更年期障害に打ち克つ最強食品18|やっぱりすごかった大豆パワー
発汗、手足のしびれ、うつ状態、イライラ…閉経前後の女性ならば多かれ少なかれ経験する更年期障害は、特に季節の変わり目にひどくなる傾向があるという。梅雨から夏本番に移りつつあるこの時期に、食べて不調を改善できる方法を徹底取材。キーワードは「腸」と「置き換え」だった!
有働アナ、石田ゆり子も!アラフィフ女性が悩む更年期障害
「この独特な疲れってあるじゃないですか、世代的に…自律神経が、ついていかない」
と女優の石田ゆり子(49才)が苦笑いすれば、アナウンサーの有働由美子(50才)は、
「立っていると地面に引っ張られるようなめまいを感じたり、汗が止まらなくなったり」
とため息をつく。著名なアラフィフ女性たちも頭を抱える更年期障害は、今や40才以上の女性の過半数が悩むとされている。庄司産婦人科勤務医の谷内麻子さんが解説する。
「更年期障害の主な症状は体がほてるホットフラッシュや倦怠感、うつ状態、頭痛などさまざまです。なかでもホットフラッシュはQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を著しく低下させるといわれています。また、これらの症状だけではなく、閉経を境に女性の骨密度は10~15%低下するというデータもある。同時に、下肢の筋肉量が減り、骨折のリスクが高まります。更年期を迎えた女性の体は大きく変化するゆえ、負担もかかりやすいのです」
いずれも病気と明確に診断しにくい「未病」と呼ばれる状態だが複数の症状が合わさるとつらいうえ、特効薬もなく、ホルモン療法や生活習慣の改善などで症状を軽減しながらじっくりつきあうしかないのが現状だ。
管理栄養士の伊達友美さんは、
「症状を少しでも和らげるためにはバランスの取れた食事が大事」だと語る。
「ただでさえ不安定な更年期の体で栄養が偏ったり不足したりすると不調に直結します。特に不足しがちな栄養素をしっかりプラスすることが、症状を軽減するうえで非常に重要なのです」
それでは具体的に、どんな食品をどう摂れば効果的なのか。医師や栄養士ら専門家に答えを聞いた。
更年期障害に効く食品ランキング
以下、26人の「食と健康のプロ」に「更年期障害に効く食べ物」を挙げてもらい、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として集計。5点以上を獲得した食品を掲載した。
赤澤純代さん(女性疾患専門医/金沢医科大学准教授)、磯村優貴恵さん(管理栄養士)、宇江佐りえさん(更年期ナビゲーター・エイジングスタイリスト)、小倉朋子さん(トータルフードプロデューサー)、金子あきこさん(管理栄養士)、片村優美さん(管理栄養士)、工藤孝文さん(医師/工藤内科副院長)、左藤桂子さん(医師/肥満外来専門医)、柴亜伊子さん(医師/あいこ皮フ科クリニック院長)、関口由紀さん(医師/女性医療クリニックLUNAグループ理事長)、伊達友美さん(管理栄養士/ダイエットカウンセラー)、舘野真知子さん(管理栄養士)、谷内麻子さん(庄司産婦人科勤務医)、高尾美穂さん(医師/イーク表参道副院長)、田中優子さん(医師/田中医院院長)中沢るみさん(管理栄養士)、南雲吉則さん(医師/ナグモクリニック院長)、浜本千恵さん(管理栄養士)、藤岡智子さん(フードライター/栄養士)、堀知佐子さん(管理栄養士)、細川モモさん(予防医療コンサルタント)、堀江昭佳さん(漢方薬剤師)、真野わかさん(腸セラピスト)、増田美加さん(医療ジャーナリスト)、前田あきこさん(管理栄養士/女性ライフクリニック銀座・新宿)、善方裕美さん(医師/よしかた産婦人科)
●1位 納豆 50点
「加齢に伴いエストロゲンというホルモンが減少することが、更年期障害の原因に。大豆イソフラボンはエストロゲンに似た働きをしてくれる」(中沢さん)
「納豆にはエストロゲンだけでなく、食物繊維も多く含まれているため、便秘解消や美肌効果もある」(舘野さん)
「ナットウキナーゼには血流改善効果が期待できるため、更年期障害の症状の1つである冷え性にいいといえる」(赤澤さん)
「大豆イソフラボンに加え、カルシウム、カルシウムの吸収を手助けするビタミンKも豊富に含まれ、骨粗しょう症予防にもおすすめ」(左藤さん)
●2位 豆乳 20点
「原料の大豆に含まれるアミノ酸は、血液や血管を作るもとになり血流を改善するサポニンや、ビタミンE、ビタミンDなど豊富な栄養素を含む。大豆食品の中でも飲み物として手軽に摂りやすく、水分も補給できる豆乳がいい」(伊達さん)
「エストロゲンが減少すると悪玉コレステロール値が上昇しやすくなるといわれていますが、豆乳にはコレステロール値を下げる働きも。牛乳と置き換えをすすめます」(中沢さん)
