体臭でわかる危険な病気|「大便臭」はがん、「炊きたてのご飯」は自律神経失調症の赤信号
その昔、英国の哲学者フランシス・ベーコンは欧州に蔓延するペストを「腐ったやわらかいりんごのようなにおい」と書き記した。「ペストはにおいで感染する」と信じられ、医師たちはマスクにハーブを詰めていたという。
いつの時代も「病気のにおい」を恐れるのは人間の本能であり、健康を測るバロメーターなのだ──
家族だからこそ気づくにおい
「夫は気づいてなかったと思いますが、朝、夫がトイレで用を足したあと、私がすぐに入って必ずにおいを嗅いでいました。毎日、おしっこや便のにおいを嗅いでいると夫の便の硬さまでわかるようになっていました」
そう話すのは、元TBSアナウンサー・山本文郎さん(2014年逝去、享年79)の妻・由美子さん(53才)だ。2008年に再婚後、31才年上の文郎さんの体調を管理していた由美子さんは、夫の排便後のにおいが消えないようトイレに芳香剤は置かず、オートの洗浄機能もOFFにする徹底ぶりだった。
「『下痢っぽいな』というにおいの時は正露丸をすすめたり、夫は糖尿病を抱えていたので、おしっこのにおいが甘いと感じた日は食事の内容に注意しました」(由美子さん)
由美子さんほどではなくても、毎日、顔を合わせる家族の「におい」に、ふと違和感を覚えたことはないだろうか。
大便のようなにおいの口臭で母のがんを発見
『二人に一人がガンになる』(マイナビ新書)の著者で医療ジャーナリストの村上和巳さんは、母親の口臭の変化に気づき、がんの発見につながった。
「もともと母はケアを心がけていて、においなどなかったのですが、急に口臭が強くなった。大便のようなにおいでした。本人は気がついておらず、病院に行ってほしいと何度も説得して胃の内視鏡検査をしたところ、ステージⅡBの胃がんが見つかりました」(村上さん)
すぐに腫瘍を切除して15年ほど経つというが、村上さんの母は現在も健在だ。
汗のにおい、足の裏の悪臭、布団の加齢臭など家族の「嫌なにおい」はさまざまだが、鼻をつまんでいると、せっかくの「病気のサイン」を見逃してしまうかもしれない。