「自宅での死」に必要な手続き|看取り医師がいないと警察の事情聴取に!
家族を自宅で看取るとき、費用はどれだけ必要か。死亡後は誰を呼ぶべきか。遺体の安置はどうしたらよいのか。「自宅での死」を望む高齢者は多いが、“いざ家で死なれたらどうすればいいかわからない”という人も多いはず。意外に知らない「自宅死」の手続きを徹底解説する。
自宅で最期を迎えるために
「自宅で最期を迎えたい」と考える人は多い。厚労省の調査によると、死亡場所に「自宅」を望む人は約70%。しかし、実際には病院で亡くなる人が70%以上で、なかなか望み通りにはいかないのが実態だ。介護ジャーナリストの末並俊司さんが話す。
「目の前で急に痙攣(けいれん)が始まったり、意識を失ったりして容体が急変すると、家族はパニックになり“とにかく119番!”と救急車を呼ぶケースが多い。病院に運ばれれば人工呼吸や点滴などの延命治療が施されることになります。そうなると、いくら本人が自宅での死を望んでいても、家に連れて帰ることは難しい。そのまま入院し、結局、病院で息を引き取ることになる」
老親を見守る家族としては、本人の希望通り「自宅死」を迎えさせてあげたいもの。しかし、「家で死なれたらどうすればいいかわからない」というのが、多くの人が抱える本音ではないだろうか。
病院であれば、容体が急変した際の対応や死後の手続きもイメージしやすい。ところが、自宅で息を引き取った場合、その後の手続きについては、簡単には思い浮かばない。自宅で息を引き取るためには、本人と家族が事前にしっかり準備を進める必要がある。
まず大事なのは「看取りのための医師」を確保することだ。医師や看護師が自宅を訪問し診察・治療を行う「在宅医療」の準備が不可欠だと、在宅医療認定医で蔵前協立診療所所長の原田文植(ふみうえ)さんは語る。
「自宅での看取りを含めた在宅医療を受けるには、まず充分な知識と経験を持った専門の『在宅医』を見つけることが大切です。地域医療をよく知る訪問看護ステーションや介護サービス事業所、地域包括支援センターなどに尋ねれば紹介してくれるはずです」
在宅医療を受ける前に入院していた場合は、その環境を利用する方法もある。
「病院の医療相談室に常駐する医療ソーシャルワーカーに相談し、入院中に在宅医を探すのもいいでしょう。そうすれば治療の引き継ぎなどもスムーズにいくはずです」(末並さん・以下同)
「看取りのための費用」も考えておかねばならない。高齢者が自宅で息を引き取るには、最期のときを迎える介護用ベッドを準備するなど、環境を整える必要がある。
「そうしたお金は、介護保険申請をして要介護認定を受ければ安く済みます。たとえば介護用電動ベッドが必要な場合にも、介護保険サービスによって、月々1000円前後でレンタルできます」
訪問診療の医療費は、病院で受ける医療と同じく自己負担は1~3割だ。
「容体が急変するなどして急な往診になっても、追加の医療費は700円ほど。自宅での看取りに際しても『在宅看取り加算』という名目で、訪問診療料金が加算されますが、負担割合が1割の場合で3000円ほどです。加えて『死亡診断加算』もありますが、200円ほどで済みます」(医療ジャーナリスト)
医療費や看取りの費用についてはそれほど心配いらないことがわかるだろう。あとは、葬儀費用がかかる程度だ。事前準備で何よりも大切なのが「家族との意思統一」だと末並さんが続ける。
「自宅で死にたいという本人の意思を家族で共有するため、意識がしっかりしているうちに医療・介護方針について家族や医師と話し合う『人生会議』をするべきです。自宅死を望むなら、痛み止めはどれだけ使うのか、どういう状態まで救急車を呼ばないのかなど、できるだけ具体的に話し合っておくことが必要です」
死の間際、痛みに苦しむ姿を見ると家族は思わず救急車を呼びたくなるものだ。しかし、その気持ちをぐっとこらえしばらくすると、容体が落ち着き、眠るように安らかに亡くなることも多いという。
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