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毒蝮三太夫が激白「緊急事態宣言とウルトラマン」【連載 第15回】

 新型コロナウイルスとの戦いは、まだまだ続きそうである。4月7日には安倍首相が「緊急事態宣言」を発令した。日本中が緊張感に包まれ、自粛ムードでストレスもたまる中、高齢の両親とどうコミュニケーションを取ればいいのか。かつて『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』で、地球を守るために戦った毒蝮さんはこう語った。(聞き手・石原壮一郎)

地球はひとつの家族

 なんだか、ますますたいへんなことになっちゃったな。新型コロナの感染が拡大してるってんで、先週は安倍首相が「緊急事態宣言」なんてものを出した。年寄りも若者も力を合わせて、しっかり対策をとって、ウイルスの野郎を抑え込もうじゃないか。

 新型コロナとの戦いは世界規模の話で、人類全体が戦ってるわけだ。言ってみりゃあ、暴れまわる怪獣や地球を侵略しに来る宇宙人に、ウルトラマンやウルトラセブンが立ち向かったのと同じだな。あのときはたいてい30分でケリがついたけど、今度はそうはいかない。

 俺は両方に出してもらって、「ウルトラシリーズ」を作った円谷英二監督を近くで見ていたからわかるんだけど、あの人には確固たる信念があった。それは「地球は地球人で守れ」ってことだ。

 物語の設定と矛盾してるじゃないかって。いや、そうじゃない。円谷監督は宇宙からきたヒーローが地球を守ってくれるなんてのは、あくまでフィクション。「地球は地球人で守れ」ってことを伝えたかったんだよ。

「今、地球はコロナでたいへんなんだ。助けてくれー!」って空に向かって叫んでも、ウルトラマンもウルトラセブンも来てくれない。来たところで相手はウイルスだから、どう戦っていいかわかんないけどね。今こそ地球がひとつになって、みんな家族だと思って危機に対処していかないと、どうしようもない。主義主張とか宗教とか関係ないよ。

 日本という家族も、ひとつひとつの自分の家族も同じことだ。家族全員の危機なんだから、てんでんばらばらに好きなこと言ってないで、気持ちをひとつにしてウイルスとの戦いを乗り切らなきゃ。

 こういうときに大事なのは「利他」の精神だよ。自分さえよけりゃいい、ウチだけトイレットペーパーがあればいいなんて思ってたら、とても勝てない。みんながそれぞれお互いに、自分よりも社会全体のためにどうすればいいかを考えないと。

→毒蝮三太夫が新型コロナ騒動で不安な高齢者に伝えたいこと

高齢の親への上手な声のかけ方

 ジジイやババアは極端に怖がり過ぎて疲れちゃうか、まったく危機感がなくて普段と同じように行動したがるか、どっちかに振れる傾向がある。「俺は平気だ」なんて言っているジジイも、怖い気持ちの裏返しだったりするんだよな。だから不安になって、たいして買うものもないのに毎日混んでるスーパーに行ったりする。

 前にも言ったけど、親に対して「神経質になるのもいいかげんにしろ」とか「もうちょっと用心しろ」って頭ごなしに否定したところで、聞く耳を持っちゃくれない。電話にせよ面と向かってにせよ、いったん相手の気持ちを受け止めて、そっからじっくり説明してあげるのがいいんじゃないかな。

 怖がり過ぎてる親だったら、まずは「わかるよ。なんせ相手は目に見えないから、怖いよな」って共感して、「だからみんな、マスクしたり手洗いしたりして気をつけてる。今はみんながそうしてくれているから、大丈夫だよ」って言ってあげる。不安を聞いてほしいってところもあるから、面倒臭がらずに話したいだけ話させてあげるのも大事だな。

 そんな話をしながら「怖がり過ぎると、それで疲れて体調がヘンになっちゃうよ。俺はそれが心配だ」って、こっちが心配していることを伝える。そうすると親は「子どもに心配かけちゃいけない」と思って、気持ちを強く持ってくれるようになるよ。

 危機感がなさすぎる親の場合は、怒鳴りつけたい気持ちをグッとこらえて、「こういうときも平常心でいられるのがオヤジのいいところだと思うけど」なんて言っておだてる。それから噛んで含むように、なぜなるべく家にいなきゃいけないのか、無駄に出歩くことで家族やまわりにどんな迷惑がかかるのか、説明してやるといいんじゃないかな。

 中には「俺はもうどうなったっていいんだ」なんて強がる迷惑な年寄りもいる。自分のためじゃない、家族やカワイイ孫や、近所に住んでる残り少ない友達のためなんだって言ってあげると、「じゃあ、気をつけるか」ってなると思う。

 とにかく、新型コロナ野郎と人類との戦いは、まだまだ続きそうだ。人間同士がケンカしてたんじゃしょうがない。不安な気持ちをやわらげてくれる一番の薬は、お互いのやさしさや思いやりだ。

 ストレスもたまるけど、こういうときは空元気でもいいから、バカな話でもして大笑いしようじゃないか。笑う門には、福は来るけどウイルスは寄って来ないよ。

■今回の極意

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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう) 

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、4月から『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』にお引越し(毎月最終土曜日に出演)。84歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など幅広く活躍中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

●新型コロナ感染予防をおさらい 正しい手洗い、咳エチケット、3つの密

●「家庭内でも高齢の親には近づかない」命を守るため、いますべきこと

●兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし

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この記事へのみんなのコメント

  • 成田悦子

    「ジジイやババアは極端に怖がり過ぎて疲れちゃうか、まったく危機感がなくて普段と同じように行動したがるか、どっちかに振れる傾向がある。」・・・ 私も“お婆さん”というに相応しい年齢になりました。 しかし、貴方のような人に“ババア”などと言われたくはないです。 小学館は、この程度の配慮もできない人として高名な毒蝮などを生死の問題の提案者に使って、恥ずかしくありませんか? 自分の事はさておく。 他人の利益を希求する。 自分の事をさておくことも、他人を優先することも良いとは言い難い。 国連の意志に沿うしか、私達に選択の余地はありません。 人が全て生き残り続ければ、どうなるかを考える。 予防はするとして、後は、日本政府と国連に私達のいのちを委ねるしかありません。 コロナで国連が推進しようとしていることを私達は考えなければなりません。 癌だと言われたら癌患者になるしかないように、コロナ陽性と言われたら、死ぬのも生きるのも、貴方のストーリーを受け持つ作家らの匙加減次第です。 コロナにしろ何にしろ、医療と薬剤が私達を支配し続けようとしている限り、私達人間に未来はありません。 皆、死ぬしかありません。 私は、医薬品業界と国連と作家、ジャーナリストらの猛省を促したいと考えています。

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