おすぎの「老老介護」の成年後見人がピーコじゃなかった理由
女性セブンが5月26日号が報じたおすぎとピーコ(77才)の老老介護問題。
認知症の初期段階のような兆候があったおすぎとピーコ
昨年秋、体調が芳しくないおすぎをピーコが迎え入れる形で2人は同居を始めた。「2010年からおすぎさんは福岡県を拠点に活動していたのですが、昨年の夏頃から番組の収録中に集中力が散漫になることが増えました。物覚えも悪くなり、認知症の初期段階のような兆候があったんです。そこで兄であるピーコさんと話し合い、横浜の自宅で一緒に暮らすことになったのです」(2人の知人)
約50年ぶりの同居生活。だが長くは続かなかった。実はこのとき、ピーコも同じ症状を抱えていたのだ。ピーコは記憶力の低下に加え、感情の起伏も激しくなった。兄弟げんかが増え、時にピーコが「出て行け!」とおすぎを家から追い出すことも。行くあてもなく街を徘徊するおすぎが、警察に保護される事態が続いたという。
「成年後見人」が決まったおすぎ
今年2月、2人の関係を見かねたおすぎの関係者が、彼を高齢者施設に入所させたことで兄弟の衝突は解消した。
「おすぎさん(77才)の“成年後見人”が決まったので、これから財産の管理をしてもらう予定です。一時はどうなることかと思ったけど、少しほっとしました」(2人の知人)
おすぎは施設の職員のサポートを受けて生活し、専門家のもと“終活”も開始。それが、“成年後見人”による財産整理だ。
成年後見人とは、どんな役割か
岡野法律事務所九段下オフィスの伊倉秀知弁護士が解説する。
「認知症の進行などにより、自分で財産の管理ができない人のために、成年後見人制度というものがあります。成年後見人は本人に代わって預貯金や不動産などの財産を管理します。本人の財産を調査して複数の預金口座を1つにまとめたり、保有する株式や生命保険などの整理や処分を行うのも成年後見人の役割です」
成年後見人を立てる場合、まずは親族や関係者が家庭裁判所への申し立てを行う。その後、裁判所が成年後見人を選定する。
「親族が成年後見人になることも法律上は可能ですが、弁護士や司法書士などの専門職の人が選任されることが多いです。親族が後見人になると、“いずれ自分が相続するお金だから”と使いこむケースがあるからです。目安として、財産が1000万円を超えると親族が選ばれることはまずありません」(前出・伊倉さん)
成年後見人の決定後は、親族であっても財産に手を出すことはできなくなる。
→成年後見制度の手続き|認知症になってからでは手遅れ!ボケる前にやるべきこと
すでに親族が他界し、おすぎにとってたったひとりの肉親となったピーコも然り。そのピーコは、症状が進行しているという。
「おすぎさんが施設に入って以降、ピーコさんはかつての友人らに、“おすぎは今年の2月に亡くなった”と連絡を入れるようになったんです。それも、冗談で言っているようには聞こえないんです。
行政の人が自宅を訪れて、“施設に入りませんか?”と促しても、難色を示しています。自分の意思がはっきりしている時間もあるようなので、なかなか受け入れられないのでしょう」(前出・2人の知人)
ピーコがいま暮らしているのは、おすぎが姉(故人)から相続したマンションだ。ピーコが住み続けることで、この先、不都合が生じる可能性もある。
「成年後見人を立てて財産を整理する人のなかには、不動産を売却してそのお金を施設の入居費用に充てる人も珍しくはありません。おすぎさんがどうかはわかりませんが、そうした考えがあったとしても、ピーコさんが住んでいれば売却はできないでしょう」(高齢者施設関係者)
→家族の財産を守るなら「成年後見人」より「家族信託」を選ぶべき理由【FP解説】
ひとりで暮らすピーコを心配し、今後はおすぎの成年後見人もピーコの様子を見に自宅を訪れるという。
老後問題は一筋縄ではいかないようだ。
※女性セブン2022年7月7・14日号