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世界的な長寿研究の第一人者が指南する歳をとっても頭を元気に保つための方法「いつまでも挑戦を続ける」「ボランティアへの参加」

 歳をとっても頭を元気に保つためには、何をすればいいのか。認知機能の低下は、ルーティンに慣れて新しいことを学ばなくなることが一因だという。実際の生活で新しいことに挑戦することが老い対策にとって大切だ。

 世界的な長寿研究の第一人者、スタンフォード大学長寿研究所所長のローラ・L・カーステンセン博士による『スタンフォード式 人生のよりよき科学』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

 * * * 

 多くの科学者は、老化にともなう認知機能の低下の一因が、仕事や生活のルーティンをいったん確立したあとにあまり学ばないことにある、と考えている。家事であっても、会社の運営であっても、同じ問題があるという。長年にわたって身につけた専門性は大きな満足感を与えてくれるし、言うまでもなく役に立つ。それでも、現在の技能にあまり甘んじないように気をつける必要がある。

いつまでも挑戦を続けることが老い対策

 歳をとってからも認知機能をしっかり保つには、自分自身に挑戦しなければならない。自分に深くしみついた作業をやっていると、神経系に新たなつながりが生まれない。最適な機能を保てるように脳を刺激するには、新たな学びが求められるのだ。

 親世代がアルツハイマー病などの認知症に苦しむのを見てきた私たちベビーブーマー世代は、認知機能の低下が生活の質を下げ、家族の苦労を増やすのを見てきたので、なんとか認知症を避けたいと必死だ。その結果、脳トレのコンピューターゲームに大金を費やしている人がたくさんいる。アメリカ人は、悩み事を確実に解決してくれるようなゲームを購入するのが大好きだ。そうしたゲームをすることに問題は何もないので、楽しいならどんどんやってほしい。

 ただし、日々の認知機能が魔法のように向上することは期待しないほうがいい。脳トレゲームを長く続ければ必ずうまくなるが、いまのところそのスキルが実世界で大いに役立つという確証はあまりない。間接的な教育よりも、直接的な教育のほうがずっと優れている。したがって、買い物リストを覚えられなくて心配なら、買い物リストを覚える練習をしよう。会話をスムーズにしたければ、話していて楽しい人をもっと見つけよう。

ボランティアは提供する側にもメリットがある

 ベビーブーマー世代の人たちが普通に退職し、プールサイドに座ってiPadで脳トレをしようとしているのを見ると、心配になる。もっと脳の刺激になり、社会に有用な活動もあるのではないだろうか。たとえば、子どもに読み方を教えるなどだ。私のお気に入りのボランティアプログラムに、「エクスペリエンス・コープス」がある。これは、高齢者のチームに研修を行って、都心の学校の子どもたちに勉強を教えられるようにするプログラムだ。

 ボランティアの場合は、1対1や少人数を対象に、読み方を教えたり、校長先生が指定するプロジェクトへの参加を手伝ったりする。この取り組みは全員を底上げできるように注意深く構成されているだけでなく、とくに苦労している子どもに手を差し伸べるようにもなっている。

 コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院の学部長で疫学者のリンダ・フリードをはじめ、この制度を設計した研究者たちが、ボランティア側と子ども側の変化を研究した。すると、大いに刺激になる結果が出た。子どもたちの成績が上がっただけでなく、ボランティアの高齢者にもメリットがあった。新しい友人関係が生まれ、外に出ることで身体能力も高まり、脳が情報を処理する効率も上がったのだ。

 私たちの文化では、知識の価値がますます高まっている。脳を使う生活を続け、知識を人に伝えることは、受け取る側、与える側のどちらにとっても豊かになる経験だ。私たちは、生涯にわたって学びが続くようにする方法をあらためて考える必要がある。

教育は教室のみで行われるものではない

 それにもかかわらず、ほとんどの人にとって教育は1回参加して終わりの営みだ。生まれてから約20年の長きにわたって苦労し、18歳か22歳で唐突に終わり、二度と戻ることはない。その結果、学校はアメリカでも最も年齢別に分かれた機関になってしまっている。生涯学習は、必ずしも学校にふたたび通ったり、休職したり、高い授業料を支払ったり、キャンパスに通学したりすることを意味するわけではない(ただし、大学はキャンパスに戻りたい大人が戻りやすくする道をつくるべきだとは確信している。大学は若者のものだという概念を劇的に変革して、大人が通いやすいキャンパスやカリキュラムを再構築する必要がある)。しかし、正規の教育だけが教育だと考える理由はない。私たちはついつい、学びは教室のなかだけで起こると思いがちだが、もちろんそんな考えはばかげている。脳の学習能力は、黒板の前でも、公園でも、ボートの上でも、熱気球に乗っていても変わらない。

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