「イソフラボンには更年期の主な症状を軽くする効果が期待されている」(片村さん)。
●3位 豆腐 15点
「実は豆腐はカルシウムも豊富。更年期の女性は骨粗しょう症になりやすいともいわれているため、積極的に食べてほしい。絹豆腐と木綿豆腐を比べると、木綿豆腐の方が含まれているカルシウムが多いのでおすすめです」(中沢さん)
「大豆の成分が体にいいのはもちろん、にがりにはミネラルもふんだんに含まれている」(赤澤さん) 「これからの夏バテで食欲が低下する季節に冷奴はうってつけ」(谷内さん)
●3位 大豆全般 15点
「大豆製品は加工品も合わせると種類がかなり多い。飽きずに毎日食べ続けられるのもポイントです」(磯村さん)
「大豆イソフラボンは、更年期障害の症状そのものはもちろん骨や筋肉、皮膚へのいい効果も確認されています」(増田さん)
「女性ホルモンに類似した働きをするのは大豆イソフラボンが特定の腸内細菌によって変化したエクオールという物質。摂取量が増えるほど閉経が遅くなるといわれています」(善方さん)
「ホットフラッシュなど更年期の代表的な症状にはやはり大豆がいい」(小倉さん)
●5位 レバー 13点
「女性が不足しがちになる鉄分はもちろん、イライラや肌の荒れを防いでくれるビタミンB1やB2も多く含まれている」(田中さん)
「更年期障害は鉄分の不足が原因であることも多く、それを補うと症状が緩和されるケースはよくあります。鉄分が多く低カロリーのレバーはどんどん食べてほしい」(柴さん)
●6位 牡蠣(かき) 11点
「牡蠣に含まれる亜鉛は女性ホルモンのエストロゲン値に影響する血糖値を調節する効果を持つ栄養素。積極的に摂りたい」(細川さん)
「亜鉛が欠乏すると更年期障害の代表的な症状であるうつ状態や性欲減退といった不調を引き起こす可能性が高まります」(南雲さん)
「数ある食品の中で亜鉛の含有率がとにかく高い」(堀さん)
●6位 ヨーグルト 11点
「骨量減少が進む更年期の女性にとってカルシウム源として欠かせない。ストレスを和らげ、自律神経の働きを維持するビタミンB1も豊富」(工藤さん)
「更年期症状には粘膜の乾燥があります。唾液が出づらく食欲のわかない時には、食前にヨーグルトを二口含むと、酸味と水分が唾液の分泌を促してくれるうえ、たんぱく質が胃を動かして冷えた体を温めます」(前田さん)
●8位 アーモンド 10点
「カルシウムとともに骨を形成してくれるマグネシウムが豊富。刻んでサラダに入れるのもいいです」(金子さん)
「ナッツ類の中でもアーモンドには食物繊維、カルシウム、マグネシウムなど更年期に起こる不快な症状を軽減してくれる栄養素が特に多く入っている」(舘野さん)
●8位 みそ 10点
「みそに含まれるイソフラボンは大豆製品の中でも吸収されやすい。また、発酵食品を摂ることにより腸内環境を整えれば、自律神経の働きも調整され、イライラや抑うつ状態の緩和になるといわれています」(真野さん)
「みそは薬膳の世界でも血流を増やし女性としての力を高めてくれるといわれている。朝のみそ汁は女性の健康にとてもいい」(堀江さん)
●10位 いわし 9点
「更年期女性のほとんどがビタミンD不足であり、それを補ってくれるのがいわし。ビタミンD不足はうつ、糖尿病、骨粗しょう症、アレルギー、がんのもとになるといわれている。ビタミンDは肝臓に多く含まれているので、頭から食べられるものがおすすめです」(南雲さん)
●11位 えごま油 8点
「えごま油に多く含まれるα‐リノレン酸は、女性ホルモンの材料になるが、体内では合成することができない必須脂肪酸であるため、毎日必ず食事から補給する必要がある」(伊達さん)
●11位 アボカド 8点
「栄養価が高く抗酸化作用がある。脂質、食物繊維が多く糖質は少ないので時間がない朝食にもぜひ摂ってほしい」(宇江佐さん)
●13位 きな粉 6点
「きな粉は大豆を丸ごと使っているためとにかく栄養が豊富。ただし、脂質が多くカロリーも高めなので、1日大さじ2杯程度を目安に摂取するといい」(中沢さん)
●13位 卵 6点
「卵はたんぱく源として知られている食材ですが、卵黄にはビタミンEも含まれます。ビタミンEは若返りのビタミンともいわれているほど抗酸化作用が高く、また巡りのよい体作りにも役立ちます」(磯村さん)
●15位 ぶり 5点
「血糖値の上昇は酸化や炎症レベルを高め、更年期症状を増長させてしまう要因となるが、ぶりに含まれるEPAやDHAは炎症を抑制してくれる」(細川さん)
●15位 枝豆 5点
「大豆に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと似た化学構造と働きをして女性の美しさや若々しさを手助けしてくれる。また、細胞にダメージを与える活性酸素の働きを抑えてくれます」(赤澤さん)
