疲労、足がつる、下痢…体調不良は食べて克つ!体の奥から整える食材とレシピ
中国医学の漢方と聞くと、なんだか難しく考えてしまいがちですが、ふだん食べている食材が、立派な漢方になるのをご存じですか? どんな食材をどんな方法で、体に取り入れればいいのか? 症状に合わせて、その改善効果と簡単なおすすめレシピを紹介。薬だけに頼らず、食べて不調を解消しちゃいましょう!
この時期、かぜやダルさなど体の不調を抱えている人が多いが、
「旬の食材にはその時期に必要な気(エネルギー)が多く含まれるため、旬の食材を食べることで、その時期に起こりやすい症状を抑えることに役立ちます」
と、薬膳料理家の阪口珠未さんは説明する。
「動物や植物は自然のリズムの中で成り立っています。人間の体や臓器も各季節に対応しており、季節ごとに弱る臓器が変わるため、摂るべき食材も変わります。中国医学では、夏を『夏』と『長夏(ちょうか)』の2つに分けて考えます。夏は5月のGW頃からお盆の手前頃までをさし、血液を体中に巡らせている心臓や精神面が弱りやすい時期。また長夏はお盆頃から夏の終わりまでで、この時期は胃腸などの消化機能が落ちてきます」(阪口さん・以下同)
その弱った臓器を助けてくれるのが、旬の食材を中心とした身近な食べ物だ。
「なかでも、胃腸は全身に送る気を作る大切な臓器なので、弱ると全身の倦怠感やダルさにつながります」
体調を崩す前に、旬の食材を食べて元気を維持しよう。
疲労回復
そのほか、粘りがある野菜では、オクラも◎。刻んでスープに入れたり、ルーではなく、スパイスを使ったカレーの具材として食べればおいしく摂れる。
<豚しゃぶのタレ>
【1】モロヘイヤの葉半束を熱湯でゆで細かく刻む。
【2】5mm角に切ったきゅうり1/4本、おろしにんにく1/4かけ、だしじょうゆ・しょうゆ・レモン汁各小さじ1、輪切り唐辛子少々と【1】を混ぜる。
【3】熱湯でゆでた豚肉200gを皿に盛り、【2】をかけプチトマト4個を飾る。
足がつる
足がつる時には、漢方では血液の栄養が不足しているといわれる。 血を増やすためには、赤い食材を摂るのが望ましい。赤い食材とは文字通り見た目に赤いもので、血を増やす働きが特に強いのは動物性の食材で、レバーが挙げられる。ほかには赤身の肉やかつおなども効果的だ。
また、黒い食材も補血作用があるので、黒大豆とひじき、赤い食材のにんじんを合わせた煮物などもおすすめだ。
<レバー炒め>
【1】鶏レバー(100g)は白い脂肪部分を取り、血抜きをして下処理してから、ひと口大に切る。
【2】フライパンに油を入れ、【1】と、みじん切りにしたにんにくひとかけとしょうが(5g)を入れ、レバーにしっかり火が通るまで炒め、塩適量で味つけをすれば完成。
不眠
ストレスが続くと、心の栄養や水分である「心血」が不足してしまう。すると「眠れない」「眠れても眠りが浅い」ということが起こる。心をリラックスさせ、深く質のいい睡眠をとるために、摂取したいのが「なつめ」だ。
中国では「なつめを1日に3つ食べると老いない」といわれるほど栄養価が高い。多くの薬効がある果実だが、不眠効果に期待できるのは精神を安定させる鎮静効果、抗ストレス作用だ。
<なつめワイン漬け>
【1】好みの量のなつめを熱湯でサッと洗う。
【2】瓶になつめを入れ、かぶるか、かぶらないかくらいの赤ワインを入れる(赤ワインは安いものでOK)。
【3】【2】を冷蔵庫の中に入れ、3日ほど置いて、なつめがワインを吸ったら召し上がれ。
※夜のリラックスタイムに。
下痢
水分の摂りすぎで体内に湿気がたまったり、冷たいものを食べすぎたりして、胃腸がくたびれがちな夏に、よくみられる下痢が起こったら、はと麦がおすすめだ。はと麦は、胃腸の働きを整えて、体内の余分な水分を外に排出する作用がある。温かいはと麦をお茶で飲むほか、「ひきわりのはと麦」を白米と一緒に炊いて食べるのも◎。ちなみに、麦茶は原料の大麦が体を冷やすため、下痢の時には避けておこう。
<梅干し入りはと麦茶>
【1】市販のはと麦茶を温かいお茶にしていれる。
【2】梅干し1個を【1】に入れ、つぶしてから飲む。
※梅干しにも下痢止め効果があり、加えて殺菌効果もあるため、はと麦に加えることでより高い下痢止め効果が期待できる。
胃腸不良・食欲不振
