自宅での看取り希望の高齢者は6割!親子とも納得の最期を迎えるために必要なこと
終活を考える中で、人生の最期をどこで迎えるかというのは、死を目前にした本人にとっても、看取る家族にとっても重要な選択になる。「終末期は自宅で」と考える高齢者は約6割にものぼる。
だからこそ、親を看取った経験者が教える「自宅で親を看取りたいあなたに知ってもらいたいこと」とは。そのときのこと、看取るために必要なことについて聞いた。
親も子も「最期は自宅で」と考えている
人生の最期を迎える場所は、時代によって大きく変わる。厚生労働省が発表している「人口動態統計」によると、1951年には自宅で8割以上の人が亡くなっていたが、1976年になると、医療機関で死亡する人が上回り、その後、年々増加。現在では8割近くが病院で亡くなっている。
こうした変化は、最後まで命を救おうと手を尽くす現代の医療システムによるものが大きい、と考えられる。だが、その現実とは裏腹に、最期を迎える場所として、住み慣れた「自宅」を理想とする人が多いという調査結果がいくつも報告されている。
日本財団が2020年に実施した「人生の最期の迎え方に関する全国調査」では、看取られることを想定して回答した親世代(67~81才の男女558人)は、死期が迫っているとわかったとき、人生の最期を迎えたい場所を、「自宅」と答えた人が58.8%、「医療施設」と答えた人が33.9%だった。
また、親を看取ることを想定した子供世代(35~59才で、親あるいは義親の1人以上が67才以上で存命の男女)に、親の死期が迫っているとわかったときに、「人生の最期をどこで迎えさせてあげたいか」を聞いたところ、58.1%が「親自身の家」、24.5%が「医療施設」と回答。親も子も、「最期は自宅で」と考えていることがわかった。
Q.死期が迫っているとわかったとき、人生の最期をどこで迎えたいですか?
日本財団が行った調査(※2)では以下の回答だ。
・医療施設 33.9%
・介護施設 4.1%
・自宅 58.8%
・子の家 0.1%
・その他 3.1%
※1 医療施設とは、病院・診療所。介護施設は、有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などのこと。
※2 日本財団が2020年11月27~30日に行った「人生の最期の迎え方に関する全国調査」。調査対象は<看取られ層=親世代>の67~81才の男女558名。
コロナ禍で増える終末期の在宅療養
自宅での最期を選ぶ理由は、「安心できる場所」「最期まで自分らしく過ごせる」といった回答が多かったが、このコロナ禍において、医療施設や介護施設で最期を迎える場合、「家族に囲まれていたい」という望みを叶えることが難しいため、「自宅」を選択するケースがいま、一層増えているという。
3月に89才の母親を看取った三枝洋子さん(63才)はこう振り返る。
「母が入所していた介護施設では、面会がほとんどできない状況が続いていました。終末期を宣告され、病院に入院して家族が面会できずに最期を迎えるより、たとえ一日でも自宅に戻ってもらいたいと思い、自宅での見送りを決めました。自宅では常に家族の誰かがそばにいる状態で5日間を過ごし、最期はひ孫を含めた家族8人で見送りました。あのまま施設にいたら、母はひとりで寂しく旅立ったかもしれないと思うと、自宅で看取ることを選択してよかった」
自宅の看取りは「慌てず、かかりつけ医に連絡すること」
自宅で看取るためには、ケアマネジャーと訪問診療を行う、かかりつけ医を決め、訪問看護師やさまざまなサービスを利用した24時間の在宅看護、介護と看取りの体制を整える必要がある。
昨年1月に母を自宅で見送り、現在は「終活協議会」の理事として終活のサポートを行っているタレント・リポーターの菊田あや子さん(61才)は、自宅で看取る場合、大切なのは「慌てずに、かかりつけ医に連絡すること」と言う。
「終末期で延命処置を希望していない場合に限ってですが、いよいよというときに救急車を呼べば、当然のように延命処置が施され、本人が希望しない形で入院することになり、自宅で看取れないかもしれません。自宅でどう過ごし、最期はどう迎えるか、かかりつけ医などとよく話し合っておくことが大切です」(菊田さん)
親と子がともに望む「自宅での看取り」。命に向き合いながら、双方が覚悟をし、納得の最期にするためには、あらかじめ知っておくべきことが実は多いのだ。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年7月15日号