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私ってモンスター患者?事例で学ぶ医師との付き合い方

 病気の時にしか接することのないドクターとうまく意思の疎通ができず、不安や不満を抱えてしまう場面が増えている。

 具合の悪さや不安な上、慣れない医療用語に戸惑い、聞きたいことが聞けずもんもんとしてしまう人が多いのだ。いざその時に困らないためのコミュ二ケーション術を、事例をもとに専門家に聞きました。

【回答者】
●大野智さん/医師、大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座准教授。患者と関係をよりよくするための講演も行う。
●増田美加さん/女性医療ジャーナリスト。自らの乳がんになった体験から、患者の立場に立った医療情報について取材、執筆を行う。
●山口育子さん/認定NPO法人『ささえあい医療人権センターCOML(コムル)』理事長。多くの患者からの電話相談を受けている。
●豊田剛一郎さん/東京大学医学部卒業後、日米で脳外科医として勤務。現在、オンライン医療事典などの運営を行う『メドレー』の代表取締医師

 * * *

医学の進歩で、医師の説明が理解できない

 以前に比べて医師が患者を傷つけるような言葉をかけるドクターハラスメントは減っていると、5万以上の患者の相談に応えてきた『COML』理事長の山口育子さんは言う。

「患者が医師に不満を抱くのは、説明不足が圧倒的です。“手術後にこんな合併症が起こるとは聞いていなかった”“副作用があることを説明されていなかった”などの相談も多く受けるのですが、実際に説明を受けたかどうかを確認すると、皆さん、治療前に30分~1時間の説明を受けたと言うんです。説明されても理解できていない人も多いように感じています」

 なぜ、理解できないのか? その背景の1つに、医学の進歩があげられるという。

「検査1つとっても、以前はレントゲンくらいしかなかったのが、今ではMRI、CT、エコー、内視鏡などがあり、病気も遺伝子レベルでわかるようになりました。すると、説明されても専門的すぎて理解できなくて“聞いていなかった”となるのです」(山口さん)

遠慮せずに不安や疑問は聞く

 ただ、説明が難しいからとすべてを医師のせいにするのではなく、患者も理解するための努力が必要と、脳外科医の豊田剛一郎さんは言う。

「患者からすると“忙しい先生に、同じことを何度も聞くのは申し訳ない”と、遠慮しがちになるですが、時間に追われている医師には、患者の不安を先回りしてすべて話す余裕がない場合も多いのです。不安に思うことや疑問は思い切って聞いた方が、お互いの理解も深まりますし、安心できますよ」

 ではどうすればいいのか? 具体的な事例をもとに、上記4人に対処法を聞きました。

事例1:声を荒げた私って、モンスター患者?

患者:「私ってモンスター患者ですか?」
医師:「多少のことではモンスター患者にはなりません」

A子さん:生理が止まって、婦人科を受診したら、男性医師に更年期障害の疑いがあると言われて動揺し、「まだ私、40代ですよ! そんなはずないし!」と声を荒らげてしまい、その後も不機嫌な態度に…。こんなに態度が悪い私って、モンスター患者でしょうか?(48才・パート)

大野智さん:モンスター患者というのは医師や看護師など医療従事者や病院職員などに対して、自己中心的で理不尽な要求を繰り返したり、医療現場でモラルに欠けた行動をとる人のこと。動揺して声を荒らげただけでモンスター患者と位置づけることはありません。ただし、暴力を振るったり、暴言を吐いて他の患者に迷惑をかけたり、診療を妨害するのは明らかに困った行為。ひどい時は警察沙汰になることもあるんですよ。
      *
 次回の診察時に素直に謝り、理由やその時の気持ちを伝えれば、医師も理解し、再度説明してくれることも。

事例2:紹介状なしに大学病院は受診できる?

患者:「大学病院で診てもらうのに紹介状がありません」
医者:「紹介状がない場合は追加料金が発生します」

Sさん:胃もたれがひどく胃がんだったらと不安に。できれば優秀な先生がたくさんいそうな大学病院で精密検査を受けたいのですが、紹介状を書いてもらえる医師もいないし、どうすればいいでしょう?(39才・パート)

大野さん:現在、医療が円滑に進むように、大学や国立など大病院と中小病院、診療所などが連携。風邪や下痢、軽いけがなどは中小病院、診療所が窓口となって診療し、高度な専門医療が必要となった場合、それに応じた医療機関に紹介するシステムになっています。

 初診で紹介状を持たずに大学病院を受診する人が多くなると、病院側もスタッフの負担が大きくなり、医療の機能が充分に果たせなくなります。それを解消するためにも、現在は、紹介状がない場合は、診察料の他に特別料金(5000円以上・歯科の場合は3000円以上)がかかります。

 まず診療所や中小病院で受診してから、必要があれば紹介状を書いてもらうといいでしょう。
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 初診で大学病院に行くと、待ち時間が長くなることもある。普段、かかっている病院があれば、そこの医師の診察を受け、紹介状を書いてもらえるか相談を。

事例3:医師を指名するのはわがまま?

患者:「婦人科で、女性医師を指名するのはわがまま?」
医者:「わがままではありませんが、希望に添えない場合もあります」

C絵さん:外科で検査を受けたら、子宮系の病気の疑いがあり、同じ病院内の婦人科の診察を勧められました。女性医師に診てもらいたいのですが、わがままでしょうか?(32才・会社員)

豊田さん:婦人科系の診察で女性医師に担当してほしい場合は、最初に伝えた方がいいですね。女性医師がいる場合は対応してくれることもあります。ただし、緊急の場合など、常に女性医師がいるとかは限らないので、すべて希望がかなうとは言い切れません。
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 どうしても女性医師がいい場合は、インターネットなどで女性医師がいる病院を探してみよう。

※女性セブン2017年12月21日号

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