介護が始まる前に覚えておきたい頼れる制度やサービス「親も自分も安心するために」
老後の生活に介護の問題は避けられない。 要介護者の発生率は65~69才までは3%と小さいが、75~79才で12・9%、85才以上は60%を超える。 人生100年時代にお介護の金の心配を少しでも軽減するための知恵を専門家に教えてもらった。
要介護認定調査時はメモを準備
国民の介護を支える公的制度「介護保険サービス」は、「要介護認定」を受ければ、収入に応じて1~3割の自己負担で利用可能となる。
「要支援1~2」から「要介護1~5」まで7段階あり、要介護度が高まるほど使えるお金の上限も上がる。サービスの主な内容は、要介護者の自宅で掃除や食事の世話などを行う「ホームヘルプサービス」、施設に通う要介護者に食事や排せつ、リハビリなどを提供する「デイサービス」や「デイケア」といったものだ。
介護ジャーナリストの末並俊司さんが解説する。
「『要介護度認定』は、自宅などに訪れた調査員が、介護を受ける本人や家族から生活の状態を聞きとりながら行います。ところが本人は、調査員の前で“いいところ”を見せようとしがちで、身体活動に不安がある場合でも、“普通に歩けます”と答えたりする。これでは要介護度が低く認定されてしまい、使えるお金の上限が下がってしまう。家族は日頃困っていることや、不安などの要点をまとめたメモを作っておいて、本人の見えないところで調査員にメモを渡すだけでも効果大です」
→「要介護認定」のコツ|ケアマネは絶対教えてくれない【裏ワザ】
自治体独自の制度の利用も検討する
要介護度が決まると、担当ケアマネジャーがそれぞれに適した「ケアプラン」を組み立てる。
介護保険を超える部分は全額自己負担となるが、いざ介護が始まると思った以上に費用がかかり、介護保険サービスの上限額に達してしまうケースは少なくない。
「ヘルパーではなく、シルバー人材センターのかたに来てもらうのもひとつの手。自治体にもよりますが時給1200円ほどで簡単な掃除や料理をやってくれます。紙おむつの費用を助成してくれる自治体もあります」
また、自宅にバリアフリー工事が必要な場合は、介護保険サービスの利用料とは別途、工事費の9割(限度額18万円)を助成する「高齢者住宅改修費助成制度」を受けられることも覚えておきたい。
家族が会社員で、雇用保険の一般的な被保険者であれば「介護休業給付金」の検討も重要だ。通算93日までの介護休業につき、収入の7割弱が支給される。
→仕事と介護の両立を!自分らしい働き方を応援する「改正育児・介護休業法」を解説
要介護3以上は「特別養護老人ホーム」が施設入居の第一選択肢
さらに、介護が家族の手に負えなくなったら、施設への入居を検討してもいいだろう。
「原則、要介護3以上でなければ入居できませんが、ケアの内容と料金を鑑ると『特別養護老人ホーム(特養)』が第一選択肢。都市部は入居待ちになっていることが多いですが、郊外まで少し足を運べば空きのある特養も少なくない」
親も自分も安心できる介護は決して困難ではない。
→特養に早く入所する裏ワザ|判定会議で優先順位を上げる方法や狙い目
→特養に入りやすくなるポイント4つ|30万人待ちの期間を短くする方法
頼れる制度やサービス一例
・高齢者住宅改修費用助成制度(介護保険)
玄関や住宅内の手すりの取り付け、段差の解消、床材の交換など、自宅のバリヤフリー化での工事費用の9割(最大18万円まで)が負担される。要介護度の区分が上がった場合や転居した時は、再度補助金が出る。
・紙おむつ等の助成金支給
各自治体や地域の社会福祉協議会が、紙おむつの購入費用に助成金を支給。購入額の9割を負担してくれるケースが多く、寝たきりの場合などは宅配してくれる自治体もある。
・シルバー人材センター
簡単な身の回りの世話を格安で受けることができる。一般的に介護保険の身体援助が1時間約2000~3500円に対し、「シルバー人材センター」なら1時間1200円程度。
・介護休業給付金
家族の介護のために会社を休む際、延べ3回まで、通算93日を限度に雇用保険から収入の67%(最大合計99万6156円)の給付を受けられる。
・特定層改築等住宅借入金等特別控除
自宅のバリアフリー改修で住宅ローンを組んだ場合、最大12万5000円が所得税から控除される。
・3000万円の特別控除の特例
施設に入居し、不在となった自宅を3年以内に売却することで譲渡所得が3000万円まで非課税に。
教えてくれたのは
末並俊司さん /介護ジャーナリスト。両親を自宅介護した経験から、介護職員初任者研修を修了。グループホームでボランティア活動などを行う。
※初出:女性セブン