兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第113回 遅まきながらのワクチン予約】
ライターのツガエマナミコさんが一緒に暮らす兄は若年性認知症を患っています。ツガエさんは、日々、兄の生活サポートを行っているので、ワクチン接種の予約もツガエさんの役割。世の中、まだまだ予約に苦労している人が多い中、兄が通うデイケアは、病院の併設施設なので、接種は施設で受けられるはずと思っていたツガエさんでしたが、かかりつけ医ではないとのことで接種は叶わぬことに。途方に暮れているのです…。
「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。
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ワクチンとうじ虫と
コロナウイルス感染予防のワクチン接種の予約がなかなか取れなくて参ってしまいました。「電話はつながらないけれどパソコンならすぐに取れるだろう」と高をくくっていたら、パソコンでも大苦戦!
先週、財前先生(仮)に「ワクチンを打っても問題ない」と確認してようやく始動したわたくしは、それまで予約サイトを閲覧したこともなく、手順とシステムを理解するだけで時間がかかりました。
「これがすぐに理解できないということは、わたくしも高齢者の仲間入りね」と深く頷くこと丸1日。ようやく仕組みを理解したものの、カレンダーはどこも「×」だらけ。15分毎に更新するというので、1日に何度も予約サイトを覗きにいきましたが、空きがあるところは、知らない町の知らない医院ばかり。大規模接種会場すらまったく空きがないのでございます。
友人が「親の予約が大変だった」と言っていた意味が、ここへ来て「なるほど」と思えました。
デイケアから「ワクチン接種についての状況を教えてください」と言われていたので、連絡帳に「まだ予約が取れません。頑張ります」と書きながら、内心「そちらの病院にワクチンあるんですよね?」と恨めしく思っていました。そう、内科医院併設のデイケアの恩恵をまったく受けられないことにモヤモヤしながら予約サイトにいっては「×」を食らい、諦めの早いわたくしはすっかりブンむくれておりました。
そのときです、1本の電話がございました。デイケア施設からです。
「ワクチンの予約が取れていないとのことですが、こちらの医院で最後の枠があるので、いかがですか?」とのこと! 「それ早く言ってよ~」と思いましたが、そこはありがたさを目いっぱい強調して「え?本当ですか?ぜひぜひ、お願いします!」と大感激しておきました。
「では、1回目は〇月〇日、その3週間後に2回目ということで、こちらで予約しておきますね」と確約が取れ、次のデイの日に必要書類を出すことになりました。遠回りはしましたが、内科医院併設デイを選んで本当によかった。少し高い利用料をお支払いしている甲斐もあるというものです。
次は、わたくしの番でございます。すでに12歳以上の国民の誰もが予約できるようになった今、そして自宅療養中の方が急変しても入院できずに亡くなる事例が聞こえてくる今となっては、ますます予約が取りにくいことでしょう。
わたくしは、若い人に先に接種してほしいと思うので、たまたま取れたらラッキーという心づもりで時間があるときに予約サイトを眺めようと思っております。
そろそろ深夜12時のシンデレラタイム。
最近、、この時間になるとやることが、「うじ虫退治」と称するベランダ排水溝への熱湯消毒でございます。兄が毎日何回となく小便小僧さまに変身してしまう例のベランダ排水溝は、日頃の塵や髪の毛などが溜まる場所でもございます。
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小僧さまを見かける度にオシッコ臭を取りたくてバケツで水をかけていたのですが、ある日、排水溝にくっついているねじ止めの鉄格子に割りばしを突っ込んでゴミを搔き出していたところ、ヘドロのようなどろの中に白い糸くずのようなうじ虫がいっぱいいたのでギョッとしました。水で流しても鉄格子が邪魔をして温床が流れないので、うじ虫さまには可哀そうですがやかんいっぱいの熱湯を掛けさせていただき撃退いたしました。
きっと兄のオシッコが彼らの栄養源になるのだと思ったわたくしは、それ以来、毎晩の熱湯消毒が日課になったというわけでございます。お湯をかけると立ち上る湯気とともにぷ~んと匂うのでうんざりではございますが、本日もやかんいっぱいの熱湯を準備中のツガエでございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性58才。両親と独身の兄妹が、7年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現62才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