《ストレスだけじゃない》「目の老化」も自律神経の乱れの原因に シニア世代が自律神経を整えるために意識したい「15分入浴」「睡眠の“光コントロール”」
自律神経が乱れると、心身にさまざまな不調が現れる。大切なのは、自律神経を構成する交感神経と副交感神経がそれぞれ優位になる状態をつくること。『科学的に証明された自律神経を整える習慣』(アスコム)を上梓した順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんは、シニア層は、副交感神経が下がり過ぎないようにすることが重要と話す。自律神経を整えるために、特にシニア世代が意識すべきことについて、詳しく教えてもらった。
自律神経が乱れている状態とは
自律神経は、内臓や代謝、体温、血圧など、体の各機能をコントロールするもの。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経が強く働くと、血管が収縮して血圧が上がり、心と体が活動的になる。一方、副交感神経が優位になると、血管が緩んで血圧が下がり、リラックスした状態になる。
「心と体の状態を活発にする交感神経と、心と体を休ませる副交感神経がうまくバランスをとりながら働いているおかげで私たちの健康は保たれていますが、このバランスが崩れると心身にさまざまな不調が現れます。これが、『自律神経が乱れた状態』というわけです」(小林さん・以下同)
ストレス、生活習慣、加齢が自律神経を乱す主な原因
自律神経を乱す原因のなかでも、代表的なのが「ストレス」「不規則な生活習慣」「加齢」の3つだ。いずれも、交感神経を過剰に優位にしたり、副交感神経を低くとどめてしまったりする。誰しもが避けられない「加齢」に関しても、個人差はあるが、体力の衰えを自覚し始める30~40代頃から、副交感神経だけが急に低下する時期があるという。
「反面、交感神経はそこまで急激な低下が見られません。つまりは、副交感神経をなるべく下げないようにすれば、健康でいられるはずです」
シニアは特に睡眠をしっかりとること
加齢によってシニア層は副交感神経が低くなりやすいため、他の年代以上に、副交感神経を高める意識が必要だ。ストレスをためないようにしたり、意識的にリラックスする時間を設けたりすることでも副交感神経を高めやすくなるが、特に重要なのが、睡眠をしっかりとること。睡眠不足で夜に副交感神経が充分にあがらないと、日中に仕事をする際、過剰に交感神経が優位になってしまい、夕方や夜になってもますます副交感神経が上がらなくなり、負のスパイラルに陥ってしまうためだ。
「眠れないほど忙しい、という考え方は、つい睡眠不足を正当化してしまいます。でも、その結果自律神経が乱れれば、体の回復もままならず、脳に血流も行き届かず、結局、仕事でもよいパフォーマンスができなくなってしまうのです。睡眠は自律神経を整える基本だと考えるようにしましょう」
睡眠は「光」と「体温」がポイント
必要な睡眠時間は個人差があるが、多くの人は最低でも6~7時間だと言われている。また、睡眠時間とあわせて、規則正しく睡眠をとること自体も大切だ。このときポイントとなるのが「光」と「体温」をコントロールすること。目が明るさを感知して自律神経に指令を出すため、眠る時間には部屋を暗くし、起きる時間には部屋を明るくするとよい。特に現代は、夜でも照明やスマホなどで明るさを感じているケースが多いため、寝ると決めた時間の1~2時間前には照明を暗くしたり、テレビやスマホを避けたりと、光をさえぎるようにするようにしよう。
また、体温が下がると副交感神経が活性化しやすく、上がると交感神経が活性化しやすくなるため、寝る時間に合わせて体温が下がるようにするといい。体温のコントロールにおすすめなのが、「入浴」だ。
「遅くとも就寝の2時間くらい前までに、39~40度くらいのぬるま湯に15分くらいつかるようにしましょう。それも、肩までつかるのは最初の5分、残りは半身浴でストレッチをするくらいがベストです。リラックスして血管が拡張され、うまく睡眠モードに切り替えられます」
目の老化も原因に
ストレス、生活習慣、加齢に加えて、もう1つシニアがおさえておきたい自律神経を乱す原因がある。
それは、「目の老化」だ。老化によって、まぶたが重く感じたり、たるんで見えたりといった状態から、皮膚が視界をさえぎり見えにくくなってしまう「眼瞼下垂」と呼ばれる症状を発症することがある。このとき、目を開けるために額の筋肉を代用的に使ったり、あごを上げたりといった無理をするようになるが、この無理な顔の筋肉の動きが、自律神経の乱れの原因になってしまうことがわかってきている。
「ストレスや緊張は、そもそも自律神経を乱す大きな原因のひとつですが、まぶたの裏側にあるミュラー筋という筋肉は自律神経とつながっているため、より直接的に自律神経を乱してしまう原因になりうるのです。眼瞼下垂は誰でもなりうる病気ですが、ただ視界の問題が起こるだけでなく、自律神経にも影響が及ぶことを、あらかじめ知っておくといいでしょう」
早ければ50代で眼瞼下垂になる人もいるが、手術を行えば治療できるものだ。もし眼瞼下垂の症状がある場合は、早めに病院を受診しよう。
教えてくれた人
小林弘幸さん/順天堂大学医学部教授
こばやし・ひろゆき。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ
