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新型コロナほかネットの医療情報やデマに惑わされない5つの心得

 ネット上にあふれる医療サイトとどう接するか。新型コロナウイルスなど未知のものには、とくに不安を煽られやすい。あやふやな情報や怪しいサイトを見分けるポイントや、医療情報との適切な向き合い方を専門医に聞いた。

スマホを見て不安がる女性

1:すべての治療法が全員に効くわけではない

 新しい治療薬が認められるまでには、製薬会社で「ランダム化比較試験(※)」という試験が行われる。しかし、ここで知っておいてほしい重要な点がある。

ランダム治療法のイメージ図

「ランダム化比較試験で有効性が証明された治療薬であっても、100人治療すれば100人全員の病気が治るわけではありません。医学的に『効く』は、『白(全員が治る)』や『黒(全員が治らない)』と色分けできるのではなく、『グレー(何パーセントの人が治る)』であることを意味しています」

 こう話すのは、厚労省の情報発信サイトの作成にも取り組む医師の大野智さんだ。

 これを知っておくと、“100%の治癒率” “これでがんが消える”といった情報は非科学的で、冷静に向き合う必要があることがわかる。

治療効果の解釈をグラフ化した図

2:総合的に冷静な判断をする

 エビデンスにとらわれすぎると逆効果になることもある。

「治療の結果、効く人もいれば効かない人もいる。また、治療の効果がどのくらいで表れるかも人それぞれ。ですから、『治療効果が高い』という言葉に頼って高額な治療を受け続けても、それに見合わないこともあり得ます。前述の通り、治療方針は、医療者と患者が話し合って決められるべきですから、自分はどうしたらよいのかを総合的に考えるべきだと思います」

 厚労省が掲げる「10か条」※の中の「出来事の『分母』を意識する」ことも必要だ。

→※医療情報を見極める10か条とは? 記事を読む

「たとえば、“このサプリメントをのんで体重が減りました”と5人の体験談が紹介されているようなケースを見かけますが、成功例だけ出されていて、全体である分母を隠していることもあります。たとえばのんだ人が全部で1000人いて、実際に体重が減った人が5人だったとしたら、体重が減った人の人数をのんだ人の人数で割ると、5/1000=0.5%となり、効果は低いことになります。成功の裏にはたくさんの失敗があるかもしれない、と想像することも必要です」

 加えて因果関係も見定めることも必要だ。

「毎日のジョギングのおかげで、風邪をひかなくなったというと、ジョギングがよいように見えますが、実は風邪をひかなかったからジョギングが毎朝、続けられたのかもしれない。因果関係がはっきりしないなら、“その可能性もある”ぐらいにとどめておいた方がいいかもしれません」

 物事には裏と表がある。

「ベネフィット(利益)とリスク(危険)の比較です。医療においてはどうしても、効果という利益ばかりを見てしまいますが、その分、危険もはらんでいるということ。いくら体によいものでも摂りすぎると害になります。利益か危険のどちらか一方だけが取り上げられている場合はもう一方はどうなのかを考えてみる必要があります」

3:SNSはデマが拡散しやすいと心しておく

「動物実験『病気の治療に有望』という研究結果があっても、人に対してどうかは、まだわかってないのがほとんど。人に対する臨床試験で効果が確認されているかを確かめる必要がある。

 また、ブログやツイッターなどは誰でも発信できて、拡散力もある。そうしたSNSを介して、医療専門家が情報発信することもありますが、必ずしもそれらが正しいとは限りません」

 こう語るのは、『新装版「ニセ医学」に騙されないために』の著書がある内科医の名取宏さんだ。

 たしかに、有名医大の教授から地方の保健所勤務者まで、多くの医療従事者が情報発信をしているが、それらの正誤を巡って議論がなされることもあり、一般人は混乱する。

「専門家によるものだからといって、SNSの情報をうのみにしない方がいいでしょう。医師も国内に20万人ほどいます。勉強不足の人もいれば、あえて詐欺まがいなものに加担する人もいます。

 本来、医学的な発表は学会でなされるもので、SNSなどで軽々と情報を流す医療関係者は、話半分で見ておいた方がいいです」(名取さん)

 新型コロナウイルスのように未知なものに人は不安を煽られやすい。

 また、検索時に「関連ワード」がいくつか表示されるが、惑わされないようにしたい。不安を感じていればいるほど、ネガティブな単語をクリックしてしまいがちだが、気持ちを引っ張られすぎないように冷静でいよう。

4:誰が何のために書いたものかを考える

 公的機関が発表する一次情報に比べて、二次情報には誤りも多い。しかし、すべてが悪いものであるとも限らない。

 たとえば、がんサバイバーが、「個人の見解」と断った上で、自身の体験談を似たような境遇の人向けに発信するケースもある。そうした場合、親切心あっての発信かもしれない。

「情報にどう向き合い、どう見分けるかは、人それぞれの状況によります。インターネット技術の発達によって、誰もが簡単に情報発信できるようになりました。

 もちろん、よいこともある一方で、悪意を持った人でも情報発信できることになっています。個人のブログなのに必要以上に商品の宣伝がされている場合、別の目的があるかもしれません。

 さらに、一見すると宣伝だとはわかりにくい巧妙な方法で情報発信されているケースもあり注意が必要です」(大野さん)

 情報の発信者が何のために書いたかを冷静に見よう。

5:自分を批判的に見ることも重要

 人は思い込みで物事を判断する傾向がある。特に、不安に襲われているようなときは冷静な判断がなかなかできない。たとえは悪いが、借金で首が回らない人ほど怪しい儲け話にだまされやすい。

 食品添加物が「がんの原因になる」と思い込んでいる人に、「そんな根拠はない」といっても信じずに、逆に「食品会社の陰謀に巻き込まれている!」と反論されることもある。このように自分の価値観に凝り固まってしまうと、かえって健康を損ねてしまうことにもつながりかねない。

「ネットで見た情報も、ひとりで悩まずに、自分にとってあてはまるのか、かかりつけの医師や薬剤師あるいは公的機関の窓口に相談してみるの手。情報を客観的な目で評価してもらうとともに、自分自身が冷静に判断できるような状況なのかどうかを見つめ直すきっかけにもなるはずです」(大野さん)

 自分が偏った考え方をしていないか、常に心がけよう。ネットで情報を見るときに、それが本当に正しいのか疑うのと同時に、自分の価値観を見直す必要もある。

※女性セブン2020年4月16日号
https://josei7.com/

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