「新たな挑戦」と「終活」は同時並行できる セカンドライフ・アドバイザーが推奨する最後まで幸せな生活を築くコツ
年齢を重ねるにつれ、考えなければならないことは増えていくが、不安ばかりが先立ってしまう人も少なくない。「大切なのは、終わりを意識しながらも、今を楽しむこと」。そう語るのは、76才にして新たな学びに挑戦するセカンドライフ・アドバイザーの高伊茂氏。人生後半を豊かにするための考え方を聞いた。
教えてくれた人
高伊茂氏/セカンドライフ・アドバイザー
やりたいことリストを作って、残りの人生の過ごし方を考える
身の回りの整理をはじめ人生を「終う」ことが求められる年代でもあるが、後ろ向きになる必要はないという。
主にシニア向けのライフプランをアドバイスするセカンドライフ・アドバイザーの高伊茂氏(76)が指南する。
「私自身、今年76才になりましたが考え方が変わり、資格の取得や勉強を始めました。人生あと5年だとちょっと短いですが、10年あれば極められることは多いと思ったのです。社会の役に立って、やりたいことをやり尽くして最期を迎えたい」
まずは自分がこれからやりたいことを2分間で10個書き出してみるといいという。
「これが案外埋まらない。『得意なこと』や『好きなこと』も書くことがポイントです。多くの人は得意で自分ができることの中に本人が“やりたいこと”が潜んでいます」(同前)
書き上げたメモを手掛かりに、「やれること」や「やりたいこと」に思いを巡らせ、残り10年の過ごし方を考える。
「たとえば『旅行』や『グルメ』が好きな人は残りの人生でその趣味を堪能すればいい。好きなことがなくても『運転』が得意な人や『日曜大工』が得意な人は、そのスキルを人のために活かす方向が考えられます。得意なことを人に与えられる環境作りが大切です」(同前)
老後を豊かにする「第3の居場所」を持つ
その際、職場でも家庭でもない「サードプレイス(第3の場所)」を持つといいと高伊氏。
「退職後、年齢を重ねてからも3番目の居場所があると人生が豊かになります。今はネットが盛んでパソコンの前に座れば何でも楽しめますが、老後の生活を充実させるには家に引きこもらず外に出ることです。行きつけのカフェやスナックを見つけ、人とコミュニケーションを取ることを意識しましょう」
そういった場所を築くには妻に頼りすぎないことが重要になる。
「男性は退職すると行き場を失い、妻が買い物に行くと夫がどこでも必ずついて行く“濡れ落ち葉症候群”になるケースが多くみられます。妻を失えば孤独に陥ってしまうのでこれは避けたい。普段から妻と別行動を取る練習を積んでおきましょう」(同前)
身だしなみを整えることも忘れてはならない。
「外出する前にお風呂に入って髭を整えるなど最低限、身の回りの清潔感を保ちたい。人にどう見られるかを意識することは大切です。私は人と会う時は必ずネクタイをしますが、実年齢よりも若く見られていい気分になれますよ(笑)。
退職するとネクタイをしなくなる人が多いですが、タンスにしまった数本をもう一度出して着用してみると、行ったことがないカフェや足が遠のいていた街中に出かける気分が湧いてくるものです」(同前)
人間関係は「わがまま」でいい
人生終盤は交流する人の選び方も「わがまま」でいい。
「今さら嫌な人とは会わず、自分に刺激を与えてくれる人がいい」と高伊氏。自分と異なる経験や価値観を持つ人と付き合うことが新しい刺激になる。そのために最適なのが「若い世代」である。
自分より若い人たちと交流すれば、世の中の風潮や新しい考え方、知識などを伝授してもらえて大いに刺激になります。世代を超えて人が集まる会合に参加してみましょう。朝に開催されるセミナーがちょうどいい。勉強会や趣味の集まりでもいいのですが、出社前の現役世代と出会う確率が高まります。大学や企業、自治体、民間団体など様々なセクターが主催しています」(同前)
施設選びは元気なうちがベスト
外に出て人と交流しつつ、同時に終活を進めていきたい。
