認知症最初の兆候を測る 権威ある国際会議が発表した「要注意行動」チェックリスト
「もの忘れがひどくなったら認知症を疑え」と言われてきたが、「ひどくなる最初」はどんな言動なのか。認知症の“超初期段階”の兆候を示す新しい指標が、権威ある国際会議で発表されたのだ。
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「面倒くさい」と言う、下ネタを話したくなるほか 「認知症が始まる瞬間」の言動
都内在住の藤木文子さん(仮名・69)が認知症を発症する前の夫(74)の“変化”についてこう話す。
「これまで食事にはうるさかった主人が4年ほど前から何を出しても“うん、まあ”と言うだけになった。好物の煮物や旬の魚を料理して“どう?”と訊ねても“別に”と生返事ばかり。食事量も減っていたけど、“年をとって食へのこだわりも減ったのかな”と深く考えていませんでした」
そんな状態が3年ほど続いた後の昨夏、夫は初期の認知症と診断された。
昨年、世界80か国以上の研究者らで構成される「国際アルツハイマー病協会会議」が認知症の“最初の兆候”を測る新指標を発表した。日常の言動や情緒面の変化を表わした「軽度行動障害(MBI)」と呼ばれるものだ。その中には「食べ物を美味しく感じられない」や、「食事量の減少」も含まれている。
東京医科歯科大学医学部附属病院・特任教授で認知症専門医の朝田隆氏が解説する。 「これまで認知症の初期段階を示すものとして記憶力などの低下を測る『軽度認知障害(MCI)』ばかりに注目が集まっていました。しかし認知症の初期では認知機能に変化が見られる前に、心理的社会障害という精神的な変化が生じることが分かっています。今回のMBIは、認知機能以外の情緒面などの変化から認知症の兆しを捉える新しい物差しといえます」