年始の挨拶・訪問マナー|おせちの食べ方、お年玉の相場、訪問時間、お年賀の渡し方…
年始は親戚の集まりなど、他家にうかがう機会が増えるもの。でも、ちょっと待って! その訪問マナー、本当に合っていますか? 今回は、今さら人に聞けない年始の訪問マナーを詳しく紹介します。
年始の訪問は1月2日以降に
●訪問日時を聞いてからうかがうこと
年始のあいさつで訪問するなら、1月2日以降に。最近は元日を家族とくつろぐ家庭が多いからだ。また、訪問前に連絡を入れてから行くこと。
「一昔前までは、アポイントメントを取ってから訪ねるのは、相手にお茶やお菓子の準備をさせてしまうなど、気を使わせてしまうため、逆にマナー違反でした。しかし最近は、1月1日から外出されるかたも多いため、不在で行き違いにならないよう、約束をしてからうかがうのが主流になっています」
現在でも、年配のかたで、連絡もなく突然来訪してくるケースがある。それをマナー違反と捉える人もいるようだが、かつての常識を踏まえての行動なら、逆に気を使っていることになる。
訪問日時については、「いつでもどうぞ」と言われても、昼食と夕食時は避けよう。あいさつは、お年賀(手土産)を持ってうかがう。玄関で新年のあいさつをし、お年賀を渡したら、その場でおいとまするのが基本。それでも上がるようにすすめられたら上がらせていただき、和室なら正座で、洋室なら立ったまま、お年賀を渡す。
義理の実家などに年をまたいで泊まった場合でも、元旦には居ずまいを正して、新年のあいさつをすること。お年賀やお年玉を渡すのは、あいさつの後にするのが通例だ。
●訪問時間は?
訪問は約束時間の2~3分過ぎがベスト。
「個人宅にうかがう場合、約束時間の数分前やオンタイムは避けましょう。相手はお客さまを迎えるための支度で忙しいため、最後に身支度を整えられる心の余裕が欲しいはずです」
インターホンは1回押したら、しばらく待つ。ノックは相手を焦らせるので厳禁だ。
●コートを脱ぐタイミングは?
コートは、玄関外でインターホンを鳴らす前に脱ぐ。
「外のほこりを家に持ち込まないのがマナーです」
家に上がる場合、たたんだコートやマフラーは、玄関の隅の邪魔にならないところに置かせてもらう。玄関先で失礼する場合でも、コートは脱ぐこと。
<コートのたたみ方>
【1】コートの両肩に両手を入れる。
【2】両手を合わせるようにして半分を折り、コートを裏返す。
【3】えりがあれば出し、えりの中央を親指と人差し指でつまむ。
【4】えりの手を離し、前身頃を軽く合わせて、二つ折りか三つ折りにする。
●靴の脱ぎ方は?
正面を向いたまま靴を脱いで上がったら、玄関側に向き直ってひざをつく。この時、迎えてくれた人にお尻を向けないよう、体の向きは斜めにすること。脱いだ靴を自分の方に向けてから、ほかの靴が並んでいない隅の場所に揃えて置き、スリッパを履く。スリッパを履いてからひざをついて靴の向きを変えるのはNG。スリッパが折れて、しわがついてしまう。
●食事のマナーは?
おせち料理を詰める重箱は五段が正式な数。「奇数吉偶数凶」という言葉があるように、奇数の方が偶数よりめでたいと考えられているからだ。各重箱に詰める料理にも決まりがあるので以下を参考にしてほしい。
「おせちを取り分けるのは長男の役目という家もあるので、その家の人におうかがいを立ててから取り分けましょう。一の重の前菜から順に、少量ずつ盛りつけていきます」
そのほか、やってしまいがちな食事のマナーは、下記を参考にしてほしい。
●おせち料理の詰め方
・一の重
「祝い肴」として、ごまめ、黒豆、田作り、数の子などを入れる。
・二の重
栗きんとん、かまぼこ、伊達巻きなど、いわゆる酒の肴となる「口取り肴」を入れる。
・三の重
なますなどの酢のもの、鯛やぶり、えびなどの焼きものを彩りよく入れる。
・与の重
里いもやくわい、れんこんやにんじんなど山の幸を使ったお煮しめを盛りつける。
・五の重
年神様からの福を詰める場所として空にするか、詰めきれなかった料理を入れる。
【この振る舞い、実はマナー違反!】
・渡し箸はNG
器の上に箸を置く「渡し箸」はマナー違反。箸は箸置き、あるいは割り箸の紙を折った即席箸置きに置くこと。
・わさびをしょうゆにとかさない
刺身をいただく際、わさびをしょうゆにとかすのはNG。わさびは刺身の上にのせ、刺身だけをしょうゆにつける。
・手皿は行儀悪い!
手を受け皿のようにして食べるのはマナー違反。小さめの器を受け皿にしていただくのが正解。大きな器は手に持たず、片手を添えていただく。
・逆さ箸で取り分けない
取り箸の代わりに、箸を逆さにして持ち手の方で食べ物を取り分けるのはNG。
・お椀のふたに貝殻は×
実を取り出した後の貝殻は、お椀のふたにのせず、お椀の中に戻すのが正解。ふたは最後、お椀の上に戻す。
●泊まり時のマナーは?
