暮らし

後半生、頼れる友達はいますか?おひとりさまの友達づき合い3つのルール

 2019年の日本人の平均寿命は女性87.45才、男性81.41才(厚労省まとめ)で、女性は男性より6年長生きしている。2040年には65才以上の女性の24.5%、つまり約4人に1人がひとり暮らしになるとの予測も(内閣府の「令和2年版高齢社会白書」より)。老後、いつかはひとりで生きていくことになる可能性が高い女性にとって、お互いに助け合える友達の存在は大きい。

 実際、夫に先立たれて、後半生を自分らしく生きている女性たちは、どのように友達と交流しているのだろうか。人生の先輩たちの声を聞いてみよう。

大人になってからの友達の醍醐味は「助け合う」こと…故山本文郎アナの妻、由美子さん

 元TBSアナウンサーの山本文郎さん(享年79)と2008年に結婚した山本由美子さん(55才)は、2014年に文郎さんが肺胞出血で逝去した後の生活について、夫の人脈に大いに助けられたと明かす。

「お互いに友人が多かったのですが、結婚によって倍に増えました。主人から紹介された友人には仕事面や生活面で助けられていて、古くからの私の友人は、いまも主人の命日にお花を贈ってくれて、精神的に支えられています」(由美子さん・以下同)

 若い頃の「友達」は、「一緒にいる時間を楽しめる」ことが重要だった。しかし、大人になってからの友達の醍醐味は、「助け合う」ことだと由美子さんは話す。

「女性は50才を過ぎたら、子供から手が離れたり、夫と死別したりして、自ら何かをすることが求められます。若いときのように、『楽しい』だけでは乗り越えられないこともある。 困ったときに頼れる友達がいるという安心感は、生きていく上ですごく大きい自信につながります」

 つい先日も、由美子さんの引っ越しを大勢の友人がサポートしてくれたという。何か新たなことをするときに、友人のネットワークがあり、助け合いの輪ができることは老後の理想形だ。40代で夫を亡くした由美子さんにとって、友達とは「人生の道標」になってくれる存在でもある。

夫に先立たれた友人のアドバイスが道標に

「ある仲のいい女友達は、俳優だったご主人が亡くなってから数年後に狭いところに引っ越して、大量の書類や遺品を手放してスッキリしたそうです。そのアドバイスに従って、私も引っ越したんです。たくさんあった夫の遺品を処分すると、それまで背負っていた肩の荷が下りました」

 大人になってからの友達のいいところは、皆それぞれに経験や知識を蓄え、血の通った意見を交換できるところだ。夫を亡くした経験から滲み出た友達のアドバイスは、由美子さんの進むべき道を照らす光となった。

「ものを手放しても生きていけると決断できたのも、友達がいるおかげです。家や遺品に執着していると、自分らしい生活が送れません」

 だからといって、大人になればなるほど、友達をつくることは難しくなる。職場やママ友といったコミュニティーを離れると、人と出会う機会はほぼ消滅してしまう。

福祉ジャーナリスト村田幸子さんが選んだ「友達近居」とは

 7人もの女友達が集って、ひとつのマンションでともに過ごしたケースもある。元NHK解説委員で福祉ジャーナリストの村田幸子さん(80才)は、福祉の現場を多数取材した経験から、ひとりで老後を暮らすことに不安を感じ、同じ考えの同世代の女性とともに「友達近居」をすることを夢見た。  

 2002年の構想開始から紆余曲折を経て、2007年に兵庫・尼崎市に建築中の新築マンションに、7人のメンバーがそれぞれの部屋を購入し、完成後に順次入居を始めた。

「ほかのメンバーは、ジャーナリストや介護関係、広告関係など職種も経験もバラバラ。事前に旅行や食事などで交流を深め、この人たちとなら一緒に暮らしてもいいという条件整備をしました。誰かがリーダーになると頼ってしまってうまくいかないから、全員対等な関係でした」(村田さん・以下同)

 入居後は個々に暮らしながら、月に一度、ゲストを交えてお茶をしながらさまざまなテーマを語り合うサロンを開いた。日常生活では合い鍵を持ち合って、不在時の植木の水やりなど、必要に応じて助け合った。当時、村田さんは母親と同居する都内の自宅と尼崎を往復する生活を送っていた。

「私の暮らしのなかで、尼崎での生活は大変な彩りでした。向こうにいけばツーカーで話せる友人がいて、お花見や京都旅行も楽しんでいました。7人が独立して暮らしながら、好きなときに集まって、好きなときにどこかに出かける。それはもう、とても自由で刺激的な生活でした」

離れて住むことになっても「友達」

 しかし、年齢とともに東京と尼崎の往復生活は体力と金銭面を圧迫し、80才を目前にしたとき、尼崎のマンションを売却。自身のルーツである東京の自宅に戻った。11年に及んだ「友達近居」から、老後に良好な友人関係を維持するコツを明かす。

「私たちの決めたルールは、『お互いに助け合いはするけど、介護はしない』でした。ムリなく負担にならない関係性が大切だから、介護はプロに任せるけど、心の支え合いはしていこう、という距離感です。友達関係の維持には、絶対にメンテナンスが必要。言いたいことは言えるけど、踏み込みすぎないことも大事です。適度な距離を保ちつつ、異なる意見があっても互いに認め合って、受け入れる姿勢も持たないとダメ。相手に“求めすぎない”ことも大切です」

 住む場所が離れ離れになったからといって、友達関係が消滅したわけではない。今後も機会があれば尼崎を訪問し、かつての「同居人」との旧交を温めるつもりだという。

人生後半戦の友人との付き合い方3つのルール

 介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは話す。

1.住まいの近くで顔を合わせられる友人をもつ

「最近ではSNSを通じて、学生時代の同級生と連絡を取り合うケースが増えているようですが、できれば住まいの近くで顔を合わせられる友人がほしいところ。地域の公民館や集会所で行われている公開講座、料理教室、体操教室などに参加してみれば、共通の趣味を持つ人と知り合える可能性が高い。新たな友達は年の差があっても全然かまわないし、むしろ若い世代と交流すると刺激があって楽しいですよ」

2.ちょっとした電話やメールをする相手をもつ

 腹を割って話ができたり、一緒に旅行する間柄だけが友達ではない。心身の衰えを招く「孤独」を避けるには、ほんのわずかな触れ合いがあればいい。

「たとえ足が悪くて外出できなくても、ちょっとした電話やメールをする相手がいるだけでも孤独を避けられます。

人との交流より読書が好きという人も、ブログに書籍の感想を書いて、そこへコメントをもらうなど、ちょっとした交流があれば孤独にはなりません」(太田さん)

3.無理をする必要はない

 ただし、無理をする必要はない。まずは、「自分を知っている人」をつくる程度で構わない。人間も動物も「社会」という群れのなかで生きることは、それだけでストレスがたまる。

 世知辛い世の中で損得勘定を抜きにして、笑って泣いて助け合い、人生に彩りを与えてくれる相手がいることは、何よりの財産ではないか。

教えてくれた人

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん

※女性セブン2021年4月1日号
https://josei7.com/

●老親の「閉じこもり」を考える|「最近、親の外出が減った…」それ危険です|

●「見せかけの友人なんていりません」下重暁子さんが提案する新時代の生き方

●老後ひとり暮らしのお付き合いマナー|おひとりさま向け3大サービスとは?

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