高齢者は注意!1時間以上の昼寝は認知症リスクが2倍に!?【睡眠専門医が解説】
1日を人の一生にたとえ、眠りは“小さな死”ともいわれる。だが、毎晩きちんと寝ているはずなのに、体が常に眠りを求めてしまうなら──それは、昨夜のあなたが“成仏”できていない証拠。放っておくと、本物の死が近づいてくるかもしれない。
高齢者は1時間以上昼寝してはいけない
眠気の裏に、うつ病や認知症が隠れていることもある。雨晴(あまはらし)クリニック副院長で睡眠専門医の坪田聡さんが言う。
「うつ病患者の9割は不眠になりますが、5~10%くらいの人は、眠気が強くなることがあります。また、甲状腺機能低下症の可能性も。体を活動的にする甲状腺ホルモンが減少する病気で、絶えず疲労感があって眠気が増し、認知症のような症状が出ることもある。むくみや体重増加を伴うこともあり、女性に多いのが特徴です」
心当たりがあれば、内科や内分泌科を受診して、血液検査で甲状腺ホルモン値を測定してもらおう。異常があれば甲状腺ホルモン薬が処方される。昔からある薬で比較的安全性が高く、症状の改善も早いという。
昼間に眠気を感じてついつい昼寝してしまうという人も多いだろう。しかし、昼寝の時間は30分程度にとどめたい。米スタンフォード大学医学部精神科教授で、睡眠・生体リズム研究所所長の西野精治さんが言う。
「日中に習慣的に30分程度の昼寝をする人は、昼寝をしない人に比べて認知症の発症リスクが6分の1になります。しかし、習慣的に1時間以上昼寝する人は、発症リスクが2倍になる。適度な昼寝は認知症予防に役立ちますが、長い昼寝は厳禁です」
■昼寝のしすぎに要注意!
50代以上の場合、夢遊病に似た「レム睡眠行動障害」で睡眠が妨げられることもある。
「夢を見ているときに、体が夢に合わせて動いてしまう病気です。例えば、けんかをしている夢を見て大声で怒鳴ったり、隣で寝ている家族を思いっきり殴ってしまうこともある。程度がひどいと眠りの質にも影響を与えますし、自分だけでなく家族にけがをさせる恐れがあり、かなり危険です」(西野さん・以下同)
レム睡眠行動障害は、パーキンソン病やアルツハイマー病、認知症と合併して出ることもある。
「アルツハイマー型認知症は、脳に『アミロイドβ』というゴミがたまることが一因だといわれています。アミロイドβを脳から効果的に排出するには、毎日の良質な睡眠が有効です。昼間に眠気を感じるほど睡眠不足なら、認知症になる確率が上がっているといえるでしょう」
肥満、がん、コロナ…も寝不足が原因に?
日中に急激な眠気に襲われて、人と話していても眠ってしまう場合は、「ナルコレプシー」という“睡眠発作”を起こしている可能性がある。
「ナルコレプシーは先天的な場合が多いですが、後天的に発症する場合は、リウマチや膠原病(こうげんびょう)などと同じ自己免疫疾患の一種。免疫機能が乱れて、自分の細胞を異物と誤認して攻撃することで、神経伝達物質のオレキシンが壊されることが原因です。オレキシンは脳の覚醒をコントロールしているので、不足すると眠気を制御できなくなる。生活習慣の乱れを直すと症状は軽減しますが、治療するには病院で処方された薬をのむほかありません」(坪田さん)
当然ながら、睡眠不足が続くと免疫力も下がる。がんの発症リスクが上がるほか、新型コロナウイルス感染症などにもかかりやすくなるという。
「細胞を修復する成長ホルモンなどは、多くが睡眠中に分泌されるため、睡眠が不充分だと全身の機能が低下する。また、アメリカの大規模な調査の結果、睡眠時間が短い人ほど肥満の傾向にあった。睡眠が足りていないと、あらゆる病気のリスクが上がるだけでなく、見た目の美しさも損なうのです」(西野さん)
春眠暁を覚えず。しかし、春の心地よさのせいにばかりしてはいけないようだ。
眠気に隠された気になる病気
※取材をもとに本誌作成
【認知症】
認知症の症状の1つに眠気がある。また、うまく眠れていないと、アルツハイマー型認知症の原因とされる「アミロイドβ」というゴミを脳から排出できず、発症リスクが上がる。
【レム睡眠行動障害】
レム睡眠中(眠りが浅い時間帯)に、見ている夢の内容の通りに体が動いてしまう。眠っているのに大声で怒鳴ったり、暴れたり、隣で寝ている人を殴ったりすることもある。認知症やパーキンソン病と併発している可能性も。
【ナルコレプシー】
先天的に覚醒を促すホルモンが少ない場合と、生活習慣の乱れなどで自己免疫系がダメージを受けている場合がある。薬でしか治療できないが、生活習慣を正せば症状はある程度は改善が見込める。
※女性セブン2021年4月22日号
https://josei7.com/
教えてくれた人
雨晴クリニック副院長 睡眠専門医・坪田聡さん、米スタンフォード大学医学部精神科教授 睡眠・生体リズム研究所所長・西野精治さん
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