日本料理の名店・乃木坂しんに教わる”せりのおひたし”作り方|おいしい山菜の選び方
独特の風味を味わう山菜料理は、日本ならではの食文化。なんと今回は、家庭で簡単に作れるのに山菜の個性が際立つ絶品レシピを、開業してからわずか半年でミュシュランのひとつ星を獲得した 「乃木坂 しん」さんに特別に考案してもらいました!
最小限の加熱で山菜の香りと色を守る
店で春最初に使う山菜のひとつが、冬の間は雪に覆われる新潟・妙高高原でたくましく育ったせり。定番の“おひたし”には、根も欠かさず使う。
「根から地中の栄養を吸収するので、栄養豊富で香り高い。ぜひ丸ごと使ってください。あくと共に風味や色も抜けるので、ゆで過ぎは禁物。たらの芽やこごみなどは、あく抜きをせずに使えます。ゆでたえびと合わせ、薄口しょうゆやすだちで味を調えれば、おかずにもなりますよ」(乃木坂しん・石田伸二さん)
乃木坂しんの料理人が考案「せりのおひたし」
雪に見立てた山いもの下から力強い香りが弾ける
<材料>
せり…4本
粗く刻んだ山いも…大さじ4
[A]
だし汁…1カップ
薄口しょうゆ…小さじ2
塩…小さじ1/3
<作り方>
【1】鍋に湯を沸かし、塩適量(分量外)とせりを加えてゆでる(a)。
【2】せりを氷水にとり(b)、水気をしっかり絞る。
【3】容器に[A]と【2】を入れ、浸ける(c)。
【4】【3】を切って器に盛り、山いも(d)をかける。
★POINT★
(a) しっかり洗ったせりは鍋に立てて入れ、根だけ先に30秒ほどゆで、茎と葉はさっとゆでる。
(b) ゆでたせりは氷水に浸け、粗熱をとる。すぐ冷やすことで、鮮やかな色をキープ。
(c) ゆでたせりは、だしに半日~1日浸ける。長く浸けすぎると色があせ、味も濃くなってしまう。
(d) 山いもは粗みじんに切ってから包丁の刃で叩くと、粘りと食感が楽しめる。塩ひとつまみ(分量外)を加えて味を調える。
■乃木坂しん 石田伸二さん
住所:東京都港区赤坂8-11-19 エクレール乃木坂102
徳島の料亭に始まり、銀座やパリの星付き日本料理店で技を磨く。2016年、東京・乃木坂に日本料理店を開業し、半年でひとつ星を獲得。
プロご用達青果店に聞く おいしい山菜の選び方
春の苦みはデトックス効果も
「冬眠していた動物が、目覚めるためにまず食べるのが山菜。人間が食べると、冬に溜まった老廃物をデトックスできます。市場に出回る山菜の多くは栽培もの。独特の風味は弱めですが、あくが少ない分、あく抜きが簡単というメリットも。鮮度が命なので、買ったら2~3日で調理を。冷凍保存は香りや食感が悪くなるのでおすすめしません」(築地米金代表・野菜ソムリエ 梶山利治さん)
山菜の種類
【1】せり
春の七草のひとつで、爽やかな香りが特徴。天然ものでも年末から5月頃まで、長く店頭に並ぶ。
【2】行者にんにく
にらに似た強い香りがあるが、生食もできる。傷みやすいので、水洗いしてぬめりを落としてから使う。
【3】わらび
茎の先端が丸まってきたら食べ頃。味のくせは少ないが、採ってすぐに食べるとき以外はあく抜きが必要。
【4】たらの芽
たらの木という低木の先端に芽吹く芽。脂分やたんぱく質が豊富で旨みも強く、“山菜の王様”といわれる。
【5】うど
10~30cmに育って葉が開き始めたものを食べる。栽培ものは下部分が白い。天然ものは青く、えぐみも強い。
【6】菜の花
1~3月頃までが旬。黄色い花も食べられるが、通常は柔らかいつぼみのうちに食べる。おひたしに欠かせない。
【7】ふきのとう
つぼみを食べる。ふきみそや天ぷらが定番で、葉柄が伸びたものがふき。
【8】うるい
大葉ぎぼうしの若芽。茎の部分は生で食べるにはやや硬く、独特の苦味とぬめりがある。
■選び方のポイント4
<1>共通の鮮度の見極めポイントは、切り口が白いこと。鮮度が落ちると黒ずんでくる。
<2>ふきのとうはつぼみの状態が風味も香りもベスト。花が開くと青くささが際立つ。
<3> わらびのように巻いているものは、巻きがしっかりしているものが新鮮。
<4>新鮮な山菜はピンと立ち、葉など緑の部分が色鮮やか。
■梶山利治さん 築地米金 代表・野菜ソムリエ
住所:東京都中央区築地6-26-1 築地魚河岸 小田原橋棟
撮影/市瀬真以、玉井幹郎 取材・文/西谷友里加
※女性セブン2022年4月7・14日号
https://josei7.com/
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