薬味には、にらやねぎ、しょうが、みょうが、わさび、にんにく、パクチーなどがあり、肉料理や魚料理を食べる時に、これらの薬味を一緒に食べるのは消化を助けるためだ。薬味は、使い勝手がいいように、あらかじめまとめて刻んでおくといい。
傷みやすい小ねぎなどは、まとめて刻んで保存容器の底にキッチンペーパーをたたんで敷いてから入れ、その上にキッチンペーパーをかけてふたをし、冷蔵庫に入れておけば、1週間程 度保存できる。
<にらしょうゆ>
【1】にら1束を小口切りにする。
【2】【1】にしょうゆ大さじ1・1/2、酢大さじ1を加える。
【3】ごま油大さじ2、豆板醬小さじ2を弱火で熱し、香りがしたら火を止め、【2】と混ぜる。
※密閉瓶で約1週間保存可。 ゆでた麺に和えたり、豆腐にのせたりして食べよう。
体が重い・むくむ
体が重かったり、むくんだりするのは、体内に水分がたまっているため。水分代謝をよくして、体から余計な水分を排出するには、うり科の食材を積極的に摂ろう。
今の時期に、安く手に入る冬瓜を煮物やスープで食べるのも◎。むくみを取る目的で冬瓜を食べる場合、冷たくするより、温かいメニューで腹部を温める必要がある。しょうがは、お腹を温める効果とともに、皮の部分(しょうが皮)に利尿効果があるため、皮ごとすりおろして冬瓜と一緒に食べよう。
また、冬瓜を調理する際、皮はあまり厚くむかず、緑の部分は残すこと。それは、しょうがと同じく皮に近い部分ほど、利尿効果が高いからだ。そのほか、調理なしで手軽に水はけの効果が期待できるすいかは塩をかけてどうぞ。
<冬瓜のスープ>
【1】冬瓜(160g)は皮をむき、コーン(40g)やあさり殻付き(100g)と大きさをそろえ、さいの目に切る。
【2】具材がかぶるくらいのお湯を沸かし、冬瓜、コーン、砂抜きしたあさりを入れ、昆布だしまたは中華だしで味をつける。
※コーンやあさりにも利尿効果が。
多汗・ホットフラッシュ
多汗には酸味と甘味を組み合わせた酸甘(さんかん)の食べ物を摂るといい。酸味には収れん作用があるため、肌を引き締めることができ、甘味はエネルギーを作ってくれる。必要な体液が汗として出てしまった体に、酸甘を取り入れることで体液を補い、潤いを与えてくれる。
アンチエイジング効果の作用があることから、最近ではスーパーフードとしても注目されている、くこの実のような、食材自体に薬効が期待できるものと、酸甘のものを合わせるとより効果的だ。くこの実をりんご酢やレモンなどの酸味と、はちみつ(甘味)で漬けたものを冷蔵庫で保管しておけば、ドリンクやサラダにもすぐに使えて便利だ。
今の時期から酢甘のものを摂ることで、秋の肌の乾燥を防ぐことにもつながる。
<くこの実酢漬け>
【1】くこの実(80g)をざるに入れ、熱湯を回しかける。
【2】容器に【1】を入れ、水1/2カップ、はちみつ50g、バルサミコ酢またはりんご酢大さじ3を加えて混ぜる。
【3】冷蔵庫で約1時間置く。
※炭酸120ccに対し、この酢漬けを大さじ2入れて、ジュースに。
手足の冷え
冷える人は、体を温める食材を摂る必要がある。 旬の野菜で体を温めるのにおすすめなのが、かぼちゃ。煮ものにしたり、ゆでてサラダにしたり、薄く切って焼いたりするだけでも有効だ。
長ねぎの白い部分も体を温める効果があるので、スープの具材にするなどして積極的に摂ろう。 食材のほかには、シナモンやカルダモン、黒こしょうなどのスパイスも血液を巡らせて体を温めてくれる。カレーなどの料理に加えるといい。
温かいお茶に右記のスパイスを加え、インド式のお茶・チャイのようにして飲むのも手軽な摂り方だ。ただこの場合、気をつけたいのは牛乳を使わないこと。牛乳は体内に湿気がたまりやすく、むくみの原因になるので避けよう。
<かぼちゃのサラダ>
【1】かぼちゃ(120g)をひと口大に切ってやわらかくなるまでゆでる。
【2】レーズン(10g)は熱湯をかけ、湯通ししておく。
【3】【1】と【2】を合わせ、オリーブオイル、レモン果汁、塩こしょう適量で調味。
※ナッツ(10g)を砕いて加えると温める効果がアップ。
※分量は約2人分で計算。あくまでも目安です。
教えてくれた人
薬膳料理家 阪口珠未(すみ)さん/「おいしく、カラダとココロをリリースする」がテーマの漢方キッチン代表。東京・恵比寿にて薬膳スクールと薬店を主宰する。日本中医薬大学講師。日本薬科大学特命講師。http://kanpokitchen.com
イラスト/千秋まみこ
※女性セブン2019年9月5日号