●15位 山いも 5点
「含有されるジオスゲニンは大腸がん予防や認知症予防に効果的とされており、アンチエイジングには欠かせない食品の1つです」(関口さん)
●15位 鮭 5点
「アスタキサンチンという色素には強い抗酸化作用があり、アンチエイジング効果が期待できるうえ、更年期の症状の1つである肌荒れ対策にもなる」(藤岡さん)
「大豆」と「腸内細菌」が強力タッグ
納豆、豆乳、豆腐、みそ…上位には大豆由来の食品が数多く躍り出た。漢方薬剤師の堀江昭佳さんは「大豆の力」をこう読み解く。
「大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た化学構造を持ち、同じような働きをしてくれるとされています。更年期の不調は、女性ホルモンが不足することで起きることが多い。イソフラボンが含まれる大豆製品は積極的に摂ってほしい」
数ある大豆食品の中でも、堀江さんがイチオシなのは「みそ」だという。
「実はイソフラボンには3種類あり、なかでも『ダイゼイン』という成分が腸内細菌と組み合わさって活性化されることで、初めて女性ホルモンに似た作用を発揮することができるのです。みそは、特にこのダイゼインが多く含まれます。ぜひ、朝のみそ汁を更年期対策の習慣にしてください」
大豆の威力を知り、今すぐにでもどんどん食卓に取り入れようと意気込むかたも多いと思うが、産婦人科専門医でスポーツドクターの高尾美穂さんは「大豆の力がうまく発揮されない体質もある」と、待ったをかける。
「実は、大豆に含まれるイソフラボンが女性ホルモンのエストロゲンと同じ効果を発揮するためには腸内に『エクオール産生菌』と呼ばれる腸内細菌があることが前提となります。これを持っている女性は2人に1人といわれています」
エクオール産生菌の有無は検査キットなどで調べることができ、菌を持っていなかった場合は、サプリメントなどで補うことも可能だという。
「エクオール産生菌を持っていなかったとしても、大豆は植物の良質なたんぱく質を多く含み、アンチエイジングを増進する抗酸化作用を持つ食べ物です。体にいいことには変わりません」(高尾さん)
大豆食品に続いて目立つのが、ヨーグルトやいわしなど、「骨を作る」食品だ。ナグモクリニック院長の南雲吉則さんが解説する。
「いわしに含まれるビタミンDは骨粗しょう症のリスクを下げる効果があります。ビタミンDはほかにも、うつや糖尿病などを予防する働きもある。更年期障害の患者さんを対象に行った調査では、ほとんどの人にビタミンDが足りていないという結果になった」
白米を豆腐に牛乳を豆乳に置き換える
予防医療コンサルタントの細川モモさんによれば、英国で35~69才の女性3万5000人を対象に行われた調査の結果、大豆や魚の摂取量が増えると閉経が遅くなり、糖質の摂取量が多く血糖値が高いと閉経が早くなることが明らかになったという。
「このことは当然、更年期症状にも影響すると考えられる。大豆や魚に豊富に含まれるミネラルは更年期症状の緩和に役立ちます」(細川さん)
糖質の摂取量を抑え、更年期症状に効く食品を効率よく食べるうえで、大きな助けになるのが「置き換え」テクだ。
「おすすめは、3食のうち1食でも白米の代わりに豆腐を食べること。大豆イソフラボンの摂取量を増やすと同時に、糖質摂取量を減らすことができます」(谷内さん)
実際に牛丼チェーン店の「松屋」や「すき家」でも、白米を豆腐に置き換えたメニューがすでに登場し、注目を集めている。朝、牛乳を飲んだり、調理に使ったりしている人は、それを豆乳に置き換えるのもいい。管理栄養士の中沢るみさんが解説する。
「エストロゲンが減少すると悪玉コレステロール値が上昇しやすくなるといわれていますが、豆乳にはコレステロール値を下げる働きもあります。牛乳の代わりに、冷蔵庫に豆乳を常備することをおすすめします」
サラダにかけるドレッシングを、えごま油やアマニ油に置き換えるのもいい。
「アマニ油に含まれるポリフェノールの一種のリグナンが、イソフラボン同様、エストロゲンと同じような働きをするので、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。加熱すると酸化しやすく、せっかくの効果が薄れてしまうので、サラダに和えて食べるのがおすすめです」(管理栄養士の浜本千恵さん)
置き換えに加えて、「バランス」も意識してほしい。伊達さんが言う。
「更年期対策のための食事は“チーム戦”。たんぱく質とビタミンD・E、体を冷やさないように、血糖値を上げるためには、少量の糖質も必要です。それに加えて大豆イソフラボンも摂取できれば完璧です」
身近な食品の摂取バランスで、あなた自身のホルモンバランスを整えられることを覚えておいてほしい。
※女性セブン2019年7月18日号