終末期の症状を知っておきましょう…看取りの時に何をしてあげればいいのか|700人看取った看護師がアドバイス
では、点滴はしない方がいいのでしょうか。
●心臓の前に、他の臓器が機能低下していく
最後は、心臓の鼓動が弱くなって止まって亡くなっていきます。しかしそれより前に、他の臓器の機能が低下することが多いのです。
たとえば、終末期のがん患者さんの場合、8割は、慢性的に全身が衰弱する経過を経て、最期を迎えます。そうなると腎臓や肺に問題が発生しているということになります。 治療としては、肺を守るのか、腎臓を守るのか、という選択を迫られます。
●腎臓を守ろうとすると水がたまることにも
腎臓の負担を減らすには、点滴をするしかありません。しかし点滴をして水分を吸収できないと、体内にたまってしまう。お腹や胸に水がたまることを、それぞれ「腹水」、「胸水」といいます。それ以外の部分でもむくみが増えます。手も足もパンパンにふくらんできたりします。呼吸が苦しくなるなど、辛い症状も出やすくなるのです。
肺にも水がたまってしまいます。「肺水腫」と呼ばれる症状です。点滴によって肺が水浸しになって、呼吸も苦しくなります。医療者の間で「陸(おか)で溺死する」と言われる状態です。
●肺を守ろうとすると、毒素が回って「自然の麻酔」に
肺を守ることに主眼を置くなら、点滴の量を減らす必要があります。ところが、そもそも患者さんの体内の水分量が低下しているので、点滴を減らしたりやめたりすると、脱水症状になってしまいます。そうなると、尿が濃くなり、だんだんと出なくなります 先ほども説明したように、尿を外に排出できなければ、毒素が体内にたまってしまうので、尿毒症で脳が正しく作用しない状態になってしまいます。頭がぼーっとして、ウトウトすることが増えてきます。 尿毒症によって、眠ることが多くなる状態を「自然の麻酔」と呼びます。人間は、この自然麻酔によって、苦しみを回避しているのかもしれないと言われているのです。
●点滴をして、体調が安定することも
点滴がすべての場合に悪いわけではありません。点滴によって体調が安定し、苦しみが取り除かれることもあります。
点滴によってむくみや腹水などの症状が出ず、体重減少が押しとどめられるならば、点滴によって生存期間が延びることがあります。
点滴をした方がいい場合と、しない方がいい場合があることを知っておく。そして、するかしないか選ばなければならない時になったら、メリットとデメリットを考えるということになります。