義理の実家などに泊まる際はエプロンを持参しよう。正月は、その家庭の慣習を教えてもらえるいい機会。うかがいを立てたうえで手伝いを。高齢者のいる家庭なら、普段掃除するには負担の大きい、高い場所や庭掃除などを手伝うとよい。
●お年玉やお年賀のマナーは?
お年賀の相場は親戚や友人・知人で1000~3000円程度。タオルや食品などがおすすめだ。すでにお歳暮を贈っている場合、お年賀は500~1000円程度の心ばかりの品を年始のあいさつ代わりに贈るとよい。
お年玉は子供などの目下の者に渡すもので、相場は左の表の通り。目上の人に金銭を渡す時は「お年賀」と書いた袋に入れて渡す。いずれも包むのは新札で、中のお札は開いた時に肖像画が見えるように三つ折りにし、上下逆にならないように入れる。
【お年玉の金額目安】
・0~3才 / 500~1000円
・4~6才(未就学児) / 1000円
・小学生低・中学年 / 1000~3000円
・小学生高学年 / 3000円
・中学生 / 5000円
・高校生 / 1万円
こんな時どうする?「おもてなしのマナーとは?」
●出迎えとあいさつ
お客さまが玄関であいさつをされたら、玄関先に並べておいたスリッパをすすめて上がってもらい、自分が前に立って客間などに案内する。コートやマフラーがあれば預かり、別室にかけておく。
部屋はあらかじめ暖めておき、たとえ上座ではなくても、部屋の中でいちばん暖かい席に座っていただく。お茶やお菓子は、すぐに運べるよう、事前に準備しておく。手土産をいただいたらお礼の言葉とともに両手で丁寧に受け取る。手土産は床に置かないこと。
●お見送り
コートなどを渡す際には、「外はお寒いので、どうかお召しになって」と玄関の中で着ていただくよう促す。自分も玄関の外に出て、来訪のお礼を述べつつ、お別れを。名残惜しむ気持ちが伝わるよう、お客さまの姿が見えなくなるまでお見送りするとよい。
●おいとまのタイミングは?
基本的には1時間から1時間半、食事を挟む場合でも2時間から2時間半くらいで、おいとまを切り出す。タイミングとしては、お茶を淹れ直してもらう時や、相手に電話がかかってくるなどで、話が中断した時。「そろそろ失礼します」などと腰を上げよう。タイミングがつかめなければ時計を見て、「もうこんな時間だったんですね。長居をしてしまいました」などと、自分から言い出すこと。
●おいとまの作法は?
コートは基本的に、玄関の外で着るものだが、相手から玄関上での着用をすすめられたら、その言葉に甘え、着てもいい。ただし、マフラーと手袋は、外で着けること。相手が一緒に玄関の外まで出てきてくれたら、お別れした後でも必ず一度、振り返ること。見送られていたら、おじぎをするだけでなく、相手を気遣って、「どうぞ、もうお入りください」などと声をかけよう。
●お礼はすべき?
お歳暮をいただいた場合、お返しの贈り物は不要だが、お礼の手紙はしたためよう。訪問時にもてなしを受けた場合も同様に、お礼の手紙を。
「封書やはがきでお礼をする場合は、お歳暮をいただいたり訪問した日から3日以内に届くように投函しましょう」
忙しい時は、メールでもかまわない。何もしないよりは、メールでもSNSでもいいので、謝意を伝えた方がいい。
こんな時どうする?「年賀状のマナーを教えて」
喪中はがきにも返信を
喪中のお便りをいただいた場合、松の内後の1月8日以降に寒中見舞いとして返信してもいいが、なるべくすぐに返事を書くのがおすすめだという。
「喪中はがきは、お知らせでもあり、あいさつでもあります。あいさつをされたら、どんな形でも返事をすることが大切です。私の場合、相手の心が和むような、それでいて派手ではない柄のはがきを選び、“お寂しい年の瀬になりますが、来年はどうぞよい年になりますように”などの一文を添えて返信しています」
『賀正』はNG
目上の人へ送る年賀状の賀詞に、「賀正」や「迎春」などの簡略した言葉は使わないのがマナー。
「目上のかたには、『謹賀新年』や『恭賀新年』という敬語表現が入った賀詞を用いましょう。賀詞の後には、添え文と日付を入れること」
『寒中見舞い』の使い方
「寒中見舞い」という言葉は年下の人や友人に使うもの。上司や先生など、目上の人には、「見舞う」のではなく「おうかがい」することから、「寒中おうかがい申し上げます」という書き方が正しい。松の内後の1月8日頃から立春の2月4日頃までは、季節のあいさつ状として使える。
※参考文献/ともに岩下宣子著『図解 日本人なら知っておきたいしきたり大全』(講談社)、『きちんと知っておきたい大人の冠婚葬祭マナー新事典』(朝日新聞出版)
教えてくれたのはこの人
マナーデザイナー岩下宣子さん/現代礼法研究所主宰。「マナーは愛、思いやり」をモットーに、研修や講演を行う。新著『図解 日本人なら知っておきたいしきたり大全』(講談社)をはじめ、著書も多数。
イラスト/ico、尾代ゆうこ
※女性セブン2020年1月2日・9日号