コロナ自粛で3か月ぶりに息子と対面した認知症の母 沈黙の2秒後…その反応は?
母:『あら、あんた今朝からいたの?』
この言葉の意味は、母がデイサービスに行くとき、わたしが見送ったかどうかを確認するための質問です。この言葉を聞いて、わたしはやった!と思いました。
というのも、この質問は、わたしが盛岡に帰省して、母と最初に会ったときに必ず言う言葉で、いつもの母だと確信できるものだったのです。
遠距離介護7年8か月で積み重ねたもの
2012年からこの遠距離介護生活を始めて、7年8カ月が経ちました。誰よりも母と時間を共にし、認知症と向き合って、介護を続けてきました。その小さな積み重ねを、わずか3か月で失ってしまう怖さが、ずっとありました。
介護の態勢も整っているし、見守りカメラも設置しているので、3か月会わなくても心配ないと思っていましたが、2秒の沈黙のあの緊張感から、わたしはどこか不安だったのかもしれません。
そんなわたしの心配などつゆ知らず、母はわたしの顔をじっと見て、急にこんなことを言い出しました。
母:「そう言えば、あんた久しぶりじゃない?」
母は「久しぶり」がどのくらいの期間なのか、理解していませんでしたが、母の感覚でなんとなく、わたしと久しぶりに会ったと気づいていたようでした。さらに母は、
母:「ちょっと、ひろ!こっち来て!」
わたしの名前も忘れずに覚えていたことに、ホッとしたのです。
何でもない日常のありがたさに気づかされたのと同時に、何度も何度も同じ質問を繰り返す母の言動すら懐かしく、愛おしいと感じました。
遠距離介護生活が再開することに喜ぶのも不思議な話ですが、普通に行き来できる環境に1日も早く戻って欲しいと思っています。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)
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