正しい入浴法を温泉療法専門医が伝授|乾燥・冷え対策をチェック
風呂上がりに体がべたつくほどクリームをつけても、時間が経つとかゆくなったり、カサカサになる冬の肌。
「原因の1つは、入浴の仕方にあるかもしれません」と言うのは、東京都市大学人間科学部教授で温泉療法専門医の早坂信哉さんだ。
「肌の潤いは、皮膚のいちばん外側にある角質の水分量で決まります。角質には“天然の保湿オイル”であるセラミドがあり、潤い保持には欠かせません。ところが、女性は30代を過ぎると年々皮脂やセラミドが減少していくため、若い頃より乾燥が顕著になるのです」(早坂さん・以下同)
湿度の高いバスルームは潤いの宝庫だが…。
「入り方を間違えるとセラミドを失い、乾燥を加速させる危険な場所になるのです」
年齢を重ねた人ほど、入浴法の基本(下記、冷えと乾燥対策編の解説を参照)を見直す必要がありそうだ。
正しい乾燥・冷え対策をチェック
■あなたが正しいと思うorしている乾燥・冷え対策は?
冬最大の悩みといえる乾燥や冷えは、肌トラブルやウイルス感染の大敵。さまざまな加湿対策の中で、意外と知られていないのが正しい入浴方法だ。あなたのお風呂の入り方はどうですか?
それぞれの項目に○か×で答えてください。
【A】潤いのためには湯船に20分以上浸かった方がいい
【B】冷え性なので、熱めの湯(42℃以上)に浸かる
【C】温泉に行ったら、何度も入浴するのが当たり前
【D】体を洗う時、ボディー用スポンジは使わない
【E】保湿、冷え性など、症状別に入浴剤を使い分ける
【F】入浴後30分以内に保湿しないと乾燥が進む
【G】保湿剤を選ぶ時は、質より量を優先する
【H】入浴後30分以内に就寝すると体が温かいまま眠れる
【I】足の冷えが気になる時は靴下を履いて寝る
【J】加湿器の設定は50~60%を心がける
冷えと乾燥対策編 回答と解説
【A】40℃に10分入浴するのがベスト
正解…×
40℃の湯に10分入浴することで温熱効果(血流がよくなる)が得られるという実験結果があるが、それ以上浸かるとセラミドが流出してしまい、逆に乾燥を招く。
「冬は、40℃の設定だと少し低めになることがあるので、41℃でもOKです」(早坂さん・以下同)。
【B】熱めの湯がかえって“冷え”につながる
正解…×
熱めの湯に浸かるとすぐに体が温まるが、入浴後、急激に体が冷えてしまうという面も。早坂さんの実験によると、42℃の湯に5分入浴した場合、上がった直後には体温が高く、その後急速に低下したが、40℃で10分入浴した場合は、体温は1時間かけてなだらかに下がっていくという結果に。また、42℃以上の湯は皮膚の表面を傷め、乾燥やかゆみの原因となるヒスタミンが出やすくなる。熱めの湯は、中高年の敵と認識すべし。
【C】温泉での複数回入浴で乾燥まっしぐら
正解…×
せっかく温泉に来たからには何度も入った方が効果ありそうだが、A同様“入りすぎ”は潤い成分のセラミドを失う結果に。
「セラミドは、食べて増やすのも手。なかでもこんにゃくセラミドを含む生いもこんにゃくが優秀です。1日100g食べれば肌の潤いも期待できます。バナナやヨーグルトと一緒にスムージーにすると、こんにゃくのコクが加わり、意外なおいしさですよ」。
【D】体は泡で優しく洗う
正解…○
ボディーソープの多くは界面活性剤が入っており、必要な皮脂も落としがち。ましてやボディータオルでこするなどもってのほかだ。
「冬は皮脂が多い部分(頭、顔、背中の上、わきの下、陰部、足指の間)のみ石けんで洗い、全身は週に2、3回で充分。石けんは、よく泡立ててなでるように洗いましょう」。
【E】冬こそ入浴剤を活用すべし
正解…○
シュワッと泡立つ炭酸性入浴剤は血管を広げて血流がよくなり、冷えに効く。また皮膚センサーが刺激されて実際より湯温が高く感じられるため、熱めの湯が好きな人にも◎。硫酸ナトリウム系粉末剤(温泉の素)なら、皮膚の表面に皮膜を作るので冷えのほか、保湿効果もある。
「バスソルトも保温効果が高いのですが、外国産の商品には塩化ナトリウム入りのものがあり、給湯器をさびさせるので注意しましょう」
【F】入浴後10分保湿がマストな理由
正解…×
風呂上がりの肌の水分量を計測した実験(*2)によると、40℃の湯に入浴後、10分までの間は入浴前より肌の水分量が多いことが判明。
「この間にケアをすれば保湿効果がより高くなります。とはいえ10分で全身保湿は至難の業。冬場は『インバス(浴室内)ケア』に対応したボディークリームや顔パックを試すのもいいですね」。
(*2)保湿ケアは入浴後何分までにすべきかを調べるため、早坂さんの研究チームが複数の被験者に対して行った実験。
【G】保湿剤は惜しまずたっぷりと
正解…○
保湿剤をケチっては乾燥を防げない。
「調査をする中で、保湿剤を塗る量がみなさん、圧倒的に足りないと感じています。高価なものを少しより、コスパのいいボディークリームを惜しみなく使う方が、肌にもよく、かゆみ予防にも◎」
【H】よい睡眠は体温を下げてから
正解…×
体が熱い=興奮状態。そのままでは寝付けず、体温がある程度下がった状態がよい眠りを誘う。40℃で10分入浴の場合は、だいたい90分後くらいに眠くなり、体は就寝態勢に。
【I】靴下は冷えの大敵
正解…×
赤ちゃんが眠くなると手足が熱くなるように、一旦、熱くなった手足から熱を放散することで、スムーズな眠りにつける。靴下を履いてしまうと熱が体内にこもり、冷えの悪循環に。どうしても冷えが気になる時はレッグウオーマーで足先以外を温めよう。
【J】湿度は50~60%が乾燥対策に最適
正解…○
せっかく入浴で体が潤っても、部屋が乾いていては元も子もない。ウイルス感染予防のためにも高湿度を保とう。
「加湿器には水道水を入れること。ミネラルウオーターは、塩素処理がされていないため、カビや雑菌の繁殖につながるので絶対に使用は避けましょう」
※女性セブン2020年1月30日号