨堂や霊廟タイプを選びましょう。他の方と一緒でもいい場合は『合祀』タイプとなります」
□供養の方法
「『宗教・宗派自由』となっていても、納骨施設を持っているのがお寺の場合は、そのお寺の宗派で供養されることが多いため確認が必要です。あなたが他の宗教や宗派の場合は、供養の方法までもが自由なのかを必ず確認しましょう」
□供養の期間
「何年で忌上げ(供養終了)となるか。一般的には33回忌で忌上げとなることが多いのですが、施設によっては、10年で合祀されるということもありますので、『何年間個別に供養してもらえるか』を確認しましょう」
□施設の利便性
「比較的、交通の便がよい傾向にある永代供養墓ですが、自分の家からの便だけではなく、これからお参りしてくれる方からも行きやすいということも大切なポイントです。その他、施設の清潔感や、設備の充実度も満足いくものかどうかも確認しましょう」
□価格
「永代供養墓に入る費用は、その立地や規模、納骨タイプなどによって大きく違います。納骨から永代供養までの総額がいくらなのか、費用の発生は最初だけなのか、以後も管理費が必要なのかを確認しましょう」
Q.「おひとりさま」のお墓はどうすれば?
市川さんによると、人それぞれ家庭状況が違うのであくまでも一般論となるが、家族構成によってもふさわしい墓が違ってくるという。
おひとりさまを含め、家族構成別に一般的なお墓を教えてもらった。
・独身で実家の墓に入りたい場合
→新たな準備はいらないが、墓継承者に許諾が必要。
・独身で自分だけの墓が欲しい(継承者がいない場合)
→「永代供養墓」が一般的。
「少子化や未婚率の増加、子どもが女性ばかりで嫁いで実家のお墓の継ぐ人がいないなどさまざまな理由で、お墓の承継を望めない、また望まないケースが出てきました。その要望に合わせた納骨スタイルとして、継承者を必要としないお墓『永代供養墓』が生まれました。
おひとりさまの場合、代々継いでいくという前提の一般墓は適さないので、永代供養墓をお考えになるのが一般的です」
永代供養墓は1993年に神奈川県で公営霊園に合葬式の永代供養墓ができたのが日本で最初と言われ、徐々に全国に広がってきたという。価格は種類や施設、納骨方法によって違い10万円弱~400万円までと幅広いが、平均相場は30~50万円ほどとのことで、一般墓より価格は抑えられている。
・代々の墓ではなく新たに購入する(子などの継承者がいる場合)
→「一般墓」が一般的。
「お子さんが継いでいくという前提であれば、新たな家の墓を持つということで一般墓を持つことが一般的です。維持に関しては、墓地ごとに定められた管理費が発生したり、寺院墓地の場合は供養をお願いしたりする寺院との付き合いが始まります」
・夫婦のみ(子などの継承者がいない場合)
→「永代供養墓」が一般的。
「一代限りの永代供養墓として、納骨堂や合同墓を選ぶことが一般的です。施設によりますが、多くの場合、購入時にすべての費用を支払いますので、維持費は特に必要ありません」
Q.ペットと一緒にお墓に入れる?
「ペットと一緒に入ることに関しては、法的な問題もありませんし、一部の墓地ではすでに対応されています。
しかし、仏教的な考え方ではペットを人間のお墓に埋葬するのはタブーとされており、一般的ではありません。その墓地の規約で『ペットの納骨可能』とされている場合のみ、納骨できます」
Q.夫とは別のお墓に入りたい!
「理由はさまざまですが夫と別のお墓を希望される方は増えていると言われています。
ただし、もちろん自分のことは自分で埋葬することができないため、夫の家のお墓に入りたくないという場合は、生前に家族に理解してもらったうえで、ご自身で埋葬先を用意する必要がありますね。さらに、死後確実に埋葬してもらうように、どなたかにお願いしておくことも必要です」
墓の問題は、遺言書に記しても法的な効力を発揮しないという。
「遺言書に『夫と一緒の墓に入りたくない」『夫の実家の墓に入りたくない』と記しても、遺族が実行する義務はありません。祭祀(さいし)承継者(お墓や祭壇などの祭祀に関わる財産を引き継ぐ人)を決め、意志を伝えておくという手順になります。どうしても法的な効力を持たせたい場合は、『死後事務委任契約』が必要です」
お墓選びで失敗しないために大切なこと
「最近では自然葬といって、海への散骨(海洋葬)や樹木葬なども注目されています。しかし、人気だからという理由で選ぶのはおすすめしません。すべて散骨してしまい、拠り所を失ってしまったという後悔談もあります。
イメージ先行で決めてしまうのではなく、デメリットもよく考え、家族ともよく相談して決めることが大切でしょう」
どのような埋葬方法を選ぶ場合も、必ず現場を見ること、複数の施設を見学して比較検討すること、見積もりは必ず取ること。この3つは必ず気をつけていただきたいですね」
教えてくれた人
葬儀相談員・市川愛さん
市川愛事務所代表。 2004年に日本初の葬儀相談員として起業。母の葬儀を出した経験から2009年に終活を考案し、『週刊朝日』の連載特集にて提唱を始める。以後、講演活動、葬儀記事や書籍の執筆、番組出演などを通して、正しい葬儀情報と終活を広めるための活動に従事する。http://www.re-lief.com/ 著書『終活のすすめ』(太陽出版)、『現代葬がわかる本』(PHP研究所直販)など10冊を手がける。
取材・文/本上夕貴
●代々のお墓がないR60の記者がとことん取材「そもそも必要?選びのポイント・費用は?」