マスク生活に潜むリスクを医師が指摘|大人ニキビ、肩こり、心臓病、認知症も…
長引くマスク生活で顔や脳がどんどん老けている――。表情筋の衰えでしわやたるみ、ゴムで耳が引っ張られて肩こり、酸欠で認知症リスクも!? いまや生活に欠かせないマスクが引き起こす症状や病について、専門医が解説する。
マスク着用生活に潜む危険
マスク着用にご協力ください――。美容院から銀行まで、町中でこんな張り紙が目に入るようになった。いまやマスクは私たちの体をウイルスから守る生活必需品であり、民間施設を利用する際の“通行手形”の役割をも果たしつつある。しかし、皮膚科医の柴亜伊子さんは、こうしたマスク着用の生活に潜む危険性を指摘する。
「確かにマスクは感染症を防ぐため、なくてはならない存在です。しかし着用方法やお手入れの仕方を間違えば肌の老化を早めてしまうだけでなく、さまざまなトラブルを生むことも事実です」(柴さん、以下同)
せっかくウイルスを遮断できたのに、マスクの下の素顔はどんどん老化が進んでいく──そんな事態を引き起こさないための対策を専門家に聞いた。そもそも、なぜマスクで老いが進行するのか。
マスクの摩擦で起こる皮膚のトラブル
「理由の1つは、摩擦による皮膚の炎症です。どんなに肌に優しいマスクでも、長時間つけていれば皮膚との間に摩擦が生じます。それによって皮膚に炎症が起こることがあるのです。炎症を起こした肌は、乾燥してバリア機能が著しく低下します。乾燥した肌は小じわができやすく、さらには少しの刺激でもかゆみが出やすくなります。また、摩擦による肌への刺激で交感神経が興奮し、皮脂の分泌量が増えてしまう。その結果、いわゆる“大人ニキビ”ができやすくなってしまうのです」
マスクをしていることを理由に、メイクやお手入れをサボってしまうと、肌ダメージに拍車がかかる。
「特に日焼け対策をしなくなった人が多い。冬であっても紫外線は降りそそいでおり、日焼け対策は必須です。これまではファンデーションや下地クリームを塗ることで、ある程度、日差しから肌を守れていましたが、素肌のまま紫外線を浴びてしまえば、シミやしわだけでなく、たるみやほうれい線、毛穴の開きにつながります」
マスクで覆われているところも含め、外出時は日焼け止めをきちんとつけたい。
マスクのひもが原因で顎関節症に
肌のお手入れに抜かりのない万全の状態であっても、思わぬところに落とし穴がある。せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司さんが言う。
「ここ一年、顎まわりの筋肉に痛みや異常を伴う顎関節症になり、それに伴う頭痛や肩こりに悩んで来院する人が増えています」(久手堅さん・以下同)
久手堅さんによれば、患者の数は2019年の2倍近くになるという。
「体の状態や来院患者数が増えた時期から分析すると、マスク着用時に耳にかけているひもが原因だと考えられます。このひもにより耳と顔が引っぱられ、慣れない圧力に無意識に抵抗しようとして顎が前に出たり、歯を食いしばったりしてしまった結果、顎関節症を発症するのです」
猫背から首、腰に痛みが
この“無意識の抵抗”が長く続けば、全身に影響が及ぶ。
「顎を前に出し、歯を食いしばった緊張状態が長時間にわたると、耳の後ろから鎖骨までつながる胸鎖乳突筋に負担がかかり、猫背になりやすくなります。こりを感じる範囲は肩からどんどんのびて、最終的には首から腰まで痛みが広がることすらあるのです」
マスク酸欠から高血圧のリスクも
まさに満身創痍の状態だが、蝕まれるのは体だけではない。楽健道協会代表理事の京谷達矢さんが懸念するのは「マスク酸欠」の問題だ。
「肺に新鮮な酸素をたっぷり取り込むためには横隔膜のしなやかな動きに加え、深い呼吸が不可欠です。
しかし体のこりや自粛生活のストレスで横隔膜の動きがにぶっているうえ、マスク越しに息を吸うため呼吸が浅くなりがちです。結果、平常時の6割ほどしか酸素を吸えておらず、酸欠状態になっている人が多い。酸欠状態が長期にわたれば、それだけ脳や血液に酸素が行き渡らなくなり、高血圧や認知症、心臓病のリスクが上がってしまいます」(京谷さん)
教えてくれた人
皮膚科医・柴亜伊子さん、せたがや内科・神経内科クリニック院長・久手堅司さん、楽健道協会代表理事・京谷達矢さん
※女性セブン2021年2月11日号
https://josei7.com/
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