なんとなく気分が重い”メンタル不調”4つのチェック「心の水位、下がっていませんか?」
日々の寒暖差や気圧の変動などで体調を崩しやすい季節。環境の変化などで心身にストレスがかかり、不安を感じてメンタル不調を感じることはないだろうか?「なんとな~く気分が重い…」と感じたときの対処法を専門医に聞きました。
心の不調は、体の疲れの後に表れる
メンタル不調は、うつや抑うつ状態などともいわれるが、精神的なストレスや肉体的なストレスで、脳がうまく働かなくなっている状態のこと。セロトニンなどの神経伝達物質が枯渇し、心の水位が下がってしまった状態だ。
精神科医の尾林誉史さんは、そんな心の状態を次のように説明する。
「多くの場合は、心の不調を感じる前に、体が悲鳴を上げてきます。人によって体が出す疲れの訴えはさまざまで、頭痛や耳鳴りなどの症状がだんだんひどくなったりします。
私の場合は、疲れてくると左目のまぶたがピクピクとけいれんしたり、指先に水泡ができたりします。口内炎ができる、膀胱炎になるという人もいます。そうした体の訴えに目をつぶって頑張り続けると、限界を超えてしまったときに心の水位が下がっていき、症状がじわじわと出てくるのです」(尾林さん・以下同)
メンタル不調チェックリストで心のサインを知ろう
メンタル不調かどうかは、次の4項目の症状がどれくらい続いているかで自分自身でチェックすることができる。
《やり方》
【1】~【4】の項目ごとに、当てはまる状態がないかどうかをチェックしてみよう。症状があれば四角の中に〇、2週間以上続けば●を、1か月以上続けば×をつけよう。
【1】なんだかうつうつとしている
□ なんとなく気分が晴れない感じがする
□ 家にいても、なんとなくくつろぐことができない
□ ささいなことにイライラしたり、腹を立てやすい
【2】最近、好きなことに取り組めていない
□ 時間を忘れて熱中していたもの(趣味など)に対して、やる気になれない
□ ドラマや動画、雑誌や本などに、すぐに飽きてしまう(疲れてしまう)
□ 遊ぶ予定を立てる気分になれず、休日は家でぐったりとしている
【3】三大欲求(睡眠・食・性)が弱くなっている
□ 寝付きが悪い、もしくは途中で何度も目覚めたり、やたらと早く起きてしまう
□ 明らかに食欲が落ちている、もしくは体重が減ってしまった
□ 以前よりも性欲が落ちている
【4】おっくう感があって、やる気が起きない
□ お風呂やトイレに行くこと、または歯磨きや化粧をすることも面倒だと感じる
□ 人と接することが、なんとなく煩わしい
□ 電話に出たり、メールやLINEへの返事も後回しにしたいと思う
《解説》
これらの症状はストレスなどから心の水位が下がり始めたときによく見られる症状。○があっても一時的なものなら、休息をとることや、ストレスを発散することで回復することができる。
■【1】と【2】の両方、もしくはどちらかに×が1つでもついた場合は、メンタル不調の抑うつ状態に陥っている可能性があるので、医師に相談を。
■【1】~【4】において、4項目すべてに〇がある場合は、メンタル不調、抑うつ状態に陥っている可能性があるので、医師に相談を。
■3項目に〇がある場合は、医療機関を含め、頼れる誰かに自分の状態を相談してみるとよい。
■2項目に〇がある場合は、これ以上症状が出てこないか、慎重に経過を見ていこう。
■1項目に〇がある場合は、その症状が出る原因は何かないかどうか、考えてみるとよい。
■どれも当てはまらない場合は、精神医学的には心が健康な状態といえる。ストレス解消を心がけよう。
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「1つめの“なんだかうつうつとしている”は、いつもの自分と比べて“気分が晴れない”“暗い”などの症状がないか、振り返ってみることです」
2つめの“最近、好きなことに取り組めていない”は、興味や関心を持っていることに楽しんで取り組めているかどうかで心の状態を判断する方法だ。
「少し前までは好きなアーティストの動画を長時間楽しんでいたのに、見る気にならない。それより、横になっていたいと考えるようになった場合は、心が相当疲れているサインです。
3つめの“三大欲求(睡眠・食・性)が弱くなっている”は、たとえばよく眠れたと感じられても、食欲が以前と比べて落ちていないかがポイントです。心の水位が下がると食事をおいしく感じられなくなることもあるのです」
4つめの“おっくう感があって、やる気が起きない”は、何をするにも体がだるかったり、倦怠感がないかどうかだ。「何か食べようと思っても、お弁当を電子レンジで温めるのが面倒で食べられないというかたがいました。これは、食欲がないのではなく、おっくう感が強いということです」
以上の4つの状態が2週間以上続く場合は、放置せずに医師に相談するのが得策だ。
「『今日は雨だから面倒だ』というように、一時的なものなら病的なメンタル不調ではありません。ただ、心の水位が下がり始めている可能性があるので、原因を考えて症状が進むかどうかを見ていく必要はあります」
前出の調査では、「こころの不調対策として、この春に行いたいこと」という問いに対して、「睡眠」「おいしいものを食べる」などが上位になっている(下グラフ参照)が、尾林さんも、「心の水位を回復するには、しっかりと休息をとり、楽しいと思うこと、癒されることを行ってストレスを取り除くのが近道です」と言う。
■こころの不調対策として、この春に行いたいこと
心の水位を下げないために、これらは日頃から意識して行う必要がある。
教えてくれた人
精神科医・産業医 尾林誉史(おばやしたかふみ)さん/『VISION PARTNERメンタルクリニック四谷』院長。東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。著書に『元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術』(あさ出版)など。
取材・文/山下和恵 イラスト/オカダナオコ
※女性セブン2022年5月5日号
https://josei7.com/