悪酔いを防ぐ飲み方「お酒を飲むと喉が渇くのはなぜ?」酒にまつわる疑問を医師が解説
「お酒を飲むと喉が渇くのはなぜ?」「酒は“百薬の長”というのは本当なの?」と、アルコールにまつわる疑問を医師が解決します。その理由を知れば、お酒との上手な付き合い方が見つかるはず。お酒に吞まれることなく、より楽しいリラックスタイムになりますよ!
Q.お酒を飲んでいると喉が渇くのはなぜ?
A.アルコール代謝や利尿作用により脱水状態になるから
飲酒時は、酒を飲んでいるため水分摂取量が足りている気になるが、実は体は脱水状態に陥っている。
「たとえばワインを100ml飲んだとしたら、体は200mlくらいの水分を失っています。アルコール代謝のために、飲んだお酒の量以上の水を肝臓が必要とするからです」(秋津医院院長・秋津壽男さん)
脱水を招くのはそれだけではない。
「アルコールには利尿作用があるので、水分を尿で排出してしまいます。さらにおでんなどの練り物や刺身につけるしょうゆなど塩分過多のつまみや料理が多いと、体内の水がさらに奪われてしまいます」(アッヴィ合同会社・浅部伸一さん)
ワインやウイスキーにはチェイサー、日本酒には和らぎ水と呼ばれる存在がある。酒の合間にこれらを摂取すると、飲むペースが緩やかになるうえ、血中のアルコール濃度が薄まる。さらに、肝臓がアルコールを分解するときに必要とする水分を補ってくれるため、体の負担が軽減され、脱水を防げるのだ。また、料理の味も楽しめ、悪酔いを防げるというメリットもある。
ビールやチューハイを飲むときも、途中で水やウーロン茶などノンアルコール飲料を挟むといい。
「私は惰性でお酒を頼まないように気をつけています。なんとなくグラスが空いたからとオーダーするのは体への負担が大きいので、お酒を飲みたくなければウーロン茶などを頼みます。酒飲みが1杯目にノンアルコールを頼むのはなんとなく気が引けますが、飲んでいる最中であれば、誰も気づきません」(浅部さん)
途中、トイレに立ったときは、尿の色をチェックしてほしいと秋津さんは言う。
「通常の尿は無色か淡い黄色です。飲み会の最中に色が濃くなってきたら脱水のサイン。水やソフトドリンクで小休止が必要です」(秋津さん)
帰宅後は二日酔い予防としても水分補給が重要だ。
「体にやさしい常温の水がおすすめです。脱水状態に陥っていると尿が出ませんが、水分が足りてきたらトイレに行きたくなるはずです」(浅部さん)
渇きが著しい場合は吸収の速いスポーツドリンクを飲むといいが、糖分を多く含む点が懸念される。そこで “飲む点滴”といえる経口補水液を用意しておくのもおすすめだ。
Q.酒は「百薬の長」というけれど、それって本当?
A.注意すべき点は数あれど、酒は有益でもある!
「酒は百薬の長」といわれるが具体的なメリットは何だろうか。「適量を守ること」を前提として秋津さんが言う。
「社会的&医学的な利点があります。前者は昔からいわれる“飲みニケーション”。コミュニケーションツールとして人々の親睦を深め、心理的なハードルを下げる。後者は血流の改善や食欲増進、滋養強壮、消化促進作用といった効用があります。食欲不振の患者さんには食前に1回15mlずつ、というルールのもとワインを処方するケースもあります」
また、本格焼酎や泡盛には血栓を溶解し、血液をサラサラにする成分が含まれている。その効果を検証した倉敷芸術科学大学の名誉教授・須見洋行さんが語る。
「本格焼酎(いも焼酎)と泡盛は、血栓溶解を促すt-PAやウロキナーゼという酵素の放出を促進し、血小板の凝固を阻害すると実験により判明しました。それらの酵素の分泌を促すのに最適な量は1日に120ml程度(純アルコール量は約30g)。ほろ酔いになるくらいです」
須見さんはソーダ割りや水割りで毎日焼酎や泡盛を飲んでいるそう。焼酎や泡盛はお湯で割るとふわっと香りが広がるが、実は嗅ぐだけでも、その恩恵にあずかれるという。
「本格焼酎や泡盛の香りにも血栓症の予防効果が期待できます。いも焼酎にはバラの香りの主成分の1つや、りんごに似た香りなど、さまざまなにおい成分が含まれています。さらに心地よいと感じる香りによってストレスが低減し、血液の流れも改善されるのです」(須見さん)
教えてくれた人
秋津医院院長 秋津壽男さん
アッヴィ合同会社(自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科元准教授)浅部伸一さん
倉敷芸術科学大学名誉教授 須見洋行さん
取材・文/藤岡加奈子 イラスト/ナガイクミコ
※女性セブン2022年2月3日号
https://josei7.com/
●酒の適量は「ビール中瓶1本、チューハイ350ml缶1本。少ないと嘆かず週の総量で調整を」【医師監修】