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暮らし

お天気キャスター森田正光さんが勧める「シニアの防災」心構え

 6月の大阪府北部地震や7月の西日本豪雨、9月の北海道胆振東部地震など自然災害に多く見舞われた昨年。世相を表す漢字には「災」が選ばれ、流行語大賞には「災害級の暑さ」がノミネート。いつ起こるかわからない災害に備えることは、重要だ。

 もちろん、高齢者にとっても防災は他人事ではない。テレビでもおなじみのお天気キャスター・気象予報士の森田正光さんが、「シニアのための防災フェスタ2019 in 藤沢」(主催:社会福祉法人聖隷福祉事業団/3月23日開催)に登壇。「もしもに備えて」の心構えについて語った。

災害時「自分は大丈夫」と思ってしまうことが危険

 まず、森田さんが説明したのは災害に直面した時に陥りがちな人間の心理状態だ。人には「自分だけは大丈夫」と期待する気持ちがあり、これを「正常性バイアス」という。この正常性バイアスが働くと、災害時に、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりすることを招き、それが逃げ遅れの原因なるのだと解説する。

「宝くじを買ったことがある人はいますか?宝くじを買うと当たるような気がしませんか?自分だけに幸運が来そうな気がしませんか?別の質問をしましょうか。震度7の地震があったら10分後にあなたはどうなっていますか?この質問を皆さんにすると、それぞれの答えがあるけれども、前提として自分は生きているんです。自分は絶対に死なないと思っているんです。そういう感情を持つことは普段生きていく時には大事ですが、災害の時には『私は大丈夫』という考え方は危ないですね。『ひょっとしたら何かが起こるかもしれない』ということを前提に行動してください」(森田正光さん、以下「」同)

 森田さんは想像力を働かせることの重要性も強調。過去の災害の教訓や自分自身の経験値を活かすこと、頑丈な建物の中など安全な場所に避難した場合は、むやみに動かないことが大事なのだという。

「『多数派同調バイアス』というものもあります。これは、自分以外に大勢の人がいると、取りあえず周りの人に合わせようとする心理状態のことです。この多数派同調バイアスが働くと、誰かが逃げたからそっちの方向に行くなど、みんなと同じようなことをしてしまうのです。過去、韓国で地下鉄火災があった際、煙がもうもうとしているのに逃げようとしなかった人たちがいました。地下鉄で煙が出た場合、普通なら逃げますが、みんなが逃げないから自分だけが逃げたら恥ずかしいと思って逃げなかった。人に合わせるのではなく、やはり自分の頭で考えることが大事だと思います」

自分の命は自分が守る

 では、災害に直面してしまったらどうしたらいいのだろうか。慌てずに行動しなければいけないと分かっていても、いざという時に自分が適切な行動を取る自信がないという人も多いのではないだろうか。

「災害時にこのようなバイアスが自分の中にあることを認識することが大事です。噂もそうですね。地震があった時に、”もっと大きな地震が来る”というような噂に振り回されないように、役所やマスコミなど確かな情報を見ること。もう1つ大事なことがあります。自分の命は自分で守ることです。津波がきたら、自分がまず逃げること。“津波てんでんこ”(※)という言葉がありますが、誰かを助けに行って亡くなってしまうこともある。みんなで助け合うことももちろん大事ですが、それぞれが自分の身を自分で守ることが、結果として1番被害が少なくなります。とにかく自分の命を守ること。冷たいように聞こえるかもしれませんが、それが1番人にも迷惑をかけずに済みます」

※:「津波がきたらてんでばらばらに(各自で)逃げろ」という東北地方三陸地方の災害教訓

高齢者は「猛暑」に気をつけて

 近年は台風や地震だけではなく、夏の猛暑も災害として捉えるようになってきたという。森田さんも高齢者が気をつける気象については「猛暑ですね」と即答。さらに高齢者が気をつけるべきポイントについても教えてもらった。

「猛暑は避けることが難しく、静かな災害とも言えますね。もったいないという気持ちでエアコンをあまりつけずに熱中症になってしまう方もいらっしゃるので、猛暑は最も人を殺す災害かもしれません。昔は冬の寒さが原因で、脳卒中で亡くなる方が多かったですが、今は夏の猛暑が原因で亡くなる方が圧倒的に多いですね。30℃を上回る真夏日になったら十分気をつけて、水分をきちんと取ることが大切です」

地域のお祭りには、自然災害の教訓も。ハザードマップをチェックして

 森田さんが話してくれた“津波てんでんこ”のように、昔からの伝承が防災に役立つことも多いという。地域のお祭りから過去の教訓が読み取れることもあるそうだ。災害から身を守るためには、適切な情報を得ることがポイントになる。

「各地のお祭りには自然災害が起源になっているものがあります。例えば、祇園祭の起源には貞観地震や疫病が関係していると言われています。ご自身が住んでいる地域のお祭りから歴史を見ると、繰り返し起こる可能性のある過去の災害が分かることがあります。やはり、災害から身を守るためには情報が重要です。行政が情報発信しているハザードマップをチェックすることもオススメします。自分の住んでいるところの危険度合いを知っておくと正しい判断に役立ちます」

 自然災害が多かった平成。間もなく始まる令和の時代では、高齢者のみならず、いざという時に落ち着いて行動できるように日頃から防災の意識を高めておきたい。

森田正光氏

1950年名古屋市生まれ。財団法人日本気象協会を経て、1992年初のフリーお天気キャスターとなる。同年、民間の気象会社・株式会社ウェザーマップを設立。親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオ出演のほか全国で講演活動も行っている。2005年財団法人日本生態系協会理事に就任し、2010年からは環境省が結成した生物多様性に関する広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーとして活動。環境問題や異常気象についての分析にも定評がある。

撮影/津野貴生

【データ】
社会福祉法人聖隷福祉事業団
URL:http://www.seirei.or.jp/hq/

●大規模災害、その時!「 離れて住む高齢の親」守る知恵

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