「終活していません!」黒柳徹子、浅丘ルリ子、松原智恵子が語る“逆説の幸福論”
「立つ鳥跡を濁さず」。そんな言葉を胸にせっせと「終活ノート」を書き、荷物を整理し、物を増やさぬように節制している人も多いだろう。しかし、「死ぬために生きる」ことがあなたを息苦しくさせてはいないだろうか。「終活をしていない」と公言する芸能人も多くいる。“終活しない幸福”のメリットとはいったい何だろうか。
『徹子の部屋』で語った終活
「終活とかいうのは、別にやっていらっしゃらない?」
黒柳徹子(88才)の問いかけに、松原智恵子(77才)は「身辺整理みたいなこと?してないですね」と穏やかながらはっきりと答え、隣に座る浅丘ルリ子(81才)も「なんにもしてない」ときっぱり。
2人の回答を聞いた黒柳は、「私もしてない!みんなしてないんだぁ」と満面の笑みを浮かべる。
これは1月6日に放送された『徹子の部屋』(テレビ朝日系)での一幕だ。生前整理やエンディングノートをはじめとした終活が“たしなみ”として一大ムーブメントを巻き起こして久しい。しかし、黒柳や浅丘のように現役で活躍するシニアのなかには「やらない」と明言する人もいる。彼女たちの言い分から伝わってくる「逆説の幸福論」に耳を傾けたい。
「おひとりさま」でも終活の必要はない
黒柳は以前から終活をしないと公言している。2016年にも、『文藝春秋』誌上で「世の中は『終活』ブームのようですね」と世相をふまえつつ、「人間、最期なんてなんともいえないじゃないですか」「そういう準備は私にはできそうもない」と持論を展開。生前整理として物を減らすことも考えておらず、中国で3つ子のパンダが生まれたと聞くやいなや現地に飛び、お母さんパンダに3つ子がのっている巨大なぬいぐるみを買ってきて、「案の定、家で持て余している」というエピソードも明かしていた。
黒柳と同年代で精力的に執筆活動を続ける宗教家・ひろさちやさん(85才)も終活ブームに懐疑的だ。
「自分が死んだ後のことを“こうしてほしい”“ああしてほしい”ととやかく言うのは、本人のエゴでしかありません。やりたい人の気持ちを否定するわけではありませんが、死後のことは遺族に任せて、これから生きていく人がやりたいようにやればいい。昨今のムーブメントを見ていると、“死んだやつがうるさいことを言うな”と言いたくなってしまう(苦笑)」
家族を持たない「おひとりさま」で死後を任せる人がいない場合でも、終活の必要はないとひろさんは続ける。
「私もいまは同居している家族がいますが、もし今後ひとり残されて寝たきり老人になったとしても、そのまま何もせずにぼんやりと死んでいきたいと思っています。ひとり暮らしの人から『何も準備しなければ遺体はどうなるのでしょうか?』と相談されることもありますが、それは行政の仕事。ちゃんと税金を払ってきたのだから、胸を張って任せておけばいい。仏教の世界でも、お釈迦様は『死んだ後のことは仏様が面倒を見てくれるのだから、生きている間にどんな行いをするのかが大切だ』と説いています」
終活が引き起こす問題
意味がないばかりか、心身に悪影響があると断じるのは、精神科医の和田秀樹さんだ。
「生前整理のために思い出の詰まった品を捨てたり、葬式で恥をかかないために準備したりと、終活の内容のほとんどは自分のためというよりも死後、周囲から後ろ指をさされないためにする、後ろ向きなものがほとんどです。エンディングノートを書いているうちに、まるで人生の店じまいをしているような気持ちになって、精神的に落ち込むという人もおり、必ずしもポジティブな活動とは思えません。死ぬ間際のことばかり意識して買い物や食事などいまある楽しみを制限したり、孤独死を恐れるあまり親しくもない人たちとつきあったりしても、効果が得られるかどうかは最後までわからないし、ストレスがたまってかえって体に悪い。それよりもいまの生活をどう充実させるかに目を向ける方が、ずっと健康的でいられるでしょう」(和田さん)
残された家族のために取った行動がかえってあだとなるケースもある。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが言う。
「特にトラブルが起こりやすいのは断捨離で、遺族たちが取っておいてほしかったものまで捨ててしまい、もめるケースは少なくありません。資産価値のあるものや、アルバムや日記など残された家族にとって大切だと推測されるようなものは、周囲に確認してから手をつけるべきだと感じます」
写真/本誌写真部
※女性セブン2022年3月31日号
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