悩みがちなのは「住まい」だ。多くの人は自宅で最期を迎えることを望むが、介護が必要になって現実的に難しい面もある。とりわけ悩みを大きくするのが認知症を患うリスクだ。
高伊氏が言う。
「私の母は認知症になってグループホームに入居しました。認知症で最も怖いのは火の扱いで、四六時中見守れないので施設に入居して家族の気がすごく楽になりました。自宅で最期まで過ごしたいのなら、認知症に備えてガスコンロをIHに変えることを推奨します」
残り10年、健康に過ごせるとは限らない。今は元気だとしても、もしもの時に備えて施設の検討や見学は早めにしておこう。
「見学の際には職員の雰囲気、場所、部屋の作りを確認しましょう。母のために施設を見学した際、お年寄りには手が届かないところに棚が備え付けられている施設がありました。実際に現地を訪れて設備を確かめることは大切です」(同前)
職員の雰囲気はケアマネなどから聞き出せる。
「母の施設探しの際、地元のケアマネジャーが『あそこだけは入らないほうがいい』と異口同音に話す施設がありました。立地の良い施設だったので驚きましたが、事前にリサーチしておけばそうした評判の悪い施設を避けられます。特に地元のケアマネの口コミは重宝します」(同前)
70歳になったら地域包括支援センターを訪問して施設見学を始めてもいいだろう。
良い物から仲間に渡す
身の回りの整理も始めておく。家に物が溢れていると転倒リスクが増し、遺品整理や高齢者施設に入所する際に苦労する。整理する際には「良い物から仲間に渡す」とスムーズに進む。
「自分が不要な物は相手もいらないので、自分が大切にしている良品から同じ趣味の仲間に渡していきます。家族に渡しても価値が分からないと結局ゴミになるので、仲間に譲るのがいいでしょう」(同前)
残す物、捨てる物の線引きについて、高伊氏はこうアドバイスする。
「認知症を患ったり高齢者施設に入ったりすることを念頭に置き、“これだけは施設に持っていきたい”と思う物を選んでおくことが大切です。整理しすぎて生活が不自由になっては困るので、本当に最後まで持っていたい物を部屋の片隅に集めておきましょう」
新たな挑戦を忘れずに最後も見据える。その姿勢が人生の総仕上げには欠かせない。
最後まで幸せな生活を築くコツ【まとめ】
準備
・やりたいことを10個書き出す
これまでの人生でやってみたかったことを紙に書き出す。仲間と一緒に行なうと思い出しやすい
・自分が得意なことや好きなことを5個書き出す
やりたいことを書き出す途中で止まったら自分の得意なことや好きなことを書いてみる。そこからやりたいことが見つかりやすい
人間関係
・妻と行動しない
一人旅や趣味の集まりなどに参加することで妻に頼らずに生きられるようになる
・嫌いな人と付き合うのをやめる
心の断捨離も必要になる。その時に嫌いな人との付き合いは捨てる
・ネクタイを締めて外出する
定年後、タンスにしまったネクタイをもう一度出して着けて外に出てみる。おしゃれして外出しようという気になる
・スナックに行く
人とコミュニケーションを取れる場所に出かける。スナックで他人と話すことが認知症予防にもなる
・朝活に参加する
世代を超えた付き合いを作るために効率的なのが朝活。現役世代や若い世代が参加するセミナーや集まりに参加してみる
身の回りの整理
・価値のある物を友人に譲る
趣味で集めた物を整理するなら価値が分かる仲間に譲ると効率的。自分が不要な物は他人にとっても不要だと覚えておく
・施設に持って行きたい物だけを集めておく
本当に好きな物や必要な物だけを選んでおく。分ける時には施設に持って行きたい物をイメージするといい
住まい
・ガスコンロをIHに変える
認知症対策のために火の元だけは心配を取り去っておく。IHコンロに変えるといい
・介護施設を見学する
職員の雰囲気、場所、棚の高さなど部屋の作りを見ておく。見学は足が動くうちに済ませておく
※週刊ポスト2025年12月19日号
※リンクテキスト部分はタイトルの変更があると思うので未入力です。
