新型コロナで要介護認定はどうなる? 要介護申請の流れをおさらい
介護保険サービスを使うために必要となる要介護認定が、新型コロナウイルスによる影響でどう変わったのか? 支給額はどうなるの? ファイナンシャルプランナー・大堀貴子さんに、要介護認定の”今知っておくべきこと”を教えてもらった。
1:要介護認定は新型コロナでどうなる?
要介護認定とは、介護保険サービスを使うために必要となるもの。申請することで介護度の区分(要支援1・2、要介護1~5)が判定され、介護保険から区分に応じた給付が受けられるようになる。
要介護認定は、原則として12か月ごとに見直しをすることになっており、有効期間満了の前に更新手続きが必要となる。しかし、新型コロナウイルスの影響で対応が変更となっている。
厚生労働省の通知によると、現在、新型コロナウイルスの影響で入所者と面会禁止となっている場合には、認定調査ができないため、認定を受けている期間から最長12か月間まで認定期間が延長できる(延長期間については市区町村が決めることとなっている)。
また、新規や変更の要介護認定については、面会できない状況が解消後に調査を実施・再開するとしている。介護認定は原則申請から認定まで30日以内となっているが、延長されることもある。
なお、審査においてはインターネットによるテレビ会議や電話での会議が可能となっているが、市区町村が審査のために作成する資料等が持ち出せず在宅勤務での作成ができないことから、感染者が出ている保健福祉施設では介護認定の手続きが滞っているところもあるようだ。
参考/厚生労働省 介護事業所等における新型コロナウイルス感染症への対応等について 5.要介護認定に関する事項より https://www.mhlw.go.jp/content/000619854.pdf
2:そもそも要介護認定とは?
要介護認定は、40歳以上から加入する介護保険を使うために必要となる手続き。
65歳以上で要介護認定を申請し、判定されると、介護サービスを所得に応じて1〜3割負担で受けることができる。
なお、40〜60歳の加入者は老化に起因する特定の16疾病※で介護認定を受けた場合にのみ対象となる。
●特定疾病とは? ※
40〜64歳の方は下記の疾病による介護認定にのみ介護保険による介護サービスが受けられる。
1末期がん 2関節リウマチ 3筋萎縮性側索硬化症 4後縦靭帯骨化症 5骨折を伴う骨粗しょう症 6初老期における認知症 7進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 8脊髄小脳変性症 9脊柱管狭窄症 10早老症 11多系統萎縮症 12糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 13脳血管疾患 14閉塞性動脈硬化症 15慢性閉塞性肺疾患 16両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
●利用者の負担は所得により1~3割
介護保険サービスの利用負担額は、所得に応じて1~3割と変わる。
3:要介護認定の区分と支給上限額(月)
要介護認定で判定された区分によって介護保険から支給される上限額が変わる。この額については、新型コロナの影響はとくになく、従来通りとなっている。
●要支援1→50,320円
日常生活上の動作について、ほぼ自分で行うことができるが、一部支援が必要。
●要支援2→105,310円
要支援1と比べて自分でできることが少なく、支援と共に一部介護が必要な状態。介護予防サービスの利用で、状態の維持・改善が期待できる状態。
●要介護1→167,650円
立ち上がりや歩行が不安定で、日常生活において部分的に介護が必要な状態。
●要介護2→197,050円
立ち上がりや歩行が自分でできないことが多く、日常生活全般に部分的な介助が必要な状態。
●要介護3→270,480円
立ち上がりや歩行が自分では困難で、日常生活全般に全介助が必要.また認知症の症状があり日常生活に影響がある。
●要介護4→309,380円
立ち上がりや歩行が自力ではほとんどできない.食事などの日常生活が介護がないと行えない状態.コミュニケーションの部分でも、理解力の低下があり、意思疎通がやや難しい状態。
●要介護5→362,170円
寝たきりの状態で、日常生活全般で全て介助が必要な状態で、理解力低下が進み、意思疎通が困難な状態。
4:要介護認定申請の流れ
1:申請
市区町村の窓口または地域包括支援センターで「要介護(要支援)」の申請をする。
2:認定調査・審査(1か月程度)
市区町村の認定調査員が自宅などを訪問し、介護サービスを受ける本人、家族から聞き取り調査が行われる。調査内容は全国一律だ。
そして、市区町村が直接主治医に意見書の作成を依頼し、聞き取り調査と主治医の意見書をもとに判定(一次判定・二次判定)が行われる。
3:判定結果通知
要介護認定には、要介護1~5、要支援1・2の7つの区分がある。要介護1~5だと介護保険サービスを利用でき、要支援1・2では介護予防サービスの利用が可能となる。
4:ケアプラン作成
要介護(1~5)の場合には、在宅介護サービスを受ける場合には事業者のケアマネジャーと相談して、利用サービスを決め、ケアマネジャーに介護サービス計画「ケアプラン」を作成してもらう。施設に入所する場合は、直接施設に申し込む。
要支援(1・2)の場合には、地域包括センターで職員と相談して介護予防サービス計画「介護予防ケアプラン」を作成する。
5:介護認定は一次・二次の二段階
要介護認定の申請後には、主治医の意見書と市区町村職員による調査結果をもとに、コンピュータによる一次判定が行われる。
次に、主治医の意見書、調査項目、調査項目以外の特記事項をもとに、介護認定審査会による二次判定が行われる。
この一連の判定基準は、“介護の手間”を基準とし、全国一律で客観的に定められており、病気の重さや同居人の有無を理由に変更できないとされている。
しかし、日本経済新聞の報道(2020年3月7日朝刊)によると、市区町村の99%が二次審査で判定を変更していることが判明。つまり、住んでいる地域によって要介護認定の判定にバラつきがあるようだ。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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