「元気な高齢者に共通する5つの食習慣」栄養相談でよく聞かれる“何を食べれば健康になる?”の意外な答え【管理栄養士解説】
管理栄養士の川鍋仁美さんが高齢者から栄養相談を受けていると、「何を食べたら健康になれますか?」「おすすめの健康食品はありますか?」と聞かれることが多いという。長年の健康相談から導き出された、元気な高齢者の5つの食習慣とは?
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
「健康には何を食べればいいのか」問題
デイサービスの栄養相談では、利用者さんの嚥下機能や健康状態のほか、デイサービスで昼食をどのくらい食べられているか様子を確認し、普段の食生活についてお話を伺っています。
利用者さんは70~80代のかたが中心で、健康や栄養状態に問題を抱えているかたもいれば、お元気なかたもいらっしゃいます。元気で行動的な人を見ると「あの人は何を食べているのか」「何か秘訣があるの?」と気になるかたも多いようです。元気に通所され、食事や運動を楽しんでいる利用者さんたちたちには、ある共通の習慣があることに気がつきました。
元気な人の食習慣5つのポイント
長年、高齢者の栄養相談を受けてきて感じた、元気な高齢者のかたが実践している食習慣の5つのポイントをご紹介します。
【1】毎日たんぱく質を摂っている
高齢者にとって、低栄養の予防や筋力の維持のために大切な「たんぱく質」。元気なかたたちは、みなさん毎食たんぱく質を何かしら摂っているのです。主菜として肉や魚をどーんと食べているというよりは、「少量をこまめに摂り入れる」のが上手です。
元気な高齢者に聞いた「たんぱく質」豊富な食生活
・朝食に卵を食べている(ゆで卵やスクランブルエッグなど)
・毎朝牛乳や豆乳を飲んでいる
・みそ汁に豆腐や卵
・納豆を毎日食べている
・間食にヨーグルトやチーズを食べている など
たんぱく質は肉や魚に豊富ですが、「肉は硬いから食べたくない」「食が細くなってそんなに量を食べられない」とお話されるかたも多いのですが、必ずしもメインのおかずで摂る必要はないのです。
また、健康意識が高いかたの中には、「お肉は脂分が多いから野菜中心にしている」とお話されるかたもいらっしゃるのですが、ただでさえ高齢になると食事量自体が減ってしまうため、脂質の摂りすぎよりも、たんぱく質不足のほうが心配です。
少ない量でもしっかりたんぱく質が摂れる食材を選び、毎日手軽に続けられることが大切です。食事のサポートをするご家族も「しっかり食べてもらいたい」と頑張りすぎず、ちょい足し感覚で、たんぱく質を摂って欲しいですね。
毎日続けたい「たんぱく質」ちょい足し
・卵を1品足す(卵かけご飯など簡単なものでOK)
・豆腐を加える
・牛乳や豆乳を1日1杯
・ヨーグルトやチーズを常備しておく など
【2】パンよりも「ご飯」派が多い
栄養相談を受けていると、「食欲がないからパンだけで済ませている」「朝・昼は菓子パンがほとんど」というかたも多いのですが、元気な高齢者ほど「ご飯」をしっかりと食べている印象です。
ご飯を主食にすることで、みそ汁や卵、納豆などとも合わせやすく、自然と食事のバランスが整いやすくなります。一方、パンだけ、麺だけなど単品で済ませる食事が増えてしまうと、栄養面での偏りも大きくなりやすく、たんぱく質不足も起こりがちです。
パン食にしても、菓子パンではなく、食パンに卵やツナなどのたんぱく質を加えて食べるのがおすすめです。麺の場合も麺だけにならないように、野菜や肉・卵をプラスしましょう。
【3】噛めるものを適度に食べている
高齢になると、「誤嚥が危ないから」「やわらかいほうが食べやすいから」という理由から、食事がやわらかいものばかりになってしまう傾向があります。
もちろん、噛む・飲みこむ機能に不安があるときは、食事のやわらかさの調整は必要ですが、必要以上にやわらかくしてしまうのは要注意です。私が注目している元気な利用者さんたちは、食事でよく噛めているかたが多いんです。
