「訪問ヘルパーさんが朝ゆでたそうめんを昼も夜も…」高齢者の夏の食卓に《そうめんだけ》がNGな理由とは?【管理栄養士が解説】
暑さで食欲が落ちがちな夏、そうめんだけでささっと食事を済ませる高齢者は少なくない。「ヘルパーさんが朝ゆでたそうめんを昼も夜も食べている」という人も――。デイサービスの利用者から栄養相談を受けている管理栄養士の川鍋仁美さんは、そうめん「だけ」の食事に注意を呼びかけている。夏に活躍するそうめんだが、高齢者が注意したほうがいい3つのポイントとは?
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。大学卒業後、総合病院に勤務し、介護食・嚥下食の献立作成や栄養相談に従事。現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートを行うほか、高齢者の栄養や介護食に関する記事を執筆。自身でも市販の介護食や宅配介護食を実際に試し、味や食べやすさを管理栄養士の視点で比較・検証している。介護する人もされる人も安心して食事を楽しめるよう、わかりやすく実践的な情報発信を心がけている。運営サイト「~管理栄養士がやさしく解説~いちばんやさしい介護食ガイド」(https://eiyousupport.com/)を運営。
デイサービスの利用者さんの食事「そうめんだけ…」
「今日のお昼は何を召し上がりましたか?」
「そうめん」
「…だけ?」
夏の時期、栄養相談を行っているデイサービスで利用者さんに昼食の様子を伺うと、「そうめん」と答えるかたが多いんです。普段から昼食は麺類というかたも多いのですが、夏はこの答えがぐっと増えます。
利用者さんの中には、「朝、ヘルパーさんがゆでてくれたそうめんを、お昼と夕方にも食べた」とおっしゃるかたもいらっしゃいます。また、ひとり暮らしの高齢者の場合、ヘルパーさんにそうめんをまとめてゆでてもらっているケースもあるようです。
冷たくて喉ごしのよいそうめんは、高齢者にとっても食べやすい食事です。そうめんは食欲が低下しがちな夏の心強い味方ですが、管理栄養士としては、気がかりなこともあります。
夏場のそうめんにまつわる不安要素は3つ。「保存方法」「栄養バランス」「食べ方」が挙げられます。そうめんを食べるときはこの3点を意識するだけで、安全においしく夏を乗り切ることにつながります。
「夏のそうめん」で気を付けたい3つのポイントを解説します。
【1】保存方法/朝ゆでたそうめんを夜まで食べていませんか?
そうめんは、ゆでた後の保存方法に注意が必要です。
夏は気温が高いため、ゆでたそうめんを室温に長時間置いておくと、食中毒の原因となる細菌が増えやすくなります。食品衛生の観点からは、調理したものはできるだけ早く食べることが基本です。
常温に2時間以上置くことは避け、食べきれない場合は冷蔵保存することが望ましいとされています。
火を使うことが難しいひとり暮らしの高齢者の中には、ヘルパーさんにそうめんを数食分まとめてゆでてもらっているというケースもよく聞きますます。ヘルパーさんが帰った後、自分では調理が難しいこともあり、朝ゆでたそうめんを昼や夕方にも食べるかたもいらっしゃいます。
大切なのは「その食べ方はダメ」と否定するだけではなく、少しでも安全に食べる工夫をすることです。食べきれない分はできるだけ早く冷蔵庫へ入れ、一食分ずつ清潔な保存容器に小分けにしておくと、食べる時も扱いやすく衛生的です。
冷蔵保存したからといって安心してしまうのではなく、できるだけ早めに食べ切ることを心がけましょう。
在宅介護の現場では衛生管理の「理想」をきっちり実践できないこともあるかもしれませんが、「ダメ・できない」と否定するのではなく、少しでも安全に食べられる工夫を考えてみて欲しいと思います。
【2】栄養バランス「そうめんだけ」が続くと低栄養に
そうめんは炭水化物が中心の食べ物です。のど越しも良くさっぱりしているので、食欲がない日でも食べやすく、エネルギー源として役立ちます。
しかし、そうめんだけでは筋肉を維持するために欠かせないたんぱく質や、体の調子を整えるビタミンやミネラルが不足しやすくなります。
デイサービスの利用者さんの中には、お盆を過ぎた頃から、「最近疲れやすい」「体重が少し減ってきた」というかたが増える印象があります。
高齢者の低栄養が進んでいるサインは「体重が減ること」だけではありません。「疲れやすい」「立ち上がりのスピードが遅くなる」「外出が億劫になる」といった、ちょっとした変化として現れることもあります。
こうした変化を「年齢のせいかな」と思っていたら、実は食事が影響している場合もあります。もちろん、原因はひとつではありません。しかし実際には「夏バテかな」と思っていたら、毎日の食事を伺うと「そうめんばかり」というケースが少なくないのです。
【3】食べ方「水分は摂っているから安心」ではありません
夏場は特に、熱中症対策として意識して水分補給を心がけているかたは多いでしょう。そうめんも水分がありますし、めんつゆも一緒に摂っているから水分は足りているから大丈夫と思っているかもしれません。しかし、「そうめんだけで済ませる日が続いている」「おかずはあまり食べていない」
こうした食生活が続くと、水分不足よりも「栄養不足」が心配です。とくに高齢者は、食事量が減ることで、自分では十分食べているつもりでも必要な栄養が足りていないということも多いのです。
夏場は水分補給ももちろん大切ですが、「食事として何を食べられているか」にもしっかりと目を向けてほしい時期です。
「そうめん+1品」で栄養価をアップしよう
そうめんを食べるときに大切なのは、「そうめんだけ」で終わらせないことです。以下のように、たんぱく質食材を一品プラスするだけで栄養バランスは改善できます。
・温泉卵を添える
・冷ややっこを付ける
・缶詰のツナやサバをのせる
・納豆を一緒に食べる
・カニカマをのせる
・サラダチキンをのせる
高齢者におすすめ栄養価アップ「そうめん」
上記の食品はすべてコンビニでも手に入るものです。たんぱく質豊富な鶏胸肉の「サラダチキン」はほぐしたタイプも販売されていて、料理にそのまま使えて便利です。ゆでたそうめんに、温泉卵、サラダチキンをのせ、揚げ玉としそをトッピング。お好みでめんつゆをかけて食べます。
揚げ玉を振りかけるだけでも低カロリーになりがちなそうめんの栄養価アップにつながります。
暑い日は料理をする人も大変です。無理をして何品も作る必要はありません。缶詰や豆腐、お惣菜なども上手に利用して「たんぱく質をちょい足し」しながら、続けられる方法を探してみましょう。
「夏だからしょうがない」ではなく「夏だからこそ」
夏場は健康な人でも食欲が落ちることがあります。夏場の栄養相談では、「まずは無理せずに、食べられるときに食べられるものを、ちょこちょこ食べましょう」とお話ししています。ですが、「そうめんだけ」の日が何日も続くと、知らず知らずのうちに栄養バランスが偏って徐々に体力低下につながることがあります。
夏バテで体力・気力が落ちてしまった利用者さんには、市販の栄養補助食品なども活用しながら食事内容を見直していただくと、数週間後には元気な表情を見せてくださることもあります。
食べやすいからといって「そうめんだけ」は御法度。保存方法に気を配り、たんぱく質を一品「ちょい足し」を。高齢者のかたにとって、こうした小さな積み重ねが、夏を元気に乗り切る秘訣といえます。今年の夏は、ぜひ「そうめん+1品」を意識して過ごしてみてください。
