100才97才90才88才の「快速四兄弟」!その痛快素顔を直撃
「快速四兄弟に会いたい」と記者が鯖江市を訪ねると、4人は冒頭の風のような走りで歓迎してくれた。
それぞれに個性的な4兄弟の素顔
快速四兄弟は、それぞれに個性的だ。ワイシャツに白とブルーのネクタイを合わせて取材場所に現れたのは長男の大森良一さん。ネクタイは今でも20本は持っているという“オシャジイ”だ。
良一さんは100才になっても裸眼で、補聴器も使わない。50才の時に健康診断でがんが疑われたことで“好きなことをやろう”と通い始めた社交ダンスがいちばんの趣味。地元の公民館で月に2回、70~90代の生徒にダンスを教えるほどの腕前だ。半世紀のキャリアだけにジルバ、マンボからタンゴ、ワルツまで何でもござれ。
3才下の次男の大森栄一さんは、兄弟みんなが「優しい性格」と口を揃える穏やかな人物。体力作りに余念がなく、毎日40分のウオーキングと100回もの腕立て伏せを欠かさない。一昨年の全日本マスターズ陸上競技選手権大会では、95~100才クラスの砲丸投げで5m20cmの日本記録を樹立した。
四男の白崎栄さんは、自他ともに認める負けず嫌いで、年の離れた兄たちに対しても思ったことをパッパと口にする。
だが、病歴も多く、胃の4分の3を切除して心臓にはペースメーカーが入っているが、健康状態は良好で、90才にして現役の水道配管工として働いている。15年前に始めたマジックが趣味で、地域の高齢者施設で披露することもある。
五男の大森良作さんは長年、鯖江市伝統の漆器作りに携わり、自身の工房で若い世代の指導にあたっている。その傍らで、鯖江市伝統の『やんしき踊り』の指導員も務める多才ぶり。末っ子だけに88才になっても、3人の兄から「かわいい、かわいい」とかわいがられている。
もともとは五兄弟だったが、三男の敏治さんは60才の時に病気で亡くなった。四兄弟にはそのことが、もうずいぶん前のようにも、つい最近のようにも思える。
1人も欠けてはあかんで、がんばろうな
普段はそれぞれの家族と暮らす四兄弟だが、月に1度は集まって食事をする。取材当日の集合場所は行きつけの定食屋だ。焼肉丼セット、親子丼セット、うどんと各々が好きなものを注文して、好き勝手に食べながらおしゃべりすることが何より楽しみ。
「昔からよく集まっているんですか」と記者が問いかけると、思い思いにしゃべる。
「友達も近所の人もみな死んでしもうてるわけや。河和田に同級生が15人いたけどもう誰もいない」(栄さん)
「ぼくもそうや。昔は兄弟がそんなに集まることはなかったけど、今は2人か3人揃ったら“残りも呼ぼうか”となるんや」(良作さん)
四兄弟の合言葉は、「1人も欠けてはあかんで、がんばろうな」。
「そのために食べるだけ食べて、飲むだけ飲む。でもみんな酒は一滴も飲まん。若い時は飲んでいたけど、今は『飲みに行くよりカラオケ行くか』となる。でも私は行かんよ。下手くそだから」
口達者な栄さんがそう言うと一同がドッと笑う。みんな年齢からは考えられないほど食欲旺盛でもりもりと食が進むなか、胃を切除している栄さんは、食膳の半分を兄の栄一さんにそっと渡す。
「無理したらあかんからね。その分、私がもらっています」
そう笑う栄一さんは、兄弟たちの言葉通りの優しい人だ。食後は栄さんご自慢のマジックタイム。記者に「見たいの? じゃあ初めてのやつをするね」と満面の笑みで告げる栄さんを、兄弟たちが目を細めて見つめる。
今どきめずらしいと思えるくらい、仲睦まじく行動を共にする4兄弟だった。
※女性セブン2017年9月28日号
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