ほどよく噛む必要がある食材
・キノコ類
・れんこんやごぼうなど歯ごたえのある野菜
・ほどよいかたさのご飯(お粥状にしすぎない)
・ほどよいかたさの漬物 など
噛む必要がある食材や料理を適度に取り入れるのがポイントです。噛む動作は、唾液を出して消化吸収を助け、口周りの筋肉を使うので嚥下機能の維持にもつながります。口周りの機能低下により低栄養を招く「オーラルフレイル」の予防にも効果的です。
「無理してでもかたいものを食べる」という意味ではなく、安全に食べられる範囲で噛む機会を維持していくことで体全体の健康につながっていきます。
高齢だからと、すべての食事をやわらかくする前に、野菜を少し大きめに切ったり、食感を残したり、調理の工夫をしてみるのもよいでしょう。しっかり噛めることは、健康な口腔状態であるということです。定期的に歯科受診を受けてケアができているかたは、自分の歯に自信を持たれていて、元気なかたが多い印象です。
【4】水分を自然に摂れている
人が1日に必要な水分量は1.5~2リットルといわれています。活動量が低下している高齢者がこの量を飲むのは意外と難しいことです。
夏の時期は意識して水分を摂ることも多いのですが、元気な高齢者の人たちは、季節に関係なく日常的にこまめに水分を摂られています。「飲む」だけにこだわらず、食事の汁物や、水分の多い果物やゼリーなどの間食を含め、上手に水分を摂取されているのです。
「お茶の時間」が習慣化されているかたもいらっしゃいます。毎日10時や15時のおやつタイムに、お菓子は食べずに好きなお茶を飲み、ホッとひと息つく時間を設けている。毎日自然な形で水分補給できるのは理想的ですよね。
【5】好きなものを我慢しすぎない
高齢者の食事は、「血圧が気になるから塩分は控えめに」「血糖が高いから甘いものは控える」など、健康のことを考えて“制限”ばかりに意識が向きやすくなりがちです。
もちろん、そのかたの持病によっては食事制限が必要なのですが、あれもダメこれもダメと我慢の連続ではストレスがたまってしまいますよね。
デイサービスで触れ合う高齢でも元気な利用者さんたちは、食べることが好きで、楽しみにしているかたがとても多いと感じます。最近の食事の傾向を伺うと、色々なお話をしてくれます。
利用者さんに聞いた「食べる楽しみ」
・ご近所さんで集まってお茶をする時間を楽しんでいる
・大好物(お肉や鰻の話題が多い)を食べる日を楽しみにしている
・旬の野菜や季節の果物が好きでよく食べている
・家族が帰省した時だけお酒を少量飲むのが楽しみ
このように「食べる楽しみ」が習慣になっていて、食べることを楽しんでいるかたはみなさん、表情もキイキとされている印象です。
高齢になると、そもそも食欲が低下しやすく、食事量は減少します。そのため、健康のためにと制限を増やしすぎてしまうと「我慢ばかりの食事」になってしまい、食べる楽しさが減っていってしまうことも。もちろん好きなものばかりに偏ってしまうのはよくないのですが、「食べたい気持ちを大切にする」ことも高齢者の食事では大切になってきます。
少しでも健康にいいもの、質のよい栄養を摂って欲しいと願うご家族にとっては、悩ましいところですが、食べる楽しさを維持することが結果的には健康維持につながっているように感じます。
私が管理栄養士としてお話を伺ってきたお元気な高齢者たちは、「何か特別なものを食べている」わけではなく、毎日無理なく続けられて、食べることを楽しめる食習慣をお持ちのかたがたくさんいらっしゃいました。
年齢を重ねると、噛む力や飲み込む力の低下など少しずつ変化していくもの。健康のために頑張ったり我慢したりするよりも、普段の食生活における小さな積み重ねが結果として元気な心や体につながっていると思います。
毎日の食事を単なる栄養補給にせずに、楽しみながら健康を支える糧にしてほしいですね。
