正しいウイルス感染予防対策|名医が実践するインフルエンザにならない習慣、常識・非常識
世界的に感染拡大が懸念され、大きなニュースとなっている新型コロナウイルス。その陰に隠れてしまった感もあるが、インフルエンザの流行もピークを迎えています。無事に春を迎えるために、今大切なのが日々の予防対策や習慣を見直すこと! そこで、まずはあなたのしている対策を下の「ウイルス感染」をチェックリストで確認してみましょう。その対策が正しいかどうかを、専門家がズバリ答えます。
正しいウイルス感染対策をチェック
■あなたが正しいと思うorしているウイルス感染対策はどれ?
かぜ対策の基本といえば、うがい、手洗い、マスクなどありますが、慣れ親しんだモノに限って、案外、誤ったやり方で行っている可能性が…。
それぞれの項目の最後に○か×を答えてください。
【1】電車のつり革を触った後は手洗いよりアルコール消毒がよい
【2】毎日うがい薬でうがいをする
【3】くしゃみをする時は、口を手のひらで押さえる
【4】マスクは使い捨てが鉄則。1日1回は交換する
【5】背中などにカイロを貼って温めると免疫力が上がる
【6】こまめな歯磨きはインフルエンザ予防にもなる
【7】市販のかぜ薬はひき始めにのむと治りが早い
【8】「かぜかな?」と思ったら安静がいちばん
【9】かぜをひいた時は、入浴を控えるのが常識
【10】かぜ予防にビタミンCを積極的に摂る
ウイルス感染対策編 回答と解説
マスクやうがいを徹底していてもかかってしまう、かぜやインフルエンザ。30年間病気知らずで患者と接する呼吸器内科の専門医、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは「体調管理がかぜ予防につながる」と、話す。
「正しい手洗いやうがいなどでの予防に加え、たとえば睡眠時間。6時間を切るとかぜをひく率が4,2倍高まるというデータがあります。体調を整えるという点で、私は朝起きたらタオルなどを2分間強く握り、1分間休憩してもう1回という運動で血圧を下げています」(大谷さん・以下同)
この時期、注意が必要なインフルエンザは、予防に加え、ワクチン接種が不可欠だ。
「インフルエンザ対策でのおすすめは緑茶。緑茶に含まれるカテキンがインフルエンザウイルスに有効という調査結果があるので、私は診察の合間にこまめに飲んでいます」
【1】予防のポイントは手を汚さないこと!
正解…○
さまざまなモノに触れた“手”で顔を触ることで、ウイルスは体内に侵入する。
「金属やプラスチックなどに付着したインフルエンザウイルスは1~2日生存するというデータもあります。石けんなどで30秒間手洗いするより、消毒用アルコール(ジェルタイプの場合、15秒間すり込む)の方が感染予防の精度は高い。抗菌つり革なども、菌がつきにくいだけで滅菌・殺ウイルスにはならないので消毒が必要です」(大谷さん・以下同)。
【2】予防だけなら水うがいでOK
正解…△
殺菌作用のあるうがい薬は有益な菌まで殺してしまうため、かぜをひく前なら水うがいで充分だ。
「のどうがいの前に、口内をゆすいでウイルスを流す“口うがい”も忘れずに」。
さらに、大谷さんが常に飲んでいるという緑茶でうがいを推奨している地域もあるが、「ウイルスは胃酸で死んでしまうので、飲んで流し込んでしまえば、うがいより効果的ですよ」
【3】くしゃみは手のひら以外で押さえる
正解…×
手指を汚さないのが予防の鉄則。ひじや袖の内側、ティッシュペーパーで口を覆うことを厚生労働省も推奨している。
「米国では子供の頃からひじで押さえる方法を教わります」。
【4】マスクの表面は菌だらけ…
正解…△
時間が経つほどウイルスで汚れていくマスク。調査(*1)によると「1日1回替える」が最多だが、使い回しはウイルスをまき散らすだけ。大谷さんは診察以外でも1日4回以上は替えているそうだが、流行期間だけでも“外したら替える”が正解。ウイルスがべったりついたフィルター面に触れない、大谷さん直伝のマスクの外し方(片ヒモだけに触れて外す)も参考に。
(*1) 製薬会社の『エーザイ』による「マスクに関する意識・実態調査」。
【5】カイロで体温は上がらない
正解…×
一時期、「体温が1℃上がると免疫力が3割上がる」という説が広がったがこれは間違い。
「医学的な根拠はありません。恒温動物の人間はそうそう体温が変化するものでなく、カイロでは表面温度が上がる程度。ただ“温かくて気持ちいい”という心理的メリットはありますね。かぜ予防の観点で温めるといいのは鼻。鼻かぜを起こすライノウイルスが37℃以上だと増殖しないので、マフラーで鼻を覆えば効果的でしょう」。
【6】歯磨きはインフルエンザ対策にも有効
正解…○
「口の中の細菌から出るたんぱく質がインフルエンザウイルスの増殖を促すため、1日3回以上の歯磨きでウイルスをブロックすれば、発症が抑えられたという医学的データがあります」
【7】かぜ薬は対症療法
正解…△
かぜ薬はつらい症状を軽くするもの。
「ウイルスは殺せないので、ひき始めにのんでもかぜが治るわけではありません。よって、かぜ薬をのまないという選択も有りです。むしろ、自然治癒の方が、治りが早い場合もありますよ」
【8】軽めの運動は免疫力UP→かぜ予防に
正解…×
かぜ予防には、まず免疫力を上げること。あえてウオーキングやストレッチなど軽い運動をするのがおすすめだ。
「欧米では、サウナに入るという人も多い。私は普段30分ほどプールで泳ぐのですが、かぜ気味の時は5分くらい軽く泳ぐようにしています」
【9】症状がひどくなければ、入浴は衛生的に○
正解…△
発熱して苦しい場合を除き、熱すぎない湯で数分入浴するのは、ウイルスを洗い流し、体を清潔にする。シャワーのみでもOKだ。
【10】かぜ予防にはビタミンDが効く
正解…×
ビタミンCはかぜに効くとよくいわれるが、実は、それを証明するデータはまだないのが現実だ。
「一方で、ビタミンDがかぜなどのウイルス予防に効果ありという科学的根拠は出ています。みかんを食べるよりも、きのこ類や青魚を積極的に摂り、1日15分程度の日光浴をする方がかぜの予防にはおすすめです」
【豆知識】お酒をよく飲む人はかぜをひきにくいって本当?
イギリスやスペイン、日本の研究機関での調査で「毎日お酒をほどほどに飲む人は、かぜをひきにくい」という結果が出ている。原因は不明だが、ストレスが解消し、鼻の温度が上がってライノウイルスが増殖しづらくなるなどの理由が考えられている。ただ、飲みすぎると重大な疾病を起こすリスクもあることをお忘れなく。
教えてくれたのは
大谷義夫さん/池袋大谷クリニック・院長。呼吸器内科の専門家としてテレビでも活躍中。近著に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』(日経BP)。
※女性セブン2020年1月30日号
●インフルエンザ、ノロウイルス、風邪…冬の病気に打ち克つ食品ランキング15