猫が母になつきません 第274話「つかまる」
猫は勘が鋭い。嫌なことがありそうだとすぐに察知して逃げられてしまいます。目薬をさそうと思ったら目があっただけでささっと家具の下に隠れてしまった。うーん、まだ目薬出していないのになんでバレたんだろう…? 名前を呼んでも出てこないので、ダメ元で「おやつ食べよー」と言ってみると意外なくらいあっさり出てきました。「おやつ」という言葉をちゃんと覚えているんだなと感心したけれど、その賢さとはうらはらにすぐに出てきてつかまってしまうおマヌケなところがかわいい。猫が覚える人間の言葉は「ごはん」とか「おやつ」とか自分の有益になる言葉だけだそうです。でも猫のことだから、他の言葉を覚えていても自分に関係なかったら無視しているだけかもしれません。目薬をさしたあと、すぐにおやつをあげて嫌なことを忘れさせます。認知症の中でも被害妄想の症状が強く出ている母が妄想からくる不満をとめどなく言い始めたときにもこの手は使えます。先日も朝から大荒れで「みんなして私の悪口を言っている」と興奮気味に訴える母。なにか食べさせた方がよかろうと、ふわふわのフレンチトーストを焼いてメープルシロップをたらーり…食べ終わる頃には落ち着いて、怒っていたことも忘れていました。説得やお説教よりも美味しいもの。あー、今無性にお砂糖まみれのドーナツが食べたいです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。