大地震発生したら… 避難所は3密?コロナ時代の今考える地震の備え
5月11日9時ごろ茨城県沖で震度3の地震が発生。震度3以上の地震が11日までに3日間連続で観測されている(気象庁・震度速報)。南海トラフ地震や首都直下型地震が起こるかもという噂がネット上で拡散されたり…、不安を募らせている人も多いことだろう。コロナ禍の今、改めて考えるべき地震の避難や備えについて防災のプロに聞いた。
不足する避難所はまさに3密状態
連日響き渡るあの不気味な緊急地震速報の音――。新型コロナウイルスに加えて、この一連の地震に不安は募るばかり。
もしもいま大規模な災害が発生した場合、避難所では新型コロナウイルスの感染も懸念される。
「多くの人が集まる避難所は、密閉・密接・密集のいわゆる3密。コロナもそうですが、さまざまな感染症が広まりやすい場所といえるでしょう」
こう話すのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
「いざとなったら避難所に行けば何とかなると思っている人は多いですが、その考えは甘いかもしれません」
全国的に避難所の数は足りていない。特に東京は深刻で、内閣府の試算では、首都直下地震が発生した場合、約60万人分の避難所が不足すると推計されている。
地震が起きても避難所に入れない!
まず、質問。地震が起きた時に、避難所が受け入れてくれないのは、以下のどちらだろうか。
1.大規模マンション住む高齢夫婦
2.一戸建てに住む子育て世帯
そもそも避難所は、地震などにより自宅が倒壊・滅失などの被害を受けた人や、土砂崩れの恐れがあるなど自宅での生活が危険な人が避難生活をする場所。
自宅が無事で生活できるのに“ひとりだと心細い”“自宅は不便だから”などの理由で、避難所に入ることはできない。
「全員を受け入れていては、避難所がパンクしてしまいます。一戸建てに比べ、構造が頑強なマンションは倒壊する可能性が低いので、避難所はマンションの住民の受け入れは想定していません。東京都も、マンションの住民は可能な限り在宅避難(自宅で避難生活を行なうこと)をと、呼び掛けています」(和田さん、以下同)
マンションの中でもとくにタワーマンションなど大規模マンションの住民は入所を断られる可能性が高いと、和田さんは続ける。
つまり、冒頭の質問の答えは、「1.大規模マンション住む高齢夫婦」のほうが避難所に入れない可能性が高いといえる。
タワーマンションは倒壊は免れてもライフラインがストップする可能性大
最新のマンションは耐震・免震で地震に強い。しかし、建物の倒壊は免れても電気や水道などのライフラインが止まる可能性は十分にある。さらに地震に限らず、タワーマンションをめぐっては、台風による悲惨な事例もある。
‘19年10月、台風19号による大雨で神奈川県・武蔵小杉エリアにて大規模な冠水が発生。その影響でタワーマンション2棟が浸水被害を受け、電気設備が使えなくなった。マンションは停電し、エレベーターも排水ポンプも使えなくなった。
「高層階の住人は、階段で水や食料を運ばざる得なくなりました。さらに部屋のトイレも使えない。不便を感じて、住民の中には、自腹でホテルに自主避難した方もいました」
これは他人事ではなく、マンション住まいの人ならだれでも起こりえる問題だと和田さんは話す。
地震発生の前に用意すべき5つの備え
地震など自然災害は必ず起こるもの。コロナ禍における複合災害は想像を絶することが予測されると和田さんは警鐘を鳴らす。
コロナウイルスとの共生を考えるいま、感染を避けるために避難所に行けないという人も増えるだろう。
では、在宅避難に備えて何を準備しておくといいのだろうか。和田さんは、1週間程度は自宅で生活できるように最低限5つのものを準備しておいたほうがいいとアドバイスする。
新型コロナで医療機関がパンクし、薬がもらいにいけないという声も多く聞かれた。
「持病のある人はとくに薬を用意しておくといいでしょう」
1.水(生活用水、飲料水など)
2.食料品
3.非常用トイレ
4.生活&衛生用品
5.常備薬(とくに持病がある人)
ステイホームの今こそ、防災についてもう一度見直しておくのもいいだろう。
教えてくれた人
災害危機管理アドバイザー・和田隆昌さん
海・山のアウトドア雑誌の編集者を歴任。「防災士」資格の取得をきっかけに災害危機管理アドバイザーとしての活動を開始。主な著書に『まさか我が家が 命と財産を守るサバイバルマニュアル』(うしお出版社)など。講演会ほかTVなどマスコミ出演多数。オールアバウドにて防災ガイドも担当。 https://allabout.co.jp/gm/gp/36/profile/
取材・文/鳥居優美
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