《科学的研究に基づいた「やってはいけないこと」は?》世界的なベストセラー作家が提案する“憎しみ”の感情を消し去る方法 “恨みの終了日”を設定するのも有効
「新しい、よりよい手法が開発されていたのに、わたしはそれに気を留めていなかった。わたしは、医師が、自分が知っている唯一の古い時代の手術方法を勧めてきたので、彼をただ信頼したのだ。彼の名前は明かさないが、とても親切な人だ。ミスをしたのはこのわたしだ。自分の責任だ」
どうすればこんなふうに受け止められるようになるのだろう? 医師が失敗したせいで、彼は片目の視力を失った。それなのにまったく恨みを感じていないとは。
実際に、彼は恨んでいない。なぜなら、彼は自分の「鉄則」に忠実に生きているからだ。
その鉄則とは、「誰かに、あるいは、不正によって自分の人生が壊されていると考えるときには、その人生を壊しているのは自分自身だ」という考え方だ。
「憎しみ」の感情が消えないなら
これらの例では納得できず、憎しみの感情が消えないというのであれば、哲学的な考察が役に立つかもしれない。
ストア派の哲学は、世界を「変えられるもの」と「変えられないもの」に分けた。
「変えられないもの」に腹を立てるのは無意味で愚かなことと考える。そして、「変えられないこと」には過去に起きたすべてのことが含まれる。
1972年、アメリカ合衆国の政治家ジョージ・マクガヴァンは、大統領選でリチャード・ニクソンに大敗したのちに、彼の選挙活動を批判したワシントン・ポスト紙のジャーナリストたちについていくらか辛辣な発言をした。
それから3か月後、彼は発行人に次のようなメッセージを送った。
「わたしはあの暴言を後悔しています。そして、恨みは長くても3か月しか抱けないことを悟りました。
この知らせでお伝えしたいのは、今では選挙戦の恨みはすべて忘れてしまったということです。自分が誰を避けるべきか、ずっと覚えておくのは難しいことです」
恨みの「終了日」を決める
恨みは「脳の容量」を大量に消費する。恨みを完全には消すことができないのであれば、「恨みの終了日」を設定しよう。
このアドバイスに、あなたは聖書で説かれる“許しの力”を思い浮かべたかもしれない。ちなみにわたしの場合、「許す」ことはうまくできないが、単に「忘れる」ことならできる。
我が家にはそのための秘訣がある。
毎年、12月31日に、妻とわたしは、相応の理由があり腹を立ててもいい人物の名前を「小さな紙」に書いて、それを厳かに火にくべる。
そして、状況の悪化にわたしたちが貢献してしまった点を、少なくともひとつは声に出して言う。すると、煙とともに怒りも晴れる。
これはマンガーの鉄則をわずかばかり手本にしている。
著者情報
ロルフ・ドベリ(Rolf Dobelli)さん
作家、実業家。1966年、スイス生まれ。ザンクトガレン大学卒業。スイス航空の子会社数社にて最高財務責任者、最高経営責任者を歴任の後、ビジネス書籍の要約を提供するオンライン・ライブラリー「getAbstract」を設立。香港、オーストラリア、イギリスおよび、長期にわたりアメリカに滞在。科学、芸術、経済における指導的立場にある人々のためのコミュニティ「WORLD.MINDS」を創設、理事を務める。35歳から執筆活動を始め、ドイツやスイスなどの世界の有力新聞、雑誌に寄稿。著書は40以上の言語に翻訳出版され、累計発行部数は400万部を超える。著書に『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』『Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法』『Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法』『News Diet 情報があふれる世界でよりよく生きる方法』(すべてサンマーク出版)など。スイス、ベルン在住。
中村智子さん
ドイツ語翻訳者。神奈川県生まれ。主な訳書に、ロルフ・ドベリ著『Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法』、ピエール・フランク著『宇宙に上手にお願いする法』(ともにサンマーク出版)、ファービエンヌ・マイヤー、ジビュレ・ヴルフ著『どうやって美術品を守る? 保存修復の世界をのぞいてみよう』(創元社)などがある。
