《20代で介護を経験》ハリー杉山さん、パーキンソン病だった父親の旅立ちから4年「介護は情報戦。情報という武器があれば闘い抜ける」
情報番組のMCなどでマルチに活躍するタレント・ハリー杉山さん(41才)。最愛の父親を失ってから今年で4年、「月日が過ぎるほどに彼の魂は強まっている」。ハリーさんはそう静かに語る。まだヤングケアラーという言葉が社会に広く知られていなかった20代の若さで、父親の介護という現実に向き合ってきた。大切な人を看取った今こそ見えてきた景色とは──。ハリーさんに現在の心境を聞いた。【全3回の第1回】
愛する父親を失った喪失感
「父が亡くなって4年になりますが、喪失感はずっと抱えています。でも、その喪失感が今のぼくを動かすエネルギーになっている」
強い眼差しでこう語るのは、タレントのハリー杉山さんだ。父親は著名なイギリス人ジャーナリスト、ヘンリー・スコット・ストークスさん(享年83)。75才の時にパーキンソン病を発症し、認知症も併発。ハリーさんは20代後半から約10年間、母とともに父を支え続け、2022年4月に父を見送った。
「父が亡くなってしばらくの間は涙を流す日々でした。4年という年月を経た今でも、時折感情の波が押し寄せることはありますし、父のことを考えない日はありません。喪失感はね、あって当たり前というのかな…」
そう言ってハリーさんは、左手の指に触れた。
「これは父の結婚指輪なんですよ。父が亡くなってからぼくが受け継ぎました。この指輪をつけていると、いつも父と一緒にいるような気持ちになれるんです。ぼくは物には魂が宿ると信じています。不思議なもので日が経つごとに、魂のつながりはより強まっている、そんな風に感じています」
定期的に夢枕に立つ父親との会話
「父は定期的に夢に現れるんです。とくに何か特別なことを一緒にしているのではなく、何気ない会話をしている、シンプルな日常の夢。
家族と交わす、『おはよう』とか『ありがとう』とかごく平凡な会話って、生きているときにはありがたみなんて感じないじゃないですか。だけど夢の中でぼくは父と『今日どうだった?』『ごはん食べた?』とか、他愛もない話をしている。父が旅立った今、ああこういう何気ないやり取りが、人生における大切な時間なんだなと思うようになりました」
今でも迷ったときには心の中で父に問いかけている。
「父ならどう考えるだろう。父ならどんな選択をするだろう。そう考えることが自然になっています。それくらい、父の魂や教えがぼくの中に強く生きている。もうこの世には存在していないはずの父を強く感じられることは、ぼくにとってすごく嬉しいことなんですよね」
父の介護から学んだ「介護は情報戦」
家族の介護を経験し「もっとこうしてあげればよかった」と後悔を抱える人は少なくない。それはハリーさんも例外ではない。
「父が病気になった当初のぼくは、パーキンソン病という病気を理解できていませんでした。『運動すれば元気になる』とか、『もっと頑張れば以前の父に戻れる』と思い込み、無理に体を動かしてもらおうとしたこともありました。
ぼく自身が病気のことを正しく理解できておらず、そのせいで父に負担をかけてしまっていたこともあります。後悔していること、あの頃の自分に会って伝えるとしたら、『ハリー、君はもっと病気のこと、介護のこと、情報を仕入れておいたほうがいいよ』ってこと」
現在、ハリーさんはパーキンソン病や認知症について学び続け、メディアや講演活動などを通して積極的に発信している。
「パーキンソン病も認知症も、父親のケアをしていた時より治療の選択肢は増えています。その時々の情報を知っておくことが大切。
ただし、溢れる情報の中から、必要なものを精査しなければならない。ひとつの情報だけをうのみにせず、時には疑うことも必要だということ。こうした考え方は、父から学んだジャーナリズム精神に通じるかもしれない。
「介護は情報戦」だとハリーさんは強調する。
「介護が始まると、目の前のことで一杯いっぱいになってしまう。介護に関する知識や情報を知っているか知らないかによって、家族の負担も本人の生活も大きく変わってくると思います。制度やサービス、相談先とかね、情報という武器があれば闘い抜ける。サッカーもそうだけど戦略が必要じゃないですか、あの頃のぼくはなんの武器も持っていなかったですから。
在宅介護の真っ只中のときは、誰にも相談できない、頼れない…。絶望の渦に飲み込まれそうなことも多かった。ぼくよりも母の方がずっと疲弊していました」(第2回につづく)
◆ハリー杉山
1985年生まれ。情報番組『ノンストップ!』、F1トーク番組『F1サイドbyサイド』(ともにフジテレビ系)、『WEEKLYワールドサッカー』(BS11)、『POP OF THE WORLD』(J-WAVE)ほか、テレビ・ラジオなど数多くのメディアで活躍。イギリス人の父親を介護した経験から、近年は介護に関する取材や講演活動も精力的にこなしている。
撮影/小倉雄一郎 ヘアメイク/大嶋祥枝 取材・文/熊谷